第59話 女の子の心は難しい


 文化祭二日目。俺と季里奈はいつもより三十分早く登校した。教室に入ると廊下側から四列目の季里奈のグループの人の半分が教室に居た。

「あっ、緒方さん。おはよう」

「おはようございます」


「倉本君も一緒かぁ。羨ましいな」

「ふふっ、ごめんね」

「あーっ、朝から熱射病に…」


 季里奈が同じ列の仲のいい女子達と馬鹿な冗談を言い合っている。そんな事を見ていると同じ列の全員が集まった。


 第四グループのリーダー的な男子が、

「集まったようだから、模擬店に行って準備しようか。男達は学食の倉庫から具材を取りに行くぞ。倉本、せっかくいるから手伝ってくれるか」

「ああ、勿論だ」


 女子達は、模擬店の出店場所に行き、男子は学食の倉庫と冷蔵庫に具材を取りに行った。途中、男子が

「倉本、緒方さん良いよなぁ。どうやったらあんなに綺麗で可愛くてスタイルの良い子と幼馴染になれるんだ?」

「そんな事言っても生まれた時から近所だったんだから」


「ほら、そこの。早く持って行くぞ」

「「お、おう」」



 三十パック分の具材を持って来た。豚バラは凍っている為、早めに出して解凍しないといけない。

 野菜類は洗ってから適当な大きさに切る。取敢えず半分の十五パック分だ。だけどリーダーの役割の男子が


「二十パック分先に切っておいてくれ。今日は生徒関係者も来る。緒方さんには会計をして貰う予定だから」

「「「分かったぁ」」」


 確かに言えるかも知れない。昨日の三橋さんの事もある。ちなみに第二グループと第三グループは二十パックずつしか売れなかったので第一グループの六十パック分の逆の意味での補完にはなったみたいだ。


 俺は少し様子を見た後、

「季里奈教室に戻るから」

「うん、始まったら来てね」

「勿論だ」

 女子A

「焼きそば焼く前に焼かれている」


 後ろから笑い声が聞こえていたけどそのまま教室に行った。教室に戻るとほとんどの生徒が登校していた。


 自分の席に着いて

「小峰、おはよ」

「おはよ、倉本。緒方さんは準備か?」

「うん、もう支度が始まっている」

「今日はお互い、模擬店にべったりだな」

「ああ、そうなるな」

「朝の部で全部売れてくれると嬉しんだけど」

「流石に無理だろう」


 午前十時になり教室の天井にあるスピーカーから生徒会長が

「午前十時になりました。今日は生徒関係者も来る為、大橋高校生としての節度ある対応をお願いします。それでは、第七十五回都立大橋高校文化祭二日目を開催します」


 街倉が

「みんな、二日目も頑張るぞ!」


「「「「「「おーっ!」」」」」


 俺は早速、2Aの模擬店に行った。開始早々だったが早くも列を作っていた。小峰が

「このグループで終わりだな」

「ああ、でも八十パックあるんだぞ」

「そうだな」


 列を作って待っている人は男子だけではない。女子も結構多い。三十分もしないうち人生徒関係者も並び始めた。


 皆見つめる先は会計の処理をしている季里奈だ。彼女が笑顔でお客とやり取りしている。ちょっと面白くないがこればかりは仕方ない。


 でもその安易な予想は午前十一時過ぎに外した事が分かった。街倉が

「小峰、後、二十パック分しかない。せめて六十パック分追加出来ないか?」

「父さんに聞いてみる」


 小峰は教室に戻って行ったが五分もしない内に

「街倉、二十分後には裏門に父さんが持って来る。男子を集めておいてくれ」

「分かった」


 小峰と街倉と俺それに男子二人が裏の校門に行くと

 午前十一時半前には、小峰のお父さんが軽トラで六十パック分の具材を運んで来た。それを一度学食の倉庫と冷蔵庫に運び、野菜を水洗いして直ぐに模擬店に持って行った。


 第四グループリーダー

「良かった。ほとんど具材が無い」


 女子達が洗い終わっている野菜を急いで切り始めた。このグループの女子って凄いな。皆包丁さばきが上手い。そう言えば季里奈って出来たっけ?


 午前十二時を回って俺の第五グループと交代した時は九十パックを売り上げていた。残りは五十パックだ。

「和樹ー。私もうだめー」

「季里奈、後ろで休んでいろ」

「うん」


 季里奈には小峰にお願いして隣の模擬店のたこ焼きを買って貰った。俺は先に食べている。


 季里奈が表舞台?から下がるとお客も徐々に減って…こない。丁度お昼と重なったのと季里奈がテントの後ろにいて座って居るからだ。


 結局俺のグループは予定の三十パックより十パック多い四十パックを売って、最後の小峰のグループになった時、残り十パックを売って完売となった。予定より六十パック多い二百四十パックだ。


 だけどその時には三橋さんも街倉も居なかった。文化祭実行委員なのに。お金の処理とか後始末どうするんだよ。




 §下島加奈

 私は午後二時に一人で歩いている三橋さんに声を掛けた。


「三橋さん」


 彼女が振り向くと

「下島さん」

「久しぶりね。最近モテモテね」

「……………」

 何が言いたいの?


