永遠の時をあなたと/外伝【エイプリル・フール】

SHINTY

エイプリル・フール

【ザクの初任務】

シャスタとシルビアが神になった翌年の事。

神になったばかりの二人は新年の任務を免除されていた。


1月半ば過ぎ、ガネーシャにアゴスとフィリアを貰い、シヴァに神器を貰って準備は整い──


FLAGの任務と上の任務をして過ごす日々が始まった。


そんな生活の中の1コマである。



「ザク、ここの雰囲気には慣れた?」



「ああ。技も高め合えるし、格闘家には最高の環境だよな。」



ここFLAGでは、あらゆる格闘技を隊員達に叩き込む。


それらを学び、強くなりつつある彼らは、自惚れる事なく常に死を意識して任務に臨んでいる。

師範達の教えにより、大きな怪我をする事なく任務を遂行していた。



「じゃあ、そろそろ任務に出てみる?」



「!」



任務と聞き、目を輝かせるザク。

大きな期待に苦笑しながら、シルビアが任務について説明する。



「最初はCランクからやってもらうわ。徐々にランクを上げて行って、最終的にはAランクに就いてもらう。それで良い?」



「Cランクからか……。まあ、それが無難だな。」



素直に頷き、任務の詳細を聞く。



「今回の任務は簡単な警護よ。違和感のないよう、ラフな服装でお願いするわ。」



「ラフな服装って?」



「そうねー、ちょっとお洒落な普段着ってとこ?」



「お洒落な普段着か。で、任務に就くのはいつからだ?」



これからすぐにと言われ、眉間にシワが寄る。



「着替えに帰る時間がないじゃないか。」



「心配無用よ。潜入捜査用の服があるから。」



それならばと衣装部屋に向かう二人。

無難な服を選び、着替えたザクを笑顔で送り出す。



「依頼人との待ち合わせ場所はコムリンクに入ってるわ。何かあった時もコムリンクで連絡する事。OK?」



「ああ。それじゃ行って来る。」



任務に向かうザクの後ろ姿。

それを見送りながら、イエスと小さなガッツポーズをする。

そんなシルビアは、クスクス笑いながら育成部へと戻って行った。



「さて、待ち合わせ場所は……っと。」



ナビを呼び出し確認する。

そんなに遠くない場所に印があった。



「って、あの喫茶店かよ。」



こっちに来てから何度か通った店だった。

目的地が分かったザクは、ナビを必要とする事なく喫茶店を目指した。


喫茶店に到着し、指定された席に向かうザク。



「え……?あれ……?」



依頼人の後ろ姿には見覚えがあった。

その服装にも見覚えがあり……



「何でここに……?」



首を傾げながら依頼人の所へ向かう。

ザクを見た依頼人が笑顔を見せて。



「遅かったわね。でも……ふふ、シルビアに感謝しなくちゃ。」



「つーか、何やってんだお前。俺は任務でここに来たんだぞ?」



「え、任務?何それ。」



きょとんとした顔でそう言ったのはライラである。

何だか話がちぐはぐだった。



「ちょっと待ってろ。」



何かあったら連絡を。

そう言っていたシルビアに連絡を入れる。



「なあ、依頼人の席にライラが居るんだが。」



〔あら、何か問題でも?〕



「あるだろうが。何でライラが居るんだよ。」



〔居て当然でしょ?ライラが依頼人なんだもの。〕



「はあ!?何だそれ!つーか、俺の任務って……」



訳が分からない。

初の任務は一体どこに?



〔ザクの任務はライラとデートをする事よ。トレーニングするのは良いけど、奥さん放置は許さないわ。〕



「放置って、そんなのしてないだろ……。」



魂レベルのペアなのに、あり得ないだろうとザクが言う。



〔女から見たら放置に見えるのよ。ザクが構ってくれないってライラに泣きつかれたんだから。〕



「そんなつもりは無かったんだけどな……。FLAGに馴染もうと必死だったからか……?」



頬をぽりぽり苦笑する。



〔まあ、そういう事だから。今日はライラを楽しませてあげてね。〕



「分かったけどよ、それならそうと最初から言ってくれれば良かったろ?初任務に緊張してたんだからな。」



何も騙さなくてもと文句を言う。



〔あら、騙して当然でしょ?今日は4月1日なんだから。〕



「!」



言われて気づいた今日の日付。

無言のザクにシルビアが言う。



〔エイプリルフール!〕



「チッ、やられたな。」



〔あはは、大成功ね。じゃあ、デートを楽しんで。〕



笑って交信を終えるザク。

初任務の話は流れたが、思えばデートは久し振りの事だった。



「聞いての通りだ。悪かったな、ライラ。」



「別に良いわよ。今の状況、ちゃんと理解してるから。でも、たまにはこうしてデートしてよね。」



「ああ、約束する。」



知らず寂しい思いをさせていた事に反省し、今日1日はライラの望みを叶えようと、デートに臨むザクであった。

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