幕間4 平民の少女は連れて行かれる

パーティー当日。マイラはハリーから贈られてきたドレスと靴、そして無駄に煌びやかな装飾品を身に纏い会場に向かった。


「これ、似合ってないよね…」


高級品の白銀のドレスを見下ろしため息を吐くマイラ。田舎育ちの平民が着ても良いようなものじゃない。明らかに似合っていないドレスも靴も脱ぎたくて堪らなくなる。しかしそんな事をしたらハリーがなにをしてくるのか分からない。

パーティーを休むかどうか考えたところでマイラを迎えに来たのは豪奢な馬車。ハリーが用意したものだった。


「お迎えに上がりました」


体格の良い執事らしき人間にそう言われたマイラにはもはや逃げ道は存在しなかった。王城はとても大きく見た目だけで萎縮してしまいそうになる。びくびくしながらマイラが中に入ると知らない老人が声をかけてきたのだ。その人物は王城内での案内人で挨拶を済ませるとハリーの元まで連れて行かれる。


「やぁ、マイラ」

「ハリー殿下…。こんばんは」


良い笑顔を見せるハリーにマイラが頭を下げると「顔を上げてくれ」と言われる。

改めて見た彼はキラキラの王子様。

やっぱり自分がエスコートしてもらうなんておこがましい。今から断ろう。


「あの…殿下」


決意を固めたマイラが声をかけようとしたが落ち着かない様子できょろきょろとなにかを探し始めるハリーに首を傾げる。


「ねぇ、アイリスを見なかった?」


ハリーの婚約者の名前を聞いてマイラは胸がどきりとした。

確か貴族の方は自分の婚約者をエスコートするもの。そうなるとハリー殿下の相手はアイリス様なのだから自分の存在は邪魔になるわ。解放してもらえるかもしれない。

マイラは期待しながら首を横に振った。


「すみません、見ていないです…」

「そっか。気にしないで」


ここだ、と思って口を開いた。


「で、殿下ははアイリス様をエスコートされるのですよね?」

「そうだね、アイリスエスコートするよ」

「え?」

「アイリスとマイラ、僕が二人をエスコートしてあげるね」


にっこりと笑うハリーにマイラは頬を引き攣らせた。

貴族社会の事はよく分からない。だから二人の女性を同時にエスコートして良いのかも分からない。戸惑う彼女を置いてハリーはアイリスを探し始める。しかしどれだけ探してもアイリスは見つからなかった。それが当たり前であると気づかないまま。

イライラした様子のハリーと一緒にいるのは恐怖でしかない。余計な事を言ったらまた怒鳴られてしまう。

平民のマイラは黙っているしか出来なかった。


「なんだって!?アイリスが先に入場をした?」

「はい。アイリス様はカイ・ハーバート小侯爵様にエスコートされて会場入りしたそうです」

「僕という婚約者がいるのに他の奴にエスコートされたのか!」

「……ええ」


執事の人はハリーに対して呆れたような顔をする。何故そんな顔をしていたのかマイラが知ったのは会場に入ってからだった。


「マイラ!会場に行くぞ!」

「え?」

「アイリスに文句を言ってやらないといけないんだ!急ぐぞ!」


乱雑に手を引っ張り、会場まで連れて行かれた。

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