「少し話さない」

「私は話したい事無いんだけど」

「私は有るんだな。去年の事よ。付いて来て」


 街倉君から聞いている事かな。私は前を歩く下島さんに気付かれない様にスマホから街倉君に連絡した。と言っても通話状態にしただけだ。


 下島さんは昨日街倉君に連れて来られた教室に入ると

「三橋さん、入って」


 私が黙って入ると下島さんはドアを閉めた。

「三橋さん、街倉君があなたに好意を抱いている事知っているでしょ。ねえ、彼と付き合ったら。どんなに待っても倉本君はあなたの事を許さないわ」

「下島さんがどういうつもりでそんな事を言っているのか知らないけど、あなたには関係無い事よ」


「関係あるわ。私ね。去年の事本当に悪いと思っているのよ。あなたを利用してバスケの練習を見に行って彼氏を見つけてしまった。私だけ良い思いしてしまったから。勿論内家の事は私の知らない事だけど」

「だから?」


「三橋さん、街倉君と付き合って。それが私のせめてものあなたへの償い」

「断ったら?」

「私のスマホに撮ってある内家と一緒にラブホから出て来た写真をクラスチャットに載せる。

 そうすれば長浜先輩がうやむやにした事が表に出る。長浜先輩も内家先輩ももういないけど当事者であるあなたと倉本君は嘘の報告をしたとして処分される。あなたは当然退学ね」

「…汚い」

「汚くは無いわ。あなたの為よ」


ガラガラ。


「そこまでだ。下島さん」


「街倉君」

「街倉君どうして?」


「下島さん。俺はどんな理由があろうが三橋さんを傷付ける奴は許さない」

「かっこいい事を言ってもどうにもならないわ。これをアップすれば終わりよ」


 その時、街倉君が動こうとして下島さんが彼の方を見た。スマホは彼女の片手に持っているだけだ。


 ガシッ!


 私は思い切り下島さんのスマホを持っている手首を両手で捻じった。

「痛い!」


 スマホが床に転がった隙に私は街倉君の方にスマホを蹴った。それを直ぐに彼は拾って

「下島さん、スマホが開いたままだ。写真は全部消させて貰う」


「ふざけないでよ。そんな事…」

「駄目よ。下島さん」


 私は下島さんを後ろから羽交い絞めにした。私の身長は百七十センチ。彼女の身長は百五十センチだ。思い切り私が後ろから羽交い絞めにすれば動ける訳がない。


 その間にも街倉君は写真ホルダから消していった。どんな写真を消しているか分からないけど。途中


「凄いな。下島さんと彼がしている所まで入っているなんて。凄い趣味だな」

「それは見ないでーっ!」


「そうだこれを先生に見せようか。悪いがこれを俺のスマホに送らせて貰う。今後変な事をしない為の人質だ」


 そこまで言われた下島さんから力が抜けた。


「分かったわ。もう何もしないから、放してよ三橋さん」

「まだよ。街倉君が写真の処理をし終わる迄」


 その間にも彼は色々な写真を見たようだ。本当は許されない事なのだろうが今回の場合は仕方ない。


「もうこれ位で十分だろう」


 街倉君は下島さんのスマホを閉じると

「三橋さん、放してあげて。下島さん、もう俺達には近づかないでね。変な事するのも無しだよ。もし何かしたら、その場でこれをクラスチャットにあげて先生にも伝える」


 下島さんは街倉君からスマホを受け取ると何も言わずに教室を出て行った。


「三橋さん。終わったよ。皆の所に戻ろうか」

「…街倉君。ありがとう。本当にありがとう」

「もういいよ。でも友達の位置位にはさせて欲しい」

「うん。友達の位置ね」



 俺と三橋さんが2Aの模擬店も所に戻ると小峰が


「街倉。何処行っていたんだよ。売れ終わってから一時間位待ったぞ」

「悪い。ちょっと用事が有って」


 三橋

「うん、私が用事頼んだの。ごめんなさい」

「まあ、いいけどさ。所でお金や片付けどうすればいいんだ」

「お金は教室に戻って、数え直してから生徒会室に持っていく。ここはガスボンベとか包丁とか外に出しておくと不味い物を教室に持っていく。テーブルや鉄板、テントは明日の片付けで行うからこのままでいい」

 小峰

「分かった。みんなそうするぞ」

「「「分かったぁ」」」



 三橋さんが街倉を呼び出したと言っている。でも一時間以上も経っている。変な様子も無い。何をしていたんだ。


――――

次回をお楽しみに。  

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひ☆☆☆を頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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