CQC使いは魔法ファンタジー世界を渡り歩く
@FZK
第1話 気がつけば知らない森の中
いつもまったく予期しないタイミングで人生の転機というヤツはやってくるのである。
どうやら今回も意図しないタイミングで転機ってのが呼んでもいないのに遊びに来たらしい。
ほんの10秒前には乾いた砂漠の夜の峡谷を任地に向かって隠密移動していたのだが、
何の前触れもなく急に視界が真っ白になったと思ったら次の瞬間には森に立っていた。
しかも明るい。深夜から一瞬にして真っ昼間になっている。
意味がわからない状況だ。
まったく意味がわからない。
一瞬混乱しそうになるも、
今や条件反射のように脳が身体に、身体が脳に冷静になるように指令を出す。
すぐに地面に伏せ、手近な木のそばまで移動して遮蔽に身を隠す。
この瞬間移動(?)が敵の新兵器によるもので、今この瞬間もスナイパーがこちらが混乱している隙に狙撃しようとしている可能性だってある。
あり得ないかもしれないが、それを言うなら今この状況がすでにあり得ないのだ。
どれだけ慎重になっても十分すぎるということはないだろう。
どんな細かい変化も見逃さないように身を伏せながら周りを探る。
幸い草の背丈は高く敵がいるならこちらの身を隠してくれているはずだ。
(もしかしたら本当はもう死んでる、って線もあるかもなぁ)
周りを注意深く探りながらもそんなことを頭の隅で考える。
(夜の砂漠の峡谷を注意深く移動していたが、相手に凄腕スナイパーがいてヘッドショット1発で脳が破壊されて自分が死んだと気づいていない、とか?
いやいや、それにしてはブーツの底で感じていた地面の感覚だとかが鮮明に連続しているのはおかしい。
神隠しにでもあったってのか......?)
そんなことを考えながらも数分間注意深く身構えていたが一向に接近してくる敵の気配は感じられず、狙撃もないことから次の行動を起こすことにする。
まだ狙撃の可能性も捨てきれないから迂闊に立ち上がっての移動はできない。
身を隠しつつポイントを移動して敵がいるなら敵を撒く。
風の向きを確かめて念のため風下方向に移動することにする。
もちろん足跡擬装も忘れずに。
草むらに身を隠しながら移動を始めた。
300mほど移動したところに倒木があり姿を隠しやすい地点を見つけた。
倒木の陰に身を隠すことにする。
狙撃の心配は.........ひとまず無し。
「ふ~、いやなんだこれ?」
側に人がいても聞こえるかどうかの小さい声であるが独り言を思わずこぼす。
訓練と実戦の賜物で冷静さこそ保っていたが、よくわからなすぎる環境に放り出されていたところひとまず落ち着ける状況になり、知らず緊張状態であったことに気づく。
落ち着くためと状況確認のため、
周囲の状況と自分の状況を確認していくことにする。
まず周りは知らない森の中。
セコイアのような大きな木が多く生えている。
そのため森とは言っても木々の間隔は広く空いており、視界はそこまで悪くない。
草も高く繁っているので豊かな森と言っていいだろう。
ただし、その植生はよく観察すると自分の知っている植物とよく似ているが違うところもあることに気づく。
木々はセコイアのような幹をしているが高い位置に繁っている葉を見ると針葉ではなく広葉であるし、
草むらに自生しているベリーを見ても自分の知っているものと形や色が違う。
よく知っているようで知らない世界のような感じがする。
ベリーがよくわからないのは痛いな。
毒性がある可能性だってあるから迂闊に口にできない。
食料がどうしようもなくなったときの最終手段だな。
食料については早急になんとかしなければならない。
作戦行動中であったとはいえ、今回は隠密に相手の拠点を偵察する任務だったため必要最小限の装備しか持ち合わせていなかった。
食料についても切り詰めて数日分のカロリーバーしかない。
ということで持ち物について詳しく確認しよう。
「ドッグタグ」
2枚の認識票がチェーンで繋がっている
name:RIKI KOKAGO
blood type:O
birth:1989.6.23
TOKYO.JAPAN
と記されている
(古神子 怜輝がおれの名前だ。ほとんどの初対面の人が正しく読めないのにはもう慣れた)
「M1911カスタム」
.45 ACP弾を使用する拳銃
マガジンは7発装填できる
マガジンの予備は1つ
リキはナイフと一緒に使用するスタイルのためグリップの左側面が削ぎ落とされるなどの改造が加えられている
(MG3スネークスタイル。これを使っていると蛇だって生でムシャムシャいける気分になる、かもしれない(?))
「タクティカルナイフ」
刃渡り15cmのフルタング(刃からグリップまでが金属で一体化しているもののこと)
材質はダマスカス鋼の特注品
(いろいろなナイフを使ったがこいつが一番手に馴染む。正に相棒だ)
「SCAR-Hカスタム」
7.62 x39mm弾を使用するアサルトライフル
マガジンには20発装填できる
マガジンの予備は2つ
CQCでの取り回しを重視したカスタムが施されている
(バリバリ連射する使い方はあまりしないので1発の威力重視でL型が個人的に好み)
「トマホーク」
全長30cmほどの軽量小型な手斧
チタン合金製
主に投擲に使用する
(1本あると助かることが多いとても便利なヤツ)
「サバイバルキット」
サバイバルに必要な様々なツールがまとめられているキット
中身はファイアスターター、救急キット、コンドーム、テグス、ナイロンコード、浄水タブレットなどなど
(コンドーさんが気になる?気になる?)
「カロリーバー」
必要なカロリーを補給することができる
リキは味にもこだわり日本製を愛用
(味がよければそれだけ気持ちの充実につながる。気持ちの充実は生存率につながるというのがおれの持論。つまり日本製最強!)
持ち物は以上。
あとは身に付けている砂漠迷彩のミリタリーキャップ、BDUとプレートキャリア、黒のTシャツと下着とソックス、革製のミリタリーブーツくらいのものである。
周囲は草木の生い茂る森なのでちょっと迷彩効果は期待できそうもない感じ。
ここがどこかもわからないし、時間帯さえ判然としないが、夜営用の道具はキャンプにおいて行動中だったので何もない。
数日であれば問題ないがあまり長期のサバイバル生活には心もとない。
初めはこの現象が敵の新兵器によるものの可能性も考えたが、よくよく考えると敵を瞬間移動させて何の得があるのかとも思えてくる。たかが敵1匹にこんな大がかりな仕掛けをする余裕があるならとっとと頭を撃ち抜いた方が早い。
冷静に、とか言いつつ実は動転していた自分に気づき急に恥ずかしくなる。
ともかく、この現象が神隠しなのかなんなのかわからないが周囲に仮想敵はいない、と判断して良さそうだ。
「うーん......どうしたもんかなぁ」
恥ずかしさを誤魔化すようにひとりごちつつ、あらためて周りを見渡した。
その時目に映るのが「よく知っているようで知らない」ものであることに急に気味悪さを感じた。
まるでお前は独りなのだと言われているように。
「......アホらし。独りなんて今に始まったことじゃ無し」
誰に言うでもなく、踏ん切りをつけるように呟くと立ち上がる。
ここがどこかもわからないが、まずは夜営に良い場所を見つけなくては。
仮の拠点を作り、そこから行動範囲を広げて状況把握に努めよう。
とりあえずの行動方針を決めるとリキは歩き始めたのだった。
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