第32話 中間試験で生き残るには ①

そして、今日から始まる中間試験。

 俺は3日間のサバイバル生活のために、色々な道具を用意した。俺とエミリーはDブロックに配置される。周りを見渡せば、リンやクロエ、レンヤ達の姿が見えないって事は他のブロックに配置されたのだろう。1ブロック25チーム、大体50人以上は列に並ばされている。


 そして、グリモワールアカデミーが所有している魔の森は、5つにステージを分けられるほど大きい。その5つのステージには、不公平にならない様にと同じ条件で挑められる。


「この場で初めて見る方々もいる。一応自己紹介をさせてもらう、私は錬金術部門の代表教員であり、全教員を束ねる筆頭教員ウェスカー=ラシェヴァ・ボイシャーレン・スーント。以後よろしく。さて、試験の説明する」


 黒青い髪に鋭い目つきは、今でも目つきだけで人を殺せるほどの殺意を向けている。ナクマティが言っていた通りの内容だった。最初の持ち点は30点であり、魔物のレベルによって倒せば点数を稼げる。魔物に攻撃を喰らうたびにマイナス10点、そして点数で森の中にあるショップのモノも買える。そして、同じ試験者に負けた場合、すべての点数を奪われる。


 だが、どうやら魔物を倒さなくとも、森の中に隠されている水晶玉を見つければ5点追加されるそうだ。救済みたいなシステムだろう。そして...


 おお!ここでこの人を見れるとは...確か、黄金の魔術師と呼ばれてるんだっけ?性能が結構強いんだよな...


「...あ、あれ?」

「エミリーさん?」


 エミリーは何故か顔を青ざめながら、ビクビクと震えていた。


「あり得ない...殆どがAからBクラス...それに」

「そうだったのか」


 どうりで制服のラインの色が黄色と赤色が多いわけか...青色は2チーム...あれ?それ以外がいねぇ?均等に分かれてるんじゃねぇのか?


「なぁ、エミリーさん。もしやこいつらって星の何ちゃら団ってやつか?」

「全員ではありませんが、一年生の星の守護団の殆どはここにいます...」

「ふーん」


 あはーん??なるほどな。こりゃやられちまったよ。学園側も俺を殺したいのか。そりゃ面白い、俺好みの展開だ。


 アリスは遊び感覚でサバイバル生活を3日間過ごすつもりだった。ずっと周りから殺意を向けられる理由を知った瞬間、口元を隠しニヤリと笑うのだった。


「エミリーさん、お互い頑張ろう」

「えぇぇー」


 横に立つエミリーは、不気味な笑みを浮かべているアリスを見てより心配になってしまう。その頃、先に試験が始まっているクロエとリンがいるAブロック。

 開始から10分、クロエとリンチームのスコア2250点。森の中の全ての魔物合計1000点、残りの1250点は全チームを撃破。

 

「退屈凌ぎにもならない」

「ねぇねぇ!クロエちゃん!20点でお肉と交換できるらしい」

「ん、なら交換しにいこっか」


 そしてCブロックにいるレンヤとカイザーチームは、森の中を駆け巡っていた。


「まさか貴方達も遭遇するとは思いませんでしたわよ!」

「これは困りましたね。ビビアン第二王女様」


レインは冷や汗を流す。

 赤き竜の姿をした、バーナードとの戦闘で共に戦ったビビアンの実力を知ってしまっている。真正面からの戦闘では、力負けしてしまう。それはカイザーも同じ考えである。

 バーナードの攻撃を最も簡単に防いでいた《星姫の要塞ガーディアンスター》マナト=タンルルク・ホホシュ。あの時の様な大きな盾と剣ではなく、円盾と戦斧を装備している。


「前みたいにデカい盾じゃなくともいいのか?!そんな小さい盾じゃ、俺の拳は防げないぞ!」

「ふん、こんな樹木が生い茂っている場所では、アレは大きすぎる。そんな不安な状態で貴様らとの戦闘は足元を掬われるかもしれぬ。本当Fクラスなのが不思議と思う」

「そりゃ、どうも!」


 カイザーの蹴りを円盾で防ぎ、鎧のタックルでカウンターを取った。


「カイザー!ここは一旦退こう!」

「ちっ、悔しいが...百獣拳・密林の守護者ゴリラ!!」


 カイザーの腕に刻まれていたタトューが赤く光り出すと、一回り腕の筋肉が膨らむ。

 百獣拳とは、拳の都と呼ばれる場所で、ある拳王と呼ばれた男が、戦闘民族牛鬼人ミノタウロスからの技術を応用し純人族用として作られたされた武術。

 それは動物にちなんだタトューの種類によって、各々の力が存在する。その種類は100、それを因んで百獣拳と呼ばれている。カイザーには4種類のタトューが刻まれてあり、ゴリラの腕力を引き出す密林の守護者を発動させた。


「残念だが...結着3日目だ。一位を取るのはこの俺たち!」


 カイザーは地面に数発叩きつけて、土埃を起こしまるで砂漠の嵐の様にビビアン達の視界を防ぐ。土埃が落ち着き、レンヤ達の姿を探すが、その場から離れていたのであった。


「まぁ、時間はまだありますからね」

「そうですね。それに危険人物はあの2人だけの様ですし」

「危険人物?」

「いいえ、こちらの話です、さて、ビビアン王女様。安全にご休憩いただける場所を見つけましたので、ご案内いたします」

「あら!そうなの。本当マナトは頼りになるわ」

「光栄です」


 マナトが言う危険人物とは、自分が信じる王女ビビアンの一位を妨げる恐れがある人物。赤き竜で見せたレンヤ、カイザーの戦闘能力。エミリーの精度の高いサポート魔法、偽物とは言えイフリートの魔力を濃く持つバーナードを討伐したクロエとアリス、その2人と実力がほぼ互角と言われるリン。そして、手を抜かなければ確実にあの人物が主席になるはずだった男とそれの付き添いの女。

 マナトが思う危険人物の8人中6人は他のブロックに配属される様にしてもらった。そして今回の本当の任務は、アリスの殺害。試験では殺害は禁止されている、だが不慮の事故での死亡狙いに、アリスがいるブロックに星の守護団と関わりのある人物を固めてある。


「(あの男は確実に殺す。我ら女神を侮辱した報いを!!)」


 そして、Eブロック。

  暗い森の中で、青髪の女性は数個のリンゴが入っているバスケットを両手に歩いていた。その前に騎士の様な格好を覆い隠す様な大きな毛皮マントを羽織っている男は片手にリンゴを持って歩いていた。


「サクラさん」


 長い黒髪を一つに束ねていて、金色の瞳を持つ男はリンゴを齧り、背後に歩く女性に話しかける。


「はい、何でしょう」

「これ、美味しいですね。どこで?」

「レッドモンキーが栽培した高級果物のオレンジアップルであります。先ほどレッドモンキーの姿を捉えたので、もしやと思い後を追えばレッドモンキーの住処を見つけましたので、熟しているモノを少々取って参りました」

「これがオレンジアップルでしたか。子供の時に、ジュースとしてよく飲みましたね」

「お懐かしい限りです。アーサー様」


 すると前に赤い体毛を持つ、ゴリラより5倍ほどの大きさを持つ魔物が現れる。周りの木の上には全長2メートルほどぐらいの赤い体毛を持つ魔物が数匹ニヤニヤと見ていた。


「アーサー様、レッドモンキーであります。どうやら、オレンジアップルの匂いを辿ってきたようです」

「ほーう、これらを倒せば何点ぐらいは獲得できますか?」

「レッドモンキーは40点、そのボスは200点となっております」

「なら、360点はゲットできますね」


 腰にさしてある剣を抜き、目の前のボスモンキーに歩み寄る。


「申し訳ありませんね。殺生はあまり好きではありませんが...生き残るには、貴方を倒すしかありません」

「ウギィィイ!!」


 ボスモンキーはアーサーを殴り潰そうと片腕を上げる。

  だが、急に視界が遠ざかり、アーサーの姿が消える。いや、正確にはアーサーの姿が見えなくなった。


「レッドモンキーは美味しいでしょうか?」


 縦に真っ二つにされたボスモンキーの死体を見る。


「いえ、肉はほぼ筋肉で硬く、どんなに処理しても臭みが取れないのに有名であります」

「そうですか。ですが、自分都合殺めた動物は食べるのが、としての流儀ですからね」

「アーサー様、私たちは魔法使いですよ」

「あはは、そうでした、そうでした。私達は魔法使いでしたね」


 木の上にいたレッドモンキーは、ボスモンキーを一撃にやられた事に困惑をする。


「あとは私が」

「うん、よろしくね」


 剣を鞘に納め背中を見せる。

  今のチャンスだと、一斉に襲いかかるが、サクラの二刀流短剣により首を吹き飛ばされる。

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