第2話 星月夜
現在のアナタミヤの全財産、
25ピマ36ラヒソ。
目標の鏡が8グァリ。
……
「途方もないよぉ〜……」
骨董屋の2階。ランプと蝋燭が暗闇を照らす中で。
積み重なった様々な体栽の書物を前に少年、アナタミヤは手を付き項垂れていた。
絶賛、鏡を買うために色んなバイトを掛け持ちしている。
修道院での礼拝、労働をしながら、近くの羊飼いのお手伝い、遺産になってる神殿の掃除とかのお手伝い、あとここ骨董屋のお手伝いをしてる。
バイトを大司教様がお許しくださったのは本当にびっくりしたな。
それでも羊飼いさんのお手伝いは薄給だし、神殿の掃除は大勢の観光客が来る前くらいにしか頼まれないし。毎日おじちゃんのお手伝いだよー……ちなみに時給は16ピマだよ。
「もっといいお金稼ぎできないのかなぁ……」
本を埃かぶった棚に並べながら、上の空で考えていた。
ふと窓を見た。眩しい夜空が見える。
砂漠の星空は尋常じゃない。
昼間はうんざりするほどの砂丘が、地平線さえ飲み込む真っ暗やみに沈んであふれんばかりの連なる光を掲げてる。
星……
そういえば今までいろんな人から星のことを教えてもらったことががある。
大司教様や修道院の人たちは、
「星はひとにとっての希望、お導き、救世主様の誕生を意味する」
過去にキャラバンと一緒に旅してたとある民族のおじいさんは、
「星は豊穣の時期を知らせてくれる生活の救い主である」
前にこの街をでていった司教様のお兄ちゃんは、
「星はなんの特別な意味もないただの物質の集まりだ。だけどあの星々の光には、人々を魅了して、その美しさから様々な物語や意味を紡ぎ出させ、心をほんのりと照らす力がある。」
って。
僕は、皆が言いたかった事をちゃんと理解できてるのか分からない。でも、少なくとも皆の言葉は忘れない。いつか理解できてるって自信を持って、僕も誰かに教えて上げれられる日が来るのかな。
僕は窓から身を乗り出し星空を眺めた。
空も僕を眺めてた……
星が瞬くのをじっとみていたら、何かが見えた。
星の光を遮ってちらちらと飛び交う幾つのかの大きな何かが。
羽を大きく広げて星の前を通り過ぎるそれは、鳥にしては翼が大きすぎるし、こんな時間に飛んでいるはずがない。噂に聞く怪鳥なら夜も目がみえるのかも…?でもその怪鳥は尾も身体も大きく、翼だけが大きいこれとは違う。
それにこれには…足が生えているように見える。
人間のような足がみえて…背中からは翼……
……まさか…これは…大量の…?
「アナタミヤ!!」
下からだ。この声は修道院の…
「私は司教のガブリエル。与えられた名の元、大司教様からの伝言を伝えに来た!」
街の上空、果てしない砂漠の夜空に無数の影がたくさんの輪を成して回りながらとんでゆく。
「大司教様方がお呼びだ!再び悪魔が出た。即刻南東2区の小病院、アン・セファンへ向かえ!」
こぼれそうな星空の下を走る。
このときは気づかなかったけど、今日はいつもより星が明るくて、月がどこにあるのか分からないほどだった。
骨董屋のある北東1区から南に下りる。
この街ナラハルは修道院を中心に据えた街である。
街は修道院から東西南北に通る四大街道と、楕円形に掘られた灌漑水路により区分されている。
水路により中心部と郊外部が区分され、北の街道から、中心部の東北、南東、北西、南西に各第1、2区ずつと、郊外部の各第3、4区に分かれている。
歌声が聞こえる。
「
後ろを走るガブリエル様に問いかける。
「ああ、今度の悪魔は修道院の観測史上最も強力な者だ」
「まさか、上級悪魔ですか!?」
「恐らくな」
上級悪魔。修道院の記録では過去に一度しか現れたことのない悪魔だ。ただ、その事例は悪魔が現れたという記録であり、悪魔憑きではない。
悪魔は地獄に住んでおり、一部の種を除いて現世では生きることができない。そのために悪魔は、召喚者や近くの人間などに入り込む必要がある。
しかし、悪魔は地獄が本拠地であるため、現世では、まして受肉した状態では本領を発揮できない。
それに対して今回の悪魔は、悪魔憑きの状態で無数の使い魔を出しているが、その使い魔全てから中級下位の悪魔ほどの魔力を感じる。
まだ7年しか修道院に仕えていないが…
死者数も史上最悪にならないことを願う。
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