異世界転生VTuber、配信ゴールドで魔王軍を買収します!

@yuto_seo

第1話 プロローグ 配信終了、そして転生開始

第1章 VTuber、異世界にログインしました!

 目が覚めたとき、俺は会社のデスクにいなかった。

 ……いや、正確にはブラック企業のエフェクト付きデスクの上で白目剥いて倒れてたはずだ。配信の時間もぶっちぎって、朝からの納期に追われ、ようやく提出ボタンを押した瞬間——目の前が真っ白になった。

 なのに今は、見渡す限りの草原。空はやたら鮮やかな青で、雲がくるくると踊るように流れている。小鳥がピチュチュッと鳴いて、地面にはキノコが……スマホの形してる!?

「……え? ここ、どこ?」

 全身の関節がギシギシ鳴るのを感じながら、俺はゆっくりと立ち上がった。スーツのまま、靴もビジネスシューズ。目の前にはスマホそっくりのキノコがにょきにょき生えていて、「LiveFairy」と刻まれたアイコンが浮かんでいる。

「うわ、嘘だろ……」

 その瞬間、スマホ型キノコがぷるるんと振動し、画面が勝手に点灯する。

 ——バッテリー:∞

 ——通信:妖精ネットワーク接続済み

 ——LiveFairy起動しますか?

「……夢? まさかVTuberの俺が異世界に転生して、配信する展開……?」

 ためらいながらも、俺は画面をタップする。光が弾け、虹色のUIが空中に広がった。

 画面に映るのは、俺のLive2Dモデル——じゃなくて、完全に3D化された俺自身だった。しかも、背景には草原がそのまま映ってる。これ、どう見ても配信アプリ起動してるよな?

「マイク、生きてんのか……?」

 そっと喋ると、画面の右上に波形がぴくりと反応した。なんだこれ。夢にしては精度が高すぎる。

 次の瞬間、画面上に視聴者コメントが流れた。

 《え、ユウト!? 本物!?》

 《どこ? ロケ?》

 《CGすげえ……いや、これリアルじゃね?》

 え、視聴者いるの!? しかも、生で見てる!?

「や、やあ! みんな、こんにちは! 突然だけど、今から異世界配信、始めるぜっ!」

 何もわからないけど、これはもう、やるしかない。

〈配信タイトル:異世界転生しました!草原から全力逃走配信〉

 そうして5分後——

「アアアアアアアッ!? なんで俺、走ってるのおおおおおおッ!!!」

 俺は全力で逃げていた。後ろから追いかけてくるのは、緑色の肌に鋭い牙、ボロボロの布を身にまとったゴブリンたちだ。3体。速い。ていうか、走り方がゾンビ映画のやつ!

 どこからともなく現れた金髪の少女に助けられた……まではよかったのに。

「ですから言いましたでしょう!? あそこは魔物の縄張りですわ!」

「いや! 言ってないって! 俺が『キノコが光ってるから近づいてみよう』って言ったら、あんたが『わたくしも気になりますわ』ってついてきたんじゃ——うおおお来たああああ!!」

「左に回避ですわ!!」

「右だろこれはあああああ!!」

 視聴者のコメント欄は大盛り上がり。

 《画面酔いするwww》

 《でもアリシア様かわいすぎ》

 《この配信、伝説になるぞ》

 《スパチャいくわwww》

 ピロン、と通知が来た。

 ——【セレブリス姫から10万Gのスーパーチャットが届きました】

 え? え? じゅ、10万G? って、1G=100円でしょ……つまり……1000万円!?

「おおおおおい!!! 桁が!! 桁が違うんだよこの世界!!」

「今のうちですわ! あちらに転移陣が見えました! あれを使えば一時的に撒けますわ!!」

「了解うううう!!!」

 俺とアリシアは転移陣に飛び込み、光の渦の中へと消えた。


 気がつくと、俺たちは古びた石造りの祭壇の中にいた。外の喧騒は聞こえない。ゴブリンは撒いたらしい。

「……ふう。死ぬかと思った……」

「まったくですわ。あんなところで戦うなんて正気の沙汰ではありませんわ」

「いや、逃げてたんだけどな……」

 俺はへたりこみながら、ふとスマホ型LiveFairyを確認する。配信はまだ続いていた。

 コメント欄はまだ熱狂の最中だ。

 《転生系でリアルタイムってすげー!》

 《姫様ガチで姫すぎる》

 《ゴブリンとの逃走劇、今後の伝説になる予感》

 《ユウトのリアクション最高すぎる》

 《10万G!? 金持ちかよ……》

 そして、画面中央に見慣れない通知が現れた。


 ——【特別任務発令】

 目標:魔王軍の買収

 期限:30日以内

 報酬:帰還権+永続放送権

 必要資金:1億G(=10億円)

 補足:この世界の経済基盤を理解し、魔王軍幹部との交渉を行うこと

 LiveFairy管理AI「アルメリア」


「……え?」

 思わず固まる。

 1億Gって……10億円?

 この短期間で、配信だけで、そんな金額を稼げってことか?

「アリシア、おい。ちょっと聞きたいんだけどさ、魔王軍って——買収、できるの?」

「できるかどうか、ではありませんわ。金で動く幹部もおりますの。問題はその金額と……それを稼げる手段ですわね」

「その点、俺には配信がある……と」

 ここまでの配信、同時接続はすでに十万人を超えている。ゴブリン逃走だけでこの盛り上がりなら……戦闘、政治交渉、魔法……全部ネタになる。

「……おもしれえ。やってやるよ。VTuber瀬尾ユウト、異世界で、魔王軍、買収してやんよ!!」


 魔王ルーク=ダイナストは漆黒の玉座に腰掛けながら、光の映像装置に映る少年の姿を眺めていた。

 フフ……異世界からの来訪者か。LiveFairyとは、また奇妙な手段でこの世界に干渉してくるものだな。

 だが、面白い。己の力で軍を買収しようという者など、数百年ぶりか。

 「——その目、悪くない」

 ルークの唇が、不敵に吊り上がった。

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