お姫さまのキス

安部 真夜

第1話

「ちゃおー」

 溜まり場での恒例の挨拶をするわたし。

 木陰に座っている彼。

「………」

 返事が無い。 きっと狩りで疲れているんだろう。

 そっと隣に座る。 それだけで幸せだと思った。



 彼---シルク---のお姉さんとわたしは同じギルドで、彼自身は最近冒険を始めたという。 

 お姉さんにこの世界のことを教えてもらっていた彼は、あっという間にノービスからソードマンになり。

 あっという間にわたしと公平が組めるレベルになっていた。

 わたしが支援型ハイプリーストと言うこともあり、何度か一緒に狩りに行った。

「ユンは支援が上手だなあ………さすがハイプリーストだけある」

「そお? 褒められるとうれしい」

 祝福魔法で彼に支援を施し、敵からの攻撃を和らげる支援魔法をかけ。

「ありがとう! ユン!」

 そういうや否や、モンスターを軽快に倒していくシルク。


 あっという間に二人ともレベルが上がり。気づくと三時間近く狩っていた。

「おつかれさま! そろそろ街に戻って収集品を整理しよう」

「じゃあポータルを開くね」

 そう伝えると彼の足元に街行きのポータルを開いた。



「今日はだいぶ稼げたね、プチレアもそこそこ出たし」

「だね、次回もこれぐらい稼げたらいいな」

 そう言って彼との初めての狩りは終わった。

 騎乗動物にまたがり、颯爽と走る彼。



 いつしかわたしは彼のことが好きになった。


 じっーと彼の寝顔を見る。

 長い睫毛。 銀色の髪。 

 彼はこの木陰が好きならしく、いつもここに居た。

 

 きょろきょろ。 あたりを見回す。


 狩りのとき以外はアイアンケインをはずしている。

 騎乗動物も騎士ギルドに返して、木に寄りかかって眠っていた。

 誰も見てないよね? 確認すると、彼が起きないようにそっとキスをする―――。



 そっと唇を離す。

 何度、彼が昼寝している時を狙ってキスしただろう。

 告白する勇気は無いくせに。

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