【ずっと捜していました】

「シルビアちゃんに話したい事がたくさんあるんだ。」



そう言った後に首を傾げた。



「ところで、どうしてシルビアちゃんがここに?叫び声が聞こえて覗いて見たんだが……」



「あ、申し遅れました。私、シャスタ・ナイトと申します。」



自己紹介し、簡単な経緯を話す。



「それでバタバタしてるのか。ああ、俺はエドワード・ダニエルスだ。」



エドワード……それでエディと呼ばれているのか。



「そんな目で見なくても大丈夫だよ。シルビアちゃんは妹みたいなものだから。」



「べ、別にそんな心配は……」



「こんなじいさんにまで嫉妬するとはね。噂通りの溺愛ぶりだ、あはははは、」



見透かされていた事に頬を掻く。

自分達の本を見ているなら当然か……。



「エディ!?大丈夫!?」



笑っていたエディが咳き込み、シルビアが慌てて介抱した。



「ははは、歳は取りたくないね……。」



落ち着き、ため息混じりに呟くエディ。

元気そうに見えても、90歳という高齢なのだ。



「リビングに戻りましょうか。座って話した方が負担も少ないでしょう。」



そう言ってシャスタがエディに背中を差し出した。

戸惑いながらもその背に乗って、3人でリビングへと移動した。



「何から話そうか……。」



ソファーに座り、エディが口を開く。



「この屋敷の事。どうしてエディがこの屋敷を?ダニエルスの屋敷は?」



「そっちは売ったよ。この屋敷を買って引っ越したんだ。」



「何でそんな事……。おじさんとおばさんの思い出は……?」



「父さん達の思い出は俺の中にある。でもマクファーソンのおじさん達の思い出は……形として残しておきたかったんだ。」



それが自分の責任だと彼は言う。



「エディが責任を感じる必要はないって言ってたのに……。」



「いや、親の責任は子が果たさなきゃ。シルビアちゃんの両親を奪ったのは俺の両親だからね……。」



「エディだっておじさん達を失ったわ。それにおじさんに落ち度はなかったでしょう?」



父親同士が親友だった両家は家族ぐるみの付き合いをしていた。


あの日は親達4人が社交パーティーに出掛け、その移動中に事故に遭ったのだ。



「それでもだよ。成人していた俺と違ってシルビアちゃんは……」



「もう昔の事よ。ほら、今の私にとっては前世の事だし。」



ふふっと笑うシルビアを見て、エディにも笑顔が戻った。



「じゃあ、償いじゃなくて俺のわがままって事にしといてくれ。」



「パパの車もエディのわがまま?気に入ってたもんね。」



ニッと笑うシルビアに頬を掻く。



「人手に渡るぐらいなら俺が持っていた方が良いだろ?あの車はこのままこの屋敷と共に残しておくよ。」



「ありがとう、エディ。パパ達の思い出を残してくれて……。」



「俺のわがままだって。それより……」



エディが真顔になる。



「何で消息を絶った?弁護士やメイド達も口が堅くてな。いくら捜しても足取りさえ掴めなかった。」



「だって私はFLAGの人間だもの。本を読んだなら分かるでしょ?」



確かにと頷くが……



「本を読むまでの俺の気持ちが分かるか?何十年も捜したんだぞ?」



ドゥルガーが現れ、手掛かりかもと注目し、発行された本でようやく消息が掴めたのだ。


だが連絡はしなかった。


彼女の任務はFLAGにあり、親しい者を巻き込まない為にした事だと分かったからだ。



「ごめんなさい……。でも分かって?FLAGの任務は命懸けだったから……。」



「それでもな……便りの一つぐらい……」



そんな会話を聞いていたシャスタが苦笑する。

恐らく、彼女が連絡しなかったのは別の理由だろう。



「シルビア、忘れていただけでしょ。」



コソッと耳打ちすると、トスッと肘打ちされた。

その行動から、やっぱりそうだとクスクス笑う。


マクファーソンの時代はFLAGの任務が中心だった。

加えてラブラブな生活で……。


第一、エドワードの事など聞いた事がなかったのだ。



「ハウエルの時と一緒ですね、」



「言わないの!」



両親への連絡を忘れていた理由も然り。

シャスタへの愛がそうさせたのだ。



「でも……ようやく安心できた。この目で直にシルビアちゃんを見て……肩の荷が全部降りた気分だ。」



そう言ったエディから、ふっと力が抜けて行くのを感じた。



「シルビア、マズいですよ、」



「え、ええ。エディの目的が無くなったんだわ、」



90歳まで元気でいられたのは目的があったからなのだろう。


シルビアを見つけるという目標。

彼女と再会するという目標が、彼の寿命を延ばしていたのかも知れない。



「エディ!まだダメよ!貴方には見届けてもらうんだから!」



「見届ける……?何を……?」



顔を上げたエディからは精気が失われていた。


人間の気力というものは、時には信じられない力を生む。


だから彼に新しい目標を与えるのだ。

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