第49話 遊園地デートは難しい
§街倉元也
俺は、三橋絵里さんを遊園地に誘った。近県のプール付き遊園地も良いが、近さを重視して区外だが都内の遊園地を選んだ。
待ち合わせ場所は東急世田谷線改札。一見ローカルな名前だが、この線は田園都市線、小田急線、京王線と三線に繋がっている便利な電車だ。
三橋さんもここなら近い筈。俺は自分の動く距離は気にしない。彼女優先だ。午前九時に改札で待ち合わせなので午前八時四十分には着いたのだけど、通勤時間中なのか、物凄い人が降りて来る。
これで夏休み終わったら学生も乗るのだかから飛んでも無く込みそうだ。
降りる人にぶつからない様に改札から少しずれて待っていると十分前に三橋さんがやって来た。
白いスキニーパンツと淡い青色の半袖ブラウスそれにサマーカーディガンを羽織っている。
足元はスニーカーだ。遊園地には持って来いの組み合わせだけど彼女の胸が強調されていて目のやり場に困ってしまう。
「おはよう、街倉君、待った?」
「おはようございます。三橋さん。さっき来た所です。直ぐに乗りますか?」
「はい」
ICカードをタッチしてホームに入る。と言っても二両編成なので長くないし広くない。乗る電車はよく見ると白地に招き猫の絵が書かれている。
有名な猫電車だ。これに乗るご利益があると言われていて、投入当時は撮り鉄が凄かったらしい。今も居るけど。
「三橋さん、今日行く遊園地って行った事有ります?」
「いえ、初めてです」
「良かった。俺も初めてなんで楽しみです」
§三橋絵里
街倉君は、私の交通便を気にしてくれたのか三軒茶屋世田谷線を選んだ。渋谷より向こうに住んでいる人なら渋谷から井の頭線のはず。
こんな所に気を使うんだから今迄彼女がいなかったのが不思議で仕方ない。それとも居ても居ないと言っているのだろうか。そんな嘘をつく人には見えないのだけ。
§街倉
この電車は一人席なので二人で座ると話せない。当然三橋さんを座らせて俺のスマホで今日行く遊園地の案内を見ているんだけど彼女を上から見る事になるので胸が強烈に意思表示している様に見える。ちょっと目の毒だ。
そんな気持ちになりながらも下高井戸に着いた俺達は、京王線に乗り替えて調布迄行き相模線に乗り替えて遊園地の駅まで来た。
午前十時前には着いたから近いと言って良いだろう。彼女も俺もほとんど座れていたので疲れも無い。
遊園地まではバスとゴンドラがあるがゴンドラは帰りという事で行きはバスにした。こちらの方が早い事もある。五分で着いた。
遊園地の入口に着きチケットを買って中に入った。俺はスリル系が好きだけど三橋さんが嫌いだと不味いので
「どれから乗ります」
「どれでも良いですけどお子様系はちょっと」
「分かりました。それではあれからでどうですか?」
俺が指刺したのは有名なドリンクメーカとコラボした二人乗り空中ブランコだ。
でも何故か最初はドリンク工場の中を見学する様に動いて行って外に出たと思ったらいきなり上に上がりブランコが結構動く。
これはと思って三橋さんを見ると面白そうな顔している結構この手は強い様だ。
次に乗ったのは屋内型スピンリフト系。しかしこれも笑っているだけ。
降りてから
「三橋さんってスリル系強いんですね」
「そんな事は無いんですけど、今の二つはあまりスリルと言う程ではないと思います」
うーん、俺が考えているシチュエーションに持って行けない。仕方ない、俺も怖いけど
「あれはどうですか?」
「あれってタワーの上まで昇ってストーンと落ちる奴ですよね」
「はい」
空いていたので直ぐに乗れた。椅子に座りシートベルトをして安全バーが降りて来た。そしてずんずんと昇って行く。
なんか周りが低くなっていく。いや俺が高くなっているんだ。そして頂点まで来るとお尻が浮いた。
ぎゃーっ!
安全バーを思い切り握りしめて叫んでしまった。でも一回では終わらない。またずんずんと昇って行くと
ぎゃーっ!
