第2話

第2話



 私は、賑わう街の中にいた。


 私がいる聖地は、聖魔界の南端にある。


 山間の辺境にありながらも一つの都市として発展し、いろいろと充実していた。


 聖地の場所が南端ということもあり、今は季節でいうと冬であるが、気候は穏やか。


 温暖な聖地の穏やかな日々の生活ならば、果ての塔特注で誰にでも支給されている特別な薄衣、それ一着だけ纏っていれば問題はなかった。


 山に囲まれているため、聖地の北端の通用門以外出入り口となる場所は存在しない。


 周囲は自然の森になっていて、そのまま外界へ繋がっている。


 聖地すべての建物には、ところどころ華美な装飾が彩られている。


 聖魔王が放つ穢れ防止の呪印が、織り込まれていた。


 そんな中で人の楽しみという楽しみ、娯楽施設である酒場や温泉などがある。


 過飾な街に、溶け込んでいた。


 周期的に七十年に一度である、浄化の大祭。


 あらゆる人材を育成し指揮している、果ての塔と呼ばれる組織がある聖地。


 大祭を成功させるため、個々の世界へ無事に帰還を果たすために。


 宿命をかかされた人々を少しでも明朗活発な光ある心を維持出来るように、街中様々な仕掛けが組み込まれていた。


 街並みは、夕暮れ時となると中央部にある市場が活気づき、とても賑わっていた。


 遠征していた騎士団の一隊が帰還したこともあって、今日はいちだんと人で溢れている。


 聖魔界は、北端の一角に城を所有する聖魔王が、自らの欲望を満たすために、穢れを操り蠢いている。


 対峙している果ての塔へ、様々な策を仕掛けてくる。


 選りすぐりの騎士団は、聖魔王の動きを阻止するため、厳しい現実に立ち向かって行く。


 それは、自らの世界へ帰還出来る確実な保証された宿命でもあった。


 危険な遠征が多い騎士団以外に、普通の生活を営む人は多い。


 自らの世界へ帰還するには、一日一善の己の所業で図られる。


 過酷な騎士団と違う生活をしていても選ばれ、もとの生活へ戻れる可能性はあった。


 

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