第6話 大好きな陽彩へ

 私は陽彩を本当の家族だと思っていたよ。

 最初は、力が制御できず疲労で倒れる陽彩を看病する日々が続いたな。

 熱に魘されながら、ごめんなさいと謝っていた。

 謝る必要はないと、何度言っても謝っていた。

 だって家族なんだから、当たり前なんだよ。

 回復したら、ありがとうと、慣れない手つきでご飯を作ってくれたね。

 鍋で炊いたご飯は底が焦げていたけれど、それがとても美味しかった。

 焼いてくれた川魚も美味しかった。

 何より、食を共にできることが嬉しかった。

 私に花冠をくれて、ありがとう。

 大切な首飾りをくれて、ありがとう。

 私の尻尾を抱き枕にして眠る姿は愛らしかった。

 一緒に作った風車はくるくるとよく回ったな。

 どんどん背丈が伸びて、十二で私の背丈を越した。

 それでも陽彩は変わらず私の胸に飛び込んできて、愛しくて幸せだった。

 陽彩。陽彩と共に居ると、魂が叫ぶんだ。

 其方が、欲しいと。

 魂が共鳴して、其方の声も聞こえるんだ。

 私が、欲しいと。

 でも、私たちは家族だから。大切な、家族だから。

 その形を壊したくなくて、変わらぬ家族の形を演じていた気がする。

 陽彩、普通の人間として生きられない陽彩に少しでも人間らしい生活をあげたいと思っていたのだけれど、そんな生活ができていただろうか。

 私は陽彩に、生きる喜びを教えたかったけれど、私が教えてもらったみたいだ。

 だって、陽彩と過ごしたこの十三年は、私にとって宝物だったから。

 陽彩も同じように思っていてくれたら、

 それ以上の喜びはないよ。

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