【両親との僅かな再会の時間です】

「グレン、結婚祝いにフェラーリをプレゼントしてやる。」



「えっ、フェラーリってあのフェラーリ!?じいちゃんの大事な車でしょ!?何で俺に!?」



突然の申し出に困惑するグレン。



「お前の車だ。最初からな……。」



フッと笑った顔に首を傾げる。

最初からとはどういう意味だろう。



「グレンさん、エディは決めてたのよ。貴方が結婚したら譲るつもりで保管してたんだわ。ね、エディ。」



「ああ、そういう事だ。」



グレンがマクファーソンのおじさんならあの車はグレンの物だ。

彼が生まれ変わりだと知った時、譲る事を決めたのだ。



「分かった。ありがたく戴くよ。」



子供の頃からずっと思っていた。

いつかあの車に乗りたいと……。



「ただし、メンテは自分でする事。」



ずっと飾っていたから未整備なんだとエディが言う。



「メンテかー……。俺、不器用なんだよな……。」



「じゃあ、私が見てあげましょうか?」



シルビアが名乗りをあげ、是非にと言われて部屋へと向かう。

シャスタとパトリシアも同行し、メンテの様子を見学する事に。



「直に触れるなんて夢にも思わなかったよ。」



そう言いながら、預かった鍵でガラスショーケースを開ける。



「駄目だと思うけど、一応エンジンかけてみてくれる?」



乗り込みキーを回すがかからない。



「やっぱり寿命だわ。多分、他の部品も交換しないと駄目ね。」



バッテリーは勿論の事、他の部品も寿命を迎えていた。

エンジンをかける事なく長年飾っていた事が原因だろう。



「残念。早く乗りたかったんだけどな……。」



「ねえ、グレンさん。この車、私に預けてくれない?完璧に整備してあげるわ。」



「え、良いけど迷惑じゃない?」



「全然。ヴィンテージ・カーだし、いじれるチャンスってなかなか無いでしょ?ふふ、だからいじらせて?」



それならばと、シルビアに整備を一任する。



「費用は全部こっちで持つわ。結婚祝いって事で。」



申し訳なく思うグレンだが、お祝いならばとその好意に甘える事にした。



「ねえ、あの写真……」



シャスタといたパトリシアが写真の存在に気がついた。

訝しげに目を凝らして見ている。



「はは、不思議ですよね。お二人にそっくりな夫婦の写真だなんて。」



「夫婦……?」



ゆっくりと近づいて。

間近で見た彼女が茫然とする。



「パトリシアさん?」



シャスタが声をかけても答えない。

そんな異変にシルビア達も気づく。



「パティ?どうしたの?」



「パトリシア?」



グレンが隣に立ち、彼女の視線の先を見た。



「ああ、これか。不思議だよね、俺達と──」



そこでグレンの言葉も途絶える。

シャスタが顔を見ると、パトリシア同様茫然としていた。



「シャスタ、これってまさか……」



「どうでしょうね……。」



前世の記憶が戻る兆候だろうか。

下手に声をかける訳にもいかず、見守るしかないシルビア。



「懐かしいわね……。」



パトリシアが小さく呟いた。

グレンも頷き笑っている。



「パティ……?」



恐る恐る声をかけ、振り向いた彼女と視線が合った。

にっこり笑うパトリシア。



「ありがとう、シルビア。」



何のお礼かと首を傾げるが──



「また夫婦になれて嬉しいわ。」



その台詞で理解した。

やはり記憶が戻っているようだ。



「どう致しまして、ママ。」



改めて抱擁を交わす親子。

今ではこんな現象に動じる事はない。



「あの、お二人の記憶は戻ったままなんですか?」



「いや、今だけだよ。シルビアに礼を言えるよう頼んでたんだ。」



愛の女神は自分達の愛娘。

人間から女神になった特別な子。


そんな訳でこの願いは叶えられた。



「そっか、今だけなんだ。」



それならばと、僅かな時間で親子の会話を楽しむ3人。


再びグレンとパトリシアが茫然とし、次の瞬間には元の二人に戻っていた。



「あれ?何の話をしてたんだっけ?」



「写真の話ですよ。マクファーソン夫妻にお二人が似ていると話していたんです。」



「そうだったわね。ほんと、不思議よねぇ。」



違和感なく会話を続けるシャスタ達。

少し悲しいシルビアだったが、笑顔を作って会話に入る。



「世の中には同じ顔の人間が3人はいるって言うものね。」



「そうね。私達もどことなく似ているし?」



ふふっと笑ってシルビアに顔を寄せる。

親子だから似ていて当然なのだが、そこは他人の空似という事にしておこう。



それからしばらくダニエルス家にお邪魔して、頃合いを見たシャスタとシルビアが帰路につく。


途中で異空間に車をしまい、ロスの自宅に瞬間移動した。

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