第36話 拒絶の先に
「二回目の
リョウガさんの言葉に驚きはなかった。
このメンバーで集まったのなら、もうそれしかないと思ってたから。
でも実際にそれを言われてお腹の奥がぎゅっと締まった感じがし、思わず口から「嫌です」とこぼれ出ていた。
「嫌です。もうあんな思いはしたくない。私にはもう無理です」
「でもできるのは、アユミさんしかいないんですよ」
リョウガさんが畳み掛ける。
「酷なことをお願いしているのは、承知しています。それは本当に申し訳ないと思っています。でも祷雨を必要としてる人はいるんです」
「リョウガさん……!」
割って入ったのはセイランさんだった。
「何度も申し上げてますが、こんなに短期間で続けて祷雨を行うのは危険です。どうか考え直していただけませんか?」
いつになく必死で焦った風のセイランさんの言葉にリョウガさんは
「黙れ」
とピシャリと言い放った。
リョウガさんのその一言で、会議室の空気が一瞬で凍りついた。
「セイラン、誰がおまえに発言を許した。出すぎた発言をするなといつも言っているだろう。迷信にばかり拘っていると、資料室の利用も禁止にするぞ」
リョウガさんに睨まれ、セイランさんは唇を噛んで下を向き黙り込む。
でも私は、それどころじゃなかった。
もう、これ以上聞きたくない。
たまらず私は下を向いて目をつぶり、握りこぶしをまたぎゅっと握った。
「……無理強いは良くないんじゃないですか、リョウガさん」
そこに響く冷静な声。
それは斎藤さんの声だった。
思わず顔を上げると、隣の斎藤さんは前を見て表情を全く変えずに言葉を続けた。
「まだ祷雨を行って2週間しか経っていないんですよ。この話は性急すぎます。今すぐ決める必要ありますか?」
予想外の発言に驚く。
てっきり斎藤さんも、祷雨を行うように私に圧をかけてくると思ってたから。
だってハウエンの時は、あんなに追い込んできたのに。
斎藤さんの発言はリョウガさんも予想外だったようで、珍しく少し動揺していた。
「斎藤さん。それはちょっと話が……」
「とにかく」
斎藤さんはバッサリ話を打ち切る。
「日本側の責任者として、彼女に無理をかけすぎることは看過できません。せめてもう少し時間が必要だと思います」
……なんだろう。この違和感。
斎藤さんの言ってる言葉は、私のためを思ってくれているようにしか聞こえない。
でもやっぱり何かが引っ掛かる。
この人の真意はどこにあるんだろう。
とりあえずこの場の会議は日本とシオガで意見が割れたことで、また日を改めることになった。
─────────────────────
二回目の祷雨……。
これはいつ決まったんだろう。
私はシオガの派遣期間が半年と決まってるけど、ハウエンの祷雨はこっちに来てから3ヶ月半後だった。
その後なにするんだろう?と以前から疑問には思ってたけど、もともと二回目の祷雨は計画に含まれていたのかもしれない。
宿泊舎へ戻る道中、隣を歩く斎藤さんに思いきって聞いてみた。
「斎藤さん、今回のプロジェクトはもともと祷雨を二回行うことが想定されてたんですか?」
斎藤さんは、前を向いたまま歩きながら答えた。
「実はシオガの本命の祷雨は、二回目の方にあるんですよ。でも契約上は祷雨を一回でも成功させたら問題はないと言うことになってるので、早川さんは気にされなくていいです」
「はあ……」
何となく意外だった。
日本とシオガの契約がどうなってるのかは詳しくは分からないけど、そう言う取り決めは絶対厳守なタイプだと思ってたから。
そして、もう一つ気になることがある。
「二回目の祷雨が本命って、どう言うことですか?」
すると斎藤さんはようやくこっちを見た。
そして、回りをさっと見渡すと声を落として言ってきた。
「その話はここではちょっと。良ければこの後、私の部屋に来ませんか?」
「え?」
想定外の提案にキョトンとする。
斎藤さんが部屋に招いてくれるなんて、初めてのことだ。
斎藤さんの部屋は私の隣だけど、こういう個人的な交流は一度もなかったから。
斎藤さんは高坂さんの方にも声をかけた。
「高坂さんも、良ければどうぞ」
高坂さんは、それを聞いて慌てた様子を見せた。
「いや、それはさすがに。女性の部屋には入れないですよ」
すると斎藤さんは、少し目を細めて表情を和らげた。
「大丈夫ですよ、私は気にしないので」
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