第1話 始まり

──その昔、【魔神】と呼ばれる七匹の獣と、それらが使役していたとされる【魔物】を前に、かつての我ら『六種族【霊神れいじん】』は滅亡の危機に瀕したという。


しかし、当時【美徳びとく七傑しちけつ】と呼ばれていた七人の英傑が全ての魔神の首を打ち取り、幾千年に渡って続いた大戦に終止符を打った。


世界は平穏と安寧に包まれ、我ら六種族【霊神れいじん】は永遠にその幸せを享受する。



──かのように思われた。




『魔神消滅後も消えぬ【魔物】。』


『魔神復活を目論み、我ら霊神に仇なす裏切り者達【狂信きょうしん】。』


『そして近年、突如として現れた『新世代の魔物』とも呼ばれる【現夢げんむ】の存在。』



しかし、我ら霊神もただやられる訳ではない!!我らは『世界の夜明けを望むもの』





「過去の英傑達がそうした様に、次は我ら黎明騎士団が世界に夜明けをもたらすのだ著─デレハンドラ……ね」


終魔暦しゅうまれき2869年。


人霊種じんれいしゅ】が住む『エシール人霊国じんれいこく』にある小さな村の一角。

お世辞にも綺麗とは言えない家の中で、ボロボロになった本の中身を声に出して読む少女。



「……またこんな古臭い本読んで、''ムサキ''はホント好きだよね、こういうの」


活発的な印象を受けるハッキリとした声、窓から入る太陽光に照らされ輝く黄金色の髪と、深紅の瞳を持つ少女は、ムサキと呼ばれた少年に呆れた様子でそう問いかける。

彼女の名はエル・ナカリ。


この村の村長だった男ユウラ・ナカリの娘だ。



「なんだよォ〜、黎明騎士団に入るのが俺たちの夢だろォ〜?エルも楽しそうに読んでたじゃんかよ!!」


そして、活発的な年相応な少年を思わせる声、特徴的なくせ毛の黒髪に同じく黒い瞳を持ったムサキが、すこし不満げに言う。


「むぅ……」


痛いところをつかれたのか、頬を赤くし顔をぷっくりとふくらませ、エルは無言で手に持っていた本をムサキに向かって投げつけた。


「おい!!投げるなよ!!」


「──うるさ〜いッ」


これが彼らの日常、いわば『いつものノリ』というものらしい。


──しかし、今日この日だけは少しだけ、空気がひりついているように感じられた。



少しばかりの静寂が訪れ、空気が重くなる。


「──明日、なんだよな………」


ポロッと漏れたムサキの言葉。


「ちょっと?!考えないようにしてたのに言わないでよ!!緊張しちゃうでしょ!!」


その呟きは彼らの緊張をより高めるスパイスとなったようだ。






「おい!!聞いたか!?黎明騎士団の七番隊が遠征から帰ってきたんだってよ!!」


「噂じゃ今回の遠征だけで【現夢げんむ】と【魔物】の討伐数が100を超えるって話だぜ?」


「俺は500って聞いたぞ!!」


外では村の住民たちがそんな話題で盛り上がっている。



しかし、それもまた彼らの緊張をより深いものにしていく。


「おい、聞いたか……?」


「──聞いてない………」


ムサキの問いかけに、涙目になってそう答えるエル。



「明日の『黎明騎士団入団試験』…、多分全副隊長に見られそうだな…!」


「ちょっ!!!!聞いてないって言ってるでsッ」


                       


──続く。






໒꒱໒꒱໒꒱໒꒱໒꒱໒꒱



《設定騎士団!!『霊神れいじんってなに?』》


エル「ねぇ、ひとつ疑問なんだけどさ…」


ムサキ「ん〜?」


エル「霊神れいじんって何…?」


ムサキ「……まじか、そんなことも知らずに生きてたのか、エルは」


エル「─うるさ〜いッ」



ムサキ『霊神ってのは[何千年も前にあった【魔神】との大戦で、協力関係にあった六つの種族]を指す言葉だ、それぞれ人霊種じんれいしゅ獣霊種じゅうれいしゅ森霊種しんれいしゅ地霊種ちれいしゅ天神種てんじんしゅ仙神種せんじんしゅとあるな』


エル「種族に関しては知ってる!!

『霊』と名つく4つの種族は、比較的寿命が短く、数が多くて、個々の力が弱い。

『神』と名のつく最後の2種族は、寿命が長く、数は少ない。そして生まれた瞬間から、まさに''神様のような力を有している''って!!」



ムサキ「大体あってるな、ちなみに俺たちは人霊種じんれいしゅ。最も数が多く、最も平均寿命が短く、最も個々の力が弱い」


エル「でも、御伽噺じゃ【最後の魔神】にトドメを刺したのは人霊種の英傑様だって話もあるぐらいだから、そういう種族ってだけで強いひとは強いよね、今で言うなら七番隊と六番隊の副隊長とか!!」


ムサキ「あの人たちスゲーよな!!」


《おわり》

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