第7話 アドリーヌの生い立ち ⑥
この時はマリリーズに抱きかかえられ背中をさすってもらい、幸いにすぐに気が付き立ち上がれました。でもこの後、心配したマリリーズが私を見守っているので、どこかに抱き付くと二~三回に一度は見つかってしまい、その度にクラッとしてしまうので、抱き付き癖は意識して減らすようにしていましたわ。マリリーズ以外の方に見つかってしまったら恥ずかしくて死んでしまいたくなるかもしれません。なので、寮の自室の中で、抱き付ける場所を見つけてそこで我慢していました。
変な癖を身に付けてしまいましたが、婚約者候補が見つからない以外は学園生活はつつがなく過ぎていきました。学年が上がっても私の仲が良いメンバーはAクラスを維持し続け、切磋琢磨しながら勉強や魔法や武術の実践を頑張りました。休みの日には街に出かけたりも致しました。勿論、少しずつ婚約者の方との交流が増え、参加できる人数は減って行きましたけれど。
私の育成のスキルはフェルナンやマリリーズとエドモン姉弟だけではなく、クラブの後輩たちにも有効でした。ただ、なんとなく出来てしまう暗算などは自分でもどうしてできるのかが説明できない事は、教えることは出来ませんでしたけれど。
それでも、自分が学んで理解したことはきちんと伝えることが出来ますし、多分スキルが良い感じに働いているからその人が分かりやすい方法と言葉で説明が出来ているようなので、一度では無理でも二~三度説明すれば身に付くようです。そして、基礎が分かれば後は自力でどんどん理解していく人も出て来ましたの。
フェルナンも初等部を卒業する年になりました。そうそうフェルナンの学年には、第三王子殿下がいらっしゃって、なんとフェルナンと仲良くして下さっている様なのです。初めての子供参加の社交の時に第三王子殿下にご挨拶をして頂いたお父様とお母さまは恐縮しまくりでしたわ。勿論親も同伴ですから、その後ろには王様とお妃さまがいらっしゃるわけですからね。私も王子殿下はフェルナンが、中庭で食べる昼食の時にお友達として連れてきたりするものですから、大分慣れていましたが、王様とお妃さまには緊張しすぎてきちんとカーテシーが出来たかも覚えていないほどでしたわ。
学園には第二王子殿下も通っていらして、私たちの学年より一学年上なのですが、あまり良い評判は聞きませんでしたの。権力を振りかざす方のようで・・・あっ、これは不敬罪に問われてしまいますわね。決して声に出しては言いませんわ。思う所は色々ありますが、心の中だけに留めておきますわね。
でも第三王子殿下が良い方のようで本当に良かったですわ。フェルナンにも良い影響を与えてくれる方のようで、立ち居振る舞いなどが驚くほど洗練されてきましたのよ。
そしてフェルナンも義務スキルを授けてもらう事が出来ました。十歳の時に授けて頂いたスキルは火と光でしたの。光のスキルを授けて頂ける人は少ないので、我が家はちょっとしたお祭り騒ぎでしたのよ。
と話は逸れましたが、授けて頂けたのは分析スキルでした。学者になるのかしら、あぁ、フェルナンは領主になるのですから、きっと領地で起こった色々な問題を分析して解決していくという事なのでしょう。我が領地は安泰ですわね。
夏の休暇で帰省し、フェルナンのスキルを聞いた両親も私と同じように感じたようです。私自分のスキルの使い方は間違った解釈をしていましたけれど、フェルナンのスキルの使い方は正解だったようですわ。
夏の休暇が終わると社交シーズンです。私にとっては地獄の期間です。そろそろ婚約者候補を決めませんと本当に結婚できない事態に陥りますわ。お父様もお母さまもそしてフェルナンもずっと家にいてもいいよ、好きな事をしていればいいんだと言ってくれますが、フェルナンのお嫁さんになってくれる方はそうは思わないですわよね。こんな小姑がいたんじゃ結婚できないかもしれませんわ。それだけは避けなければ!
そうしてこれまでよりも積極的に殿方にお声がけをしてみたり致しましたが、全く効果は無く、いえむしろ逆効果だったのか、皆さん私が声をおかけするとちょっと腰が引けているような気がしましたの。知らないうちに私何かとんでもない噂でもささやかれているのでしょうか。マリリーズに聞いても心当たりがないようです。なんかとっても落ち込みましたわ。そして知らず知らず私の抱き付き癖は頻度を増していったのです。
そうして最終学年の社交シーズンの終わりにやっと婚約のお申し込みが来ましたの。お相手はマクシミリアン・セギュール様で侯爵家の次男で近衛騎士をしておられます。そんな方とのお話がどうして・・・と思いますが、このお話を持って来て下さったのは王家でしたのでお断りする事はもちろん出来ませんでした。
降って湧いたお話に困惑気味の我が家ですが、中等部卒業と同時にセギュール家のタウンハウスの方へ入り結婚までの間色々と学ぶことになりましたので、卒業試験の準備と同時進行でその準備も進めることになりました。
そうしてお忙しいマクシミリアン様とは一度も会わないままセギュール家のタウンハウスへ行くことになりました。マリリーズが付いて来てくれたことが本当にありがたかったのですわ。
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