第9話 停学になってしまった!どう生き残るには


「あのね...君たちまだ2日目だよ?」


 尋問室の様な場所で俺とクロエは呼び出され、ライシェルは入学してから2日目でとんでもない問題を起こした事に呆れた表情でため息を吐く。


「まだ、喧嘩しただけなら良い。でも相手はローゼリアン王国の第二王女だよ?それに一堂に会する場で水を浴びさせて恥じをかかせるなんて紳士としてより人としてどうなんだ?この事が本国にバレれば君は拷問され処刑されるぞ」

「なら、その時はボクがその国を滅ぼす」

「...」


 クロエが言うと本当にやりそうでライシェルは何も言葉を発せられなかった。


「Ms.クロエ。まさか君の様な優秀な人物が、こんな事をするなんて...学園長が知ればさぞ悲しむだろう」

「ふんっ...そもそも、こんな事が起きたのは学園側の問題もある。一年生の歓迎会って言いながら平民を省くなんて、それはそれでどうなのよ?」

「別に省いてる訳ではありません。歓迎会は自由参加であり、彼らから欠席を志望しております」

「そうさせてるのはお前らだろ?」


 平民が迫害されているのはライシェルでも知っている。クロエはその事に彼を睨みつけるのだ。


「私にとって平民だろうが、貴族だろうが、王族だろうがこの学園に在中しているのならグリモワールの生徒。だが、私の様の思考を持つ教員は何人いるのでしょう?ここの力ある教員の全ては貴族出身です。中には実力があれば身分なんてどうでもいい考えを持つ者がいるが、その殆どは平民をゴミの様な存在として扱ってる人たち。元はグリモワールは貴族や王族だけの学園だった。それを現学園長は実力があれば平民までも受け入れる制度を、今でも良くも思っていない連中が殆ど」


 後に聞いた話だが、グリモワールアカデミーの現学園長が37年前に主任してから、貴族や王族しか居なかった学園に、力を持つものならば平民まで受け入れると制度を変えたらしい。37年間、平民が主席を取った回数は7回、その中で今は貴族の妻を持ち家名を持っているが、元平民であるライシェルはその1人である。


「どうしようも出来ないんだよ。君の貴族嫌いの気持ちはわからないでもない。すまないね」

「...」

「...」


 俺はクロエの過去を知らない。彼女が貴族を嫌っている...いや、恨んでいる事は知っているが、第4章エピソード5は途中で放り出した為、クロエの過去は知らない。


「たとえ君たちからじゃなくとも、それでも問題は起こした。2つの罰を与える」


 どんな罰を与えられるか、アリスはゴクリと息を呑む。


「まずは3日間の停学処分だ。Mr.アリス、これはMs.クロエに感謝するべきだな、もしMs.クロエと言う盾がなければ君は真っ先に退学処分になり、王国に引き渡さなくちゃいけない。これだけ覚えるだぞローゼリアン王国民は全て敵だと。それ程君がやった事の罪は重いんだ」

「肝に免じます」


 まぁ、売られたケンカは全て買うがな...


「二つ目はボランティア活動をしてもらう。停学を終えて、2人にはある任務に行ってもらうよ。もちろんリーダーはMs.クロエがやってくれ」

「面倒...アリスやって...」

「はいはい」

「...ならMr.アリス君に任せるよ」


 少し考えたが、確かにクロエがリーダーをやろうがやらないが変わらないのである。どうせ、アリスに面倒ごとを押し付けられるからだ。


「それにしても良いんですか?授業とか」

「Fクラスの授業なんて、一学期は歴史とか数学とか座学ばかりで、強くなるには座学よりもこのボランティアを受けた方がいい」


 強くなるには?他のFクラスはどうなるん?何で俺たちは別なんだ?


「うん、なら頑張って。これで終わりだよ、今日は速やかに帰って停学開けのボランティアの為に準備してね」


 ライシェルは満面な笑みを見せてアリス達を外まで送った。アリスはライシェルの事が一つわかった気がする、あの笑顔からには何か裏があると、もしやライシェルの腹は思ったより黒いかもしれないだろう。


「(さてと、これで時間稼ぎ程度にはなったね)」


 ライシェルは2人の背中を見て、彼らの事を考える。


「(Ms.クロエは兎も角、今すぐに彼を学園に向かわせたら、星の守護団に殺されるのがオチ...彼女の性格的に任務には積極的にはならないでしょう。なら早くとも1ヶ月は帰ってこない。この期間中に星の守護団とどれだけ対抗できる力を身につけるか...いや、1番の問題は...)」


