砂塵の蝶




砂塵の蝶が羽ばたき鱗粉がまう


差し込む陽光が、ヤツの背を照らす


振り返った顔が、全てが遅かった事を告げていた


「遅かったじゃないか」


「すでに始末はつけた──彼女がな」


ヤツの思惑など、既にどうでもいい

ここに居るのは単なる自己満足以外の何物でもない

今この時を逃せば、もう叶わないのだろう──だから


手にした銃をヤツに向ける


「それが答えか……」


──その瞬間世界が止まって見えた


手の死角から放たれたナイフが、俺の顔めがけて飛んでくる


反射的に引き金を引いた


残り11発


こちらは既にヤツの間合いに入っている


地面を蹴り上げ、砂のベールを作る


構わず突っ込んでくるヤツに3発浴びせる


残り8発


首元を狙った刃を手でいなす


こちらも拳で迎え撃った


さらに殴るように弾を一発


位置を変え、角度をかえ、組手の様な応報が繰り返されていく


減っていく弾薬


視覚外の膝蹴りが、俺の顎を捉えた


思わずタタラを踏み、後ずさる


そこへ差し込まれた刃を、後ろに倒れ込むように間合いをとる


──次で決まる


やけに動きが遅い腕が、ヤツの眉間を捉える


飛翔する刃を右目に写しながら──


引き金を引いていた







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