朧夜狐

@rakkodog

第1章

この街には、普通じゃないものがいくつかある

角の生えた人間、耳としっぽを持った子どもたち。

誰かが「傀儡(カイライ)」と呼び始めたそれは、生まれつき力を宿した者たちだった。能力は人それぞれで、時に成長や死をきっかけに変化する。


能力者たちは表に出ず、時に仲間を得て、時に敵と戦いながら静かに暮らしていた。

そんな彼らの拠点のひとつが、「狐火事務所」だ。

古びたカフェを改装し建てられたその拠点には

少し変わった住人たちが共同生活を送りながら、街の裏で起きている異常に向き合っている。


その仲間たちが、共に暮らし、傷つき、抗う物語。


2037年 12月8日

町はずれの通りに、らんまるという少年が居た

「あ~疲れた~」

早く帰ってぐっすり眠りたいけれど。

休む間は存在しない...!

クリスマスも近づいてきているし、そろそろ玩具店からの依頼も来る頃で、特に頑張らねばならない季節だ。

「......?」

道を塞ぐものを見て足を止めた

人が倒れている、

「まだ息がある、取り敢えず事務所に連れ帰るとしよう、あそこなら道具もいくつか置いてある」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

事務所の応接室

事務所の最年長、山羊鉈が静かにタバコに火をつけながら、ソファに座るらんまるを見下ろしていた。

「それで、連れて来たっつーワケか」

「あのまま放置していたら確実に命を落としていただろうしね」

「気持ちはわかるけど」

もう一人の仲間、赤牙が反対側のソファに座り、腕を組んで言う。

「拾ってくるにしても、事前に連絡くらいしてくれても良かったんじゃない?危険なヤツだったらどうするつもり?」


山羊鉈は煙を吐きながら少女をちらと一瞥し、低く呟いた。

「しかし妙だな。外傷なし、脈拍も安定、呼吸も整ってるが……起きる気配がねぇ」


「眠ってる、っていうより……何か抑えられてるような?」

赤牙が手を伸ばし、少女の額にそっと触れる。

「熱もない。薬物の影響とも違う。……でも、何か引っかかる感じがする」


「とりあえず、部屋を一つ空けて寝かせてやれ。食事と水はすぐ口に入れられるようにしておく。起きたら話を聞く」

山羊鉈がそう決めると、赤牙も頷いた。

「名前とかはまだわかんないけど……一時的な保護ってことで」

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