第13話 動く死体から生き残るには


「それ本当に売るの?それ、宝具だよ?」

「宝具?」

「簡単に言うと魔力流すだけで魔法が使える武器。魔物から稀に灰にならずに残るの。それを魔石って言うんだけど、それを材料に武器や防具を作る」


 つまり魔石はレアドロップって訳か。


「ん?それって俺も使えるのか?」

「うん、魔力運用さえできれば誰でも魔法を使える。まぁ、その代わり、魔力の消費は激しいし、中には代償もある」

「ふーん」


 アリスはじっと赤刃を見つめる。だが、鞘にしまいリンの方へ視線を向けた。


「リンは使うか?」

「要らない。アタシはこれがある」


 リンの腰には両手剣がさしてある。鞘や柄は金と赤で装飾されていて、まるで王様をイメージする剣である。


「なら、売るしかないな」

「勿体無い。剣術の腕はあるんでしょ?」

「んー、まぁぼちぼち」

「なら、これ使えばいいじゃん。魔力を流せば炎は操れる宝具だと思うよ」

「なんでそんなに俺に剣を持たせたいんだ。言っただろ、俺は

「そんな事言ってた?でも、最初短剣使ってたじゃん」

「剣と短剣は別物だ。この丁度いい長さが嫌なんだよ」

「変なの」


 どうしてそんなにオレに剣を使わせたいんだ。俺にはもう、天涯砕きって言う相棒がいるんだ。


 結局赤刃は売る事にした。流石レアドロップから作られたアイテム、なんと450万Gで売れたのである。あのブルーの首より2倍以上の価値があったのだ。


「450万もあれば小さな家ぐらいは、一年契約で借りれる...」

「なんの話?」


 どうやらグリモワールアカデミーでは寮以外に、一軒家などが借りれる。確かにあの学園都市を探検してみると、誰も住んでいなさそうな家が何百とあった。

 どうりでDクラス以上の生徒が見かけないと思ったら、寮より豪華な部屋に住んでいるそうだった。Aクラスに近いほど良い物件が借りれるそうで、FクラスやEクラスは森の奥の家しか借りる事ができない。森から通うより寮から通った方が近い事からあまり借りる生徒などはいない。だがキッチンがあるかないかだけで話は変わる。


 うん、この任務が終わったら、さっそく賃貸を借りよう。1人で風呂に入りたいし、トイレ行くのにわざわざ部屋の外に出て少し歩くのもめんどくさい。


「さて、学生さん達目的の場所についたよ」


 モップは大きな屋敷の前で足を止める。どうやら依頼主はこの屋敷の中にいるようだ。


「いやー、君達には色々と驚かせられたよ。さぞ有名な魔法使いになるだろう。学園に戻るときには、国門の前に運び屋の協会があるからそこに訪ねてね」


 運び屋とは、その名の通り何かを運ぶ仕事をしている人達。タクシーや配達の両方をする人達の事を示す。

 モップとは分かれて、アリスは屋敷の門の前に2人の全身甲冑の騎士がいる。その1人に話しかける。


「君たちは?」

「俺達はグリモワールから来た者です」


 俺は騎士に封筒を渡した。騎士は封筒を開けて中の紙を広げる。その紙は学園側が作成した、この依頼を受ける証明書の様なもの。


「うむ、受けまつった。魔法使い様よ、少々待たれよ」


 資料を持つ騎士は急いで屋敷の中に入る。ほんの数分が経つと駆け足で戻ってきた。そして騎士の背後には執事の様なご老人がいた。


「アリス様、クロエ様、リン様、長旅お疲れ様でございます、中で主人が待っております。この私、シカルシがご案内いたしますので、ついて来てくだいませ」


 シカルシと名乗る執事は、屋敷の中に案内をする。シカルシはある部屋に連れてゆきドアをノックする。


「イッシュ様、魔法使い様達がご到着いたしました」

「入れ」


 部屋の奥からドスの聞いた声が響く。ドアを開けると中には、右目に大きな傷、オールバックの屈強な男が座っている。


「ここまで来てくれて感謝をする。魔法使い達よ。さて長旅でお疲れであろう、まずはそちらに座れよ」


 イッシュの前にある長ソファーに座る3人。そして前の机に三つの紅茶を置くシカルシ。紅茶を口に運ぶと、なかなかの美味さであった。


「さて、まずは自己紹介をしよう。私はこの領地を任されたイッシュ=ラクトアルである」

「グリモワールアカデミーの魔法使いとして依頼を受けに来たアリス=ウィンチェスター、右からクロエ、リンです」


 イッシュが立ち上がった事に、アリスも立ち上がり2人は強く握手を交わす。そして握手を終え2人を再びソファーに座った。


「本来はもてなすべきであるが、申し訳ないが早速本題に入っても構わぬか?」

「ええ、俺達はこの国の市民の命を救う名を受けてここに来ましたからね。決して遊んでいる暇はないと承知しております」

「なんと素晴らしい心構えだ。領主として感激である。さて魔法使い様達に見せたいものがある」


 イッシュは立ち上がり屋敷を案内をする。人気がいなさそうな場所にゆき、そしてたどり着いた場所は鉄の扉。何重の鍵を開けて扉を開けた。


「ここは?」

「安置室と思いたまえ。君達と同じ魔法使いの遺体を保管してある」


 魔法使い?確かライシェル先生が言ってたな。この依頼は2年生が引き受けていたって...