 アリスの首にあってはならないものがぶら下がっていた事。


「(Ms.クロエの首になかったって事はアレ...実に困ったものだ。アレは陰魔の効果を持つ、自身の魔力を見せさせなくする鉱石がありますが、本当の意味は十字架の中心にある灼魔石...特に何もない綺麗な宝石ですが、その宝石の意味は永遠の愛...うーん、知ってて渡したのか?いや、魔法のこと以外はダメな子だ...だったら、あのネックレスがどこの馬の骨と知らない男に渡ってたと知ってたら、あのお方...はぁー)」


 ライシェルはその続きの事を思い浮かべると、アリスがあまりにも可哀想と同情するのであった。

 停学と言い渡されたが、自宅待機とは言われてない為、学園を中心としたこの都市には色々なお店がある。そこで色んなお店を回ることにした。


「何だよ、腹減ってないのか?」

「要らない」


 アリスはケバブを食いながら街を歩いているが、何故かクロエは頑なに食事を取らない。サバ味噌定食の時はすぐに平らげていたのに、もしや魚好きか?と考えると魚料理にも手を出さなかった。


「アリス」

「ん?」

「これに魔力運用して」


 クロエはマントの下から魔力運用に練習に使っていた水晶玉を渡しきた。アリスはそれに魔力を込めてと言われ、魔力を込めると朝の豆鉄砲しか放てられなかった光が嘘の様に、めちゃくちゃ眩しく光出した。


「(...平均より数倍は光ってる)」

「おお!めっちゃ光ってる!停電した時は便利だな」

「なら、次の課題は魔力強化だったけど、魔力放射をやろうか」


 魔力運用ができれば、強化したい部分に魔力を集中させて強度を上げたりする事を魔力強化となる。なら、魔力放射とは何が違うのだろうか?アリスの疑問をクロエは答える。


「普通に魔力の塊を飛ばす」

「それって魔法と何が違うの?」

「魔法は属性の術式を刻んで炎とか風を飛ばすに対して、魔力放射は魔力だけを飛ばす。魔力強化は魔力が硬いほどその効果が増大するけど、逆に魔力が硬いほど、魔法の発現が遅いし、射程距離も短い...それに...うーん、そうだね。硬いからまともにこねられていない感じだから本来の魔法の威力より弱いこともある」


 魔力放射だと、術式を刻む必要もなく心魔に通す必要ないから、素早く魔力を飛ばせるらしい。


「アリスの魔力の圧縮がどうなるかは分からないけど、たぶん相当な威力になると思う。魔力強化の状態なら100%のチャージを一回放つだけでそんな感じになった」


 アリスの右腕な治療された後で包帯でぐるぐると巻かれている。


「なら放射となると、100%のチャージでも無傷で放つことができるかもしれない。そうなるとどんな魔法よりも威力は相当なもの...ん?いや、腕を纏って圧縮させてる訳じゃなく、空中で圧縮させてるから魔力強化の状態よりも威力は出せるのか?でも圧縮させるなんて、なかなかの発想。魔力が柔らかいこそ出来る芸等」

「まぁ、そりゃクロエの真似したからな」

「...?ボクはできないよ?いや、できるはできるけど...身体は決して強い訳じゃないから、ボクがやった時は腕なんてなくなっちゃう」

「え?」


 なら、どうやって魔力強化が得意2人を、魔術師よりの魔力の柔らかさを持つクロエが2人の魔力強化の精度を上回るんだ?


「なら、どうやってあの2人から力勝ちしたんだ?魔力が柔らかいなら、クロエは魔力強化なんてできないだろ?」

「ボクを誰だと思ってるの?魔力の柔らかさなんて好きなように変えられる」

「はぁ?なら、それを教えてくれよ」

「ふっ、アリスじゃ無理。いや、殆どの魔術師はできない。ボクの様な卓越した才能の持ち主、そしてこの魔力の流れが見える天眼があるこそ初めて出来る。ボクは魔力の硬さを変えられる」

「え?そんなことできるのか?」


 魔力の硬さを変えられるとなると、魔術師の様に魔力を柔らかくしたり、魔法剣士の様に魔力を硬くできるとなる。


「できないよ。どんなに才能が溢れた魔法使いでも...ボク以外は」

「流石自信家、思わず見惚れる所だった」

「ふん...存分に見惚れるんだね」

「...」


 クロエとはまだ2日程度の関係だ、だが彼女に関してはゲームをしていた時からある程度は知っている、ゲームの中でも一度も見せなかった表情、クロエが笑う所は今初めて見た気がする。


「ん?なに?」

「いや、なんでも」


 少し驚いたな、クロエが笑う顔...すげぇ、可愛いかった

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