見事に三回も悲鳴を上げてしまった。椅子から降りると三橋さんが
「街倉君、大丈夫?」
「は、はい。大した事無いです」
「でも、足元がふらついているよ。あそこのベンチで休もうか」
「済みません」
恥ずかしい。
十分も休むと
「三橋さん、次乗りましょう」
「えっ、大丈夫?」
「はい」
俺が指差したのはこれなら絶対に三橋さんが怖がってくれるはず。そして俺が介護するというシチュエーションに持って行き、頼りになる男を見せるんだ。
「街倉君、本当にこれに乗るの?」
「はい、三橋さん、怖いですか?」
「結構迫力は有るわね」
そう船型の乗り物が三百六十度ターンするんだ。街倉君大丈夫かな?
これもお客があまり乗っていない。でも半分位は埋まっている。ゆっくりと前後に振り始めた。
そして水平辺りまで来ると流石にお尻がフワッとする。三点シートベルト、フットバーと肩からの安全バーでがっちりとさせられていても怖い。
やがて振り幅が百八十度を軽く超え、逆さに…。
ぎゃーっ!
もう目も開けていられない。また回った。
ぎゃーっ!
船がゆっくりと振り幅を小さくしてやっと止まった。生きていた。肩からの安全バーが上がりフットバーも外れて自分のシートベルトを外そうとしたんだけど…。
三橋さんは、もう動ける体制になっている。
「街倉君、行こうか?」
「あの、三橋さん。申し訳ないですけど俺のシートロック外してくれません」
「えっ?!」
街倉君が固まってしまっている。仕方なく彼の前に体を被せる様にしてロックを外した。
「外れたよ」
三橋さんの柔らかい胸が顔に当たりいい匂いがした。ゆっくりと立って、乗る時とは反対側から降りたんだけど、俺が一番最後の様だ。
歩こうとすると結構しんどい。
「三橋さん、あのベンチで」
「いいですよ」
なんと三橋さんに支えられるようにしてベンチ迄行き、座らせて貰った。全く望みとは逆のシチュエーションになってしまった。
街倉君ってスリル系とか言っていたけど全然駄目なんだ。なんか見た目とのギャップは大きいな。でも和樹と真反対で面白い。
俺はベンチに座りながら
「三橋さん、ごめんなさい。もっとかっこよく居ようと思ったんですけど。…こんな俺じゃ詰まんないですよね」
「そんな事無いですけど」
「お世辞はいいです。もう帰りますか?」
「ふふっ、もっと遊びましょうか街倉君」
「えっ、本当ですか?」
「うん、でもファミリー系になりますね」
「済みません」
それから少し休んで昼食を園内のレストランで一緒に食べた。その後は、恥ずかしいけど子供エリアで子供達と一緒に遊ぶ親と同じ様に俺達二人で楽しんだ。
そして最後だけはこの遊園地人気No1のジェットコースターと言っても小学生から乗れる奴だけど、これに乗って楽しんだ。これは俺も余裕を持てた。
しかしこれではどっちがエスコートしているか全く分からない。今日で三橋さんに飽きられて終わりか。俺の夢も二回のデートで終わったか。
でも最後だから観覧車を指差して
「三橋さん、あの…最後にあの観覧車に一緒に乗って貰えますか?」
「いいですよ。まだ時間有るし」
街倉君、完全に肩を落としている。何か期待してのかな?
本当はしっかりとエスコートして男らしいとこを見せて、最後に観覧車に乗って友達からでもいいからお付き合いをお願いしようと思ったけどこれではどうしようもない。
長い筈の観覧車も三橋さんは景色を見るだけ。話しかけてもくれない。俺も話しかける気力がなくなっていた。
一通り乗り終わると
「街倉君、ゴンドラに乗って帰ろうか」
「はい」
肩を落としながらゴンドラに乗って遊園地の駅まで行って相模線に乗って調布駅まで。京王線に乗り替えて下高井戸で世田谷線に乗り換えるとこれで終わりだ。
そして三軒茶屋の田園都市線のホームで別方向のホームに別れたのだけど最後に耳を疑う事を言われた。三橋さんが
「街倉君、今日は残念だったけど、また会おうか?」
「は、はい」
三橋さんが笑顔で二子玉方面のホームに降りて行った。俺は渋谷方面のホームだ。
ホームに降りると三橋さんが手を振ってくれたのだけど直ぐに電車が入って来て彼女の姿が見えなくなった。
でも彼女は言った。また会おうかって。俺は返事をしそこなったけど今日のデートは決して失敗じゃ無かったんだ。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひ☆☆☆を頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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