第17話 オカムーの収穫


 そう言えば、この世界って「グラノノエール」って言う星らしい。


 前に異世界転生者がちょくちょく来る、みたいな言い方してたから・・・


 地球に対して平行世界なのかもしれない。


 そう言えば他の異世界転生者さんって、言葉とかに困らなかったのかなぁ・・・?


 あ、そっちは異世界転移、ってやつか。


 ウェブ読書、ちゃんとしておけばよかった。



 あ。それから、あのあとラク神父に聞いたら、魔女が眠りから覚めるのは壱年半後くらいらしい。


 それと、半年後には王宮に戻らなきゃいけないって言われた。


 聖女について、天啓があったと。


 アメ、として。


 魔女討伐隊に聖女として同行する使命をおびていることを切り出された。


 落ち着いて言おうと思っていたけど、選ばれし者を望んだ、と言われた。


 魔女の呪いにかかった『レイン姫』は眠りについた。


 そして定められた時間の間に、運命の相手は現われなかった。


 棺に入っていたのは葬式の準備も兼ねて。


 そして天啓通り、なぜか『私』がレイン姫の身体に転生した。


 そして『誰か』のキスで目が覚めて、ある程度の適性を計られていた、と。


 

「全部、演技だったんですか・・・?」


「違います。レイン姫は嫌われ者だった。私も苦手だったんです」



――ん?前に結婚を考えてるって言ってたのに?



「ラク君神父はレイン姫の恋人だったんじゃないんですか?」


「私は身体の相手役でした・・・三人兵を育てるために」



 少し、唖然として言葉を無くした。


 ラク神父は私を優しい目で観察していて苦笑した。



「そんなことは、あちらでは起こらないんですか?」


「わ、分からない・・・そんな世界があちらにもあるかもしれないとか思って・・・」



「動揺してるんですね。大丈夫。姫は計られてばかりですよ、アメ」


「あ。今の気遣い、嬉しい」


「そうですか。そう言えばマーマレードジャムクッキーのお礼状来てましたよ」



 手渡された手紙を開けている時に、ラク神父が言った。



「そういえば、今日は豆売りが来る日ですよ」


「ああーー、忘れてたぁ。カゴを背負った豆売り~見てみたい~」



 神父はそろそろ栗の季節ですよ~、とにこにこしながら言う。


 今年は多少、金銭面に余裕があるので買えるかなぁとぼやいている。



「栗っ・・・!!」


「嬉しいことに、『むきぐり』なんです。人気ですよ。この時期」



 豆売りがやって来る季節らしい。


 まわりの木々は紅葉し始めていて、そう言えばここに来て四ヶ月くらいになる。


 まだまだ勉強したいことでいっぱい。


 皆と一緒にすごしたい。


 季節の関係で、今月は『奇跡芋』がさらに大量に収穫できたらしい。


 だから「ちょっと金銭面で余裕がある」のだろう。


 どうも向こう側からの要望で、『奇跡芋』と物物交換希望の手紙が届いたらしい。


 普段は巡回豆売りって単体行動らしいけど、芋と交換だから四人で来るらしい。



 村の入り口までおもむいて、訪問の日、豆売りたちと交流。


 全員、素朴な美を持ってるひとたち。


 私はシャツにズボンに頭にベバロを巻いているので、お姫様には見えないと思う。



 ラク神父たちが交渉に入っている。


 ある程度の量の『奇跡芋』がすでに用意してあって、向こうは荷車持参。


 背中にカゴを背負っているって聞いたのに、大量に交換するから袋を持ってるだけ。


 服装は黒いTシャツに黒いズボン、黒いブーツ。


 そしてその黒いTシャツには白い「豆」の文字が記されている。



「シャツ可愛い~」


 交渉中だった豆売りさんのひとり、ビックリして私を二度見して交渉に戻る。



 豆売りと言っても、最近は展開していて、栗や甘納豆や醤油を出しているらしい。


 と、言っても・・・多少の高額。


 ただ、今年は買えそう。


 ちなみに醤油は、200年くらい前の異世界転生者が残した書き置きから作ったらしい。


 だとしたら日本人かなぁ。


 先程からちらちらとこちらを見ている豆売りのひとりとまた目が合う。


 交渉のあと、声をかけられた。



「姫様、ですか?姫様だとお見受けします。しかも異世界転生していらっしゃる」


「えっ・・・」



「いい。悪い魔女は、うわさではハゲドク山にいます」


「ハゲドク・・・荒れ地ですか?」



「ハゲているうえに毒を持ってるから」


「禿毒山・・・?」



「それと・・・」


 思わずつばを飲み込んだ。


「な、なんでしょう・・・?」



「このシャツの、豆って字・・・ふたつの転々、丸いでしょう?豆を表現してるんです!」


「うっそー、可愛い-!!」



 苦笑するラク神父が言った。


「姫よ、異世界転生者が意外がると聞いていますが、この世界にはTシャツプリント屋があるんですよ」


「・・・ええーーーー!?」


 豆売り達が、異世界転生者なのか、とぼやきながら帰りの準備。


 三人兵が「広めないで~」と哀願している。



「大丈夫、豆売りには豆売りの美学があるのでお気にせず、マーメ」


「「「マーメ」」」と三人兵。



「・・・なに?」



「ん?豆売り関係の、感謝の言葉です」


「あ、うん。宗教ですか?」


「ええっ?違いますよ、挨拶です」



「あ、じゃあ・・・マーメ」


「マーメ」



 このあと、米でできた酒も手に入って栗ごはんを炊き出しした。


 実は豆売りさんたちから黒胡麻も少し多めに売ってもらっていた。


 黒胡麻も高級品。


 そっちはポケットマネーで買った。



 醤油もあるし、奇跡芋は『大学芋』にしたら喜ばれるかどうか試してみるつもり。


 村のひとたちが喜んでくれるといいなぁ。

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