第17話 おまえがくるわせた
「ぅ゛……」
真っ暗な牢獄の中、ロワは意識を取り戻しゆっくりと目を開けた。睡眠薬の効果がまだ残ってる為ロワの意識ははっきりせず、頭に霧がかかっているような感覚に包まれていた。はっきりとしない意識の中、自分に何が起きたのか、ここは何処なのかと状況を整理する為、眠気で回らない思考を無理やり動かし考える。
(――た、しか……おれ、は……記憶が、改竄されてるって、知って、ふたり、の前から逃げて、それで、それで……)
見知らぬ人物に睡眠薬をかけられ、それが体内に入ったことでロワは意識を保つことが出来ず眠ってしまい、自分はここに連れてこられた。そこまで思い出してからロワはあることを思う。——記憶が変わっていないような気がすると。
(……でも)
記憶が
(……ここから逃げないと)
眠気と結論つかない考えを振り払うように頭を左右に振った。悶々と考え続けるより、まずはここから脱出すべきだと思い、ロワは自分