2.〈闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光〉……古代ギリシャでとんかつを

 今回もまたFCファミコンより……〈闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光〉です。


 後に、SFCスーファミで名作の『3』(主人公や仲間がなぜか不死身という設定と、その理由が明かされる後半の展開が秀逸)なんかも輩出した、同シリーズの1作目にあたります。RPGです。

 発売前、ゲーム雑誌に出ていた開発中の画面写真などでは、いかにもなドラクエフォロワーという感じだったのが、いざ製品版をプレイしてみるとまるで別物だった……というのが印象深いですね。


 制作したのは、〈データイースト〉なるメーカーなのですが……。

 同社は妙なクセがあるおバカなゲーム(ゲームの出来自体は良いものも多い……〈メタルマックス〉のような)をよく作ることで知られており、そんな同社らしい特徴を持つゲームは特に『デコゲー(会社のロゴがDECO(データイーストコーポレーションから)なので)』とも呼ばれ、ボンクラのようなオールドゲーマーには名の通ったメーカーだったりします。

 で、このヘラクレス1もご多分に漏れずそうでありまして……。


 そもそも、神話に詳しい方ならお分かりでしょうが、『ヘラクレス』という名前がまず、『(女神)ヘラの栄光』という意味のはずだから、〈ヘラクレスの栄光〉ってタイトルは『ヘラの栄光の栄光』になっちゃうわけで……。

 まあ、固有名詞だからいいんじゃね?ってことでそれはいいにしても、『闘人魔境伝』という仰々しくインパクトはあるけど微妙に意味不明気味な単語なんかが、いかにもなデコゲーらしさだったりします。

 ストーリーも、「ハデスにさらわれたビーナスを助け出す」という……今にして思えば微妙に「んん??」となるものでしたしね。

 あ、あとパッケ絵も、半裸に毛皮の腰巻巻いた筋肉にーちゃんという、子供心をまるで掴まないものでした……が、それもまたデコゲークオリティ。

 ちなみに、いかにも脳筋なその見た目通り、『HPを消費して魔法を発動する道具』は使えても、本人は一切合切魔法を覚えません。

 一方で、モンスターには回復魔法を使えるヤツもいたりします。


 ただ、ゲームとしてはわりとちゃんと遊べるんですよね。

 ゲームバランスがかなり雑(特定のザコ敵よりもラスボスの方が圧倒的に攻撃力が低い)とか、イベントアイテムが多いくせに持てるアイテムの数が少ないとか、まあ難点も多いんですが……。

 当時のFCゲームなんて、大なり小なり問題を抱えてるのが大半だった(ドラクエだって2はバランス調整をミスってた)ので、頑張ればクリア出来るだけむしろマシな方だったと言えるかもです。

 敵によって有効な武器が違う(戦闘中持ち替えも可)とか、モンスターとも会話が出来る(ただし意味はほぼ無い)とか、装備に耐久度があるとか、わりと斬新なアイデアも盛り込んでましたし。

 音楽もわりとカッコイイし、街とフィールドがシームレスに繋がってるのも珍しかったし、ボスモンスターに攻撃グラフィックとかあったし。


 しかし……随所で妙なセンスが炸裂してまして。

 ゆえにやはりこれは、愛すべきおバカなデコゲーでもあるのです。


 その一つとして、街には八百屋や魚屋、肉屋などがあるんですが……(そもそも古代ギリシャで『八百屋』って……)。

 売ってるのが、『はくさい』とか『さんま』とか、挙げ句の果てには『とんかつ』なんですね。あと、肉屋はほかは『とりにく』で、なぜか牛肉は売ってない。


 ……ええ、そりゃもう「なんでやねん!」ですよねー。


 子供でも分かりますよ、さすがに古代ギリシャに『とんかつ』は無いやろ……と。(実際にははくさいもさんまも獲れないようです)

 しかも食べてもチビッとHPが回復するだけで、別にゲーム上必要ない、という……。(一応、八百屋の『にんじん』だけは特定のボスと戦うために必要。ただし、値段はほかの野菜の10倍近いボッタクリ……ってまあ、それでも安いですけど)


 他にも、戦闘中の攻撃時にいちいちヘラクレスの「ゆくぞ!」「これでもくらえ!」「どうだ!」とかいう台詞が入るとか、戦闘で死んだときのメッセージが「おびただしいりゅうけつ!」だとか……。

 パスワードコンティニューですが、かなり適当にパスワード入れてもゲームが始まる(ただし、モンスターを道具として持ってたり、かなりヘンにはなる)とか……。


 こういう、『なんだコレは』な雰囲気が、まさにデコゲーの独特なセンスなんですよね、ハイ。

 まあ、それがまた楽しかったりするんですが。



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