 アリスは部屋の中に入る、肌寒い部屋を見渡すと9人の男女の遺体が保管されていた。アリスは9人の死体を確認する。怪物と戦って殺された割には、あまりにも身体の状態が綺麗すぎた。だが、死体には茎のような植物が身体中に絡まっている。


「これはなんで花ですかね?」

「専門家に調べさせているが、未だ何の花なのかは分からずじまいなんだ。未発見の植物の可能性もある」


 彼らの頭から生えている目の模様の様な花弁が咲いている。まるで生きているかようで、今でも動き出しそうなほどであった。


 気色悪い花だな...


「イッシュ殿、何故こいつらは喰われなかったのでしょうか?聞いたところ人を喰らうヒトクイソウと伺っておりますが」

「それも分からぬのだ。民は食われ続けているのに、魔法使い様達だけはその状態で発見された」

「なるほど。申し訳ありませんが、俺は無知な事が多くありましてね、そのヒトクイソウって言う魔物の生態を詳しく説明してもらいませんか?」

「うむ、シカルシ。魔物の生態図鑑を持って来たまえ」

「かしこまりました」


 数分が過ぎ、シカルシは分厚い本を手に持って戻って来てアリスにあるページを開いき渡す。シカルシからの説明にはヒトクイソウは魔力を蓄えている人間を食う魔物と言う説明とイラストが描かれている。


 これを呼んである違和感を覚えるアリス。何故、魔法使いであるこの9人は食われなかったのだろうか。そして、生態図鑑の説明に、死体に花を植え付ける習性があるとは書かれていない。俺はそっとクロエと小声で会話を始めた。


「なぁ、どう思う?」

「...ヒトクイソウじゃないって事は分かる...でも何の魔物かが検討もつかない。ボクは魔術師であるが魔物学の知識はそんなにない」

「だよなー...ん?」


 アリスは何か背後から何かに見られてるかような感覚を感じスッと振り向く。だがそこには9人の死体しかなく、気のせいかとクロエの方へ視線を戻した。


「...ねぇねぇ、アリス君」

「ん?リンどうした?」

「アレ」

「あれ?」


 リンが指を刺す方へ視線を向けた。それは今さっきアリスが妙な視線を感じた方向。


「あの植物なんかおかしいよ」

「?」

「この部屋に入ってから、何かヒソヒソの聞こえるなーって思って、その音を探ってたの。それがあっちから聞こえて来て、アタシ達を見てずっと、ずっとある言葉を繰り返してる」


 リンはジーッと死体の方を見ていた。そしてアリスはリンの右手が両手剣の握りの部分を強く握っていた。


「殺すって」

「?!!」


 それと同時に強烈な殺気を感じたと思ったら、死体が急に立ち上がり複数のサークルを生成し始めた。死体が動き始めたことに一瞬脳が止まったが、アリスはすぐに冷静になり天涯砕きを構えた。


「イッシュ殿!!早くこの部屋から離れてください」

「え?」


 イッシュ達はまだ気づいていなかった。クロエはサークルに向かって手を伸ばした。


反転マジックブレイカー


 するとサークルは逆回転し始めて消えた。だが、再びサークルが現れてクロエは同じ魔法を使おう唱えた。


「マジック...ん?」

「え?」

「クロエ!リン!」


 クロエとリンはその場で膝をつく。自分でも何が起きたのか理解していないようだ。そして何かを感じたのか、天井の方へ視線を向けた。


「ちっ、このボクが気づかなかった?」


 天井を見ても何もない。だが、よく集中して確認すると天井に刃物で引っ掻いたように何かの模様が刻まれてあった。それはサークルのような魔法陣。


「魔力封じの陣...魔力を封じられた...魔法も使えない」


なら何故あいつらは魔法が使えるな?それに何で俺はなんか無事なんだ?いや確かに魔力が出ないが、クロエやリンみたいに辛そって訳じゃない...何かの条件付きか?いや、そんな事考えてる場合じゃない。


 サークルから炎の球や、風の刃、水の矢など色んな魔法が弾丸のようにアリス達を襲った。アリスは天涯砕きを両手で持って次々と魔法をぶっ飛ばした。

 そして新たにサークルを展開する、9人の魔法使い達。アリスはすぐに飛び込むように間合いを詰めてサークルごと魔法使いをぶっ叩いた。そしてアリスは天涯砕きを持って身体を回転させてやり投げで天井を破壊する。


「ふぅ、一旦一件落着かな?」

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