第5話 アドリーヌの生い立ち ④

 土と水と育成って、私は農業を頑張ればいいのでしょうか。今度の休みに家に帰ったら、庭師に相談してみましょう。マリリーズのスタイリストというスキルは私は初めて聞きましたが、先生によると侍女などにはとても有用なスキルとの事でマリリーズは大層喜んでいました。

 ベアトリス様は鑑定を、セレスト様は修復を、エドガール様は交渉を、ローラン様は調合を、ヤニック様は雷魔法を戴き皆さん嬉しそうです。


 特待生のうちグレース・ルコックさんは何も授かりませんでした。ご自分でも魔力が少ないという自覚はあったので仕方がないとおっしゃっていましたが相当ショックだったようです。もうお一人のギャスパル・クプランさんは査定を授かっていました。ギルドや商家への就職には有利そうです。


 この結果を長期休暇に家に持ち帰り家族と将来について話し合いがもたれるのです。スキルを授からなかった者は平民は魔力が少なかったから仕方がないと同情的に受け止められますが、貴族はもともと魔力はあると思われるので、努力が足りなかったと責められると聞いています。きちんと努力をしていた方には魔力量を図ってその結果が持たされるそうですが、努力が足りなかったと責められるのも、魔力が少ないと言われるのも、貴族としては屈辱的ですわね。

 もちろん人によっては授かったスキルが役に立たないものだと親から見放されてしまう方もいるそうで、なんでもいいからもらえてラッキーともいかないようです。


 私のスキルは両親に認めて貰えるでしょうか。領地にとって農業は大事な礎ですから見放されるようなことは無いと思うのですが、少し不安です。


 さぁ休みに入り今までとは違いフェルナンと一緒の帰省です。マリリーズとマリリーズの弟のエドモンの四人で馬車に乗り込みます。マリリーズと二人でも十分楽しかったのですが、四人だと今まで以上に話も弾みます。


 領地までは馬車で四日間の旅です。子供ですので普通より休憩の回数も時間も多く取っていますし馬車の速度自体も気持ちゆっくり目のようです。場所によっては街道が凸凹していたり、砂利道だったりするので、速度を上げると揺れたり時にはバウンドしたりするのです。馬車酔いしてしまいますわ。


 領地に着いたら、マリリーズとは暫くお別れです。マリリーズ兄弟も親子の時間は必要ですものね。二~三日はゆっくりして、その後はまた我が家に通いで来てくれるそうです。


 家ではお父様とお母さまが首を長くして待っていました。先ずはフェルナンの初めての学校生活の報告をして、その後で私のスキルの話です。


 お父様は大変喜んでくれました。育成は農作物を育てるのではなく、人を教育するのに適したスキルのようです。後継者育成とか新人育成という言葉があるくらいなんですって。後継者も新人も私の生活のにはあんまり関係ありませんので知りませんでしたわ。


 試しにこの休みの間にフェルナン達に勉強を教えてみることになりました。マリリーズにも今までの復習をしてもらいましょうかね。


 育成スキル多分凄いです。

「お姉さまに教えてもらうと解りやすいです」とフェルナンたちのやる気が上がっています。まぁ、やる気の部分は本人の気持ちの持ちようなので、スキルだけのせいではないと思うのです。でも皆、分かったようなーとか分かった事にしておこうなんて部分が、そういう事だったんだーと納得できて一気に理解が深まっていったようです。今までの三年間もマリリーズとは一緒に復習していたのですがこういう事は無かったので、スキルのおかげなのかもしれませんね。


 そうそう、家ではフェルナンがお姉さま呼びに戻りましたのよ。ちょっと嬉しいですわ。


 マリリーズもスキルのおかげか、今までにない髪形にしてくれたり、小物のチョイスがぴったりはまる様になってお母さまに褒められたりしていますの。二人で神様にお礼を言いに教会に行きましたわ。


 二か月の夏の休暇も終わり、十月からの後期の授業の為に王都に戻ります。秋から社交のシーズンでもあるのでお父様とお母さまも一緒に王都へ向かいます。マリリーズのご両親は少し遅れていきます。クーベルタン家はタウンハウスを持っていないので、社交シーズンの三か月程部屋を借りるのです。本当はうちのタウンハウスにお泊めしたいのですが、他の男爵家から色々言われてしまいますので仕方がありません。

 という訳でマリリーズのご両親は本格的な社交が始まるギリギリにに王都に来て、終わると急いで帰って行きます。出費を出来るだけ少なくするためには仕方がないですわね。


学園は四月から始まり七月一杯までが前期の授業があり、八月九月の二か月が夏の休暇で十月から二月までが後期の授業がありますが、そのうちの十二月半ばから一月の半ばまで年末年始の休暇になります。その間に学生同伴の社交があり、社交デビューの練習と婚約者探し等が行われるのです。


 初等部の間は、親にお友達を紹介するというのが主で、婚約者云々は中等部からです。でも親はそうもいっていられないようで、初等部の頃から情報収集は抜かりなく行っているようです。


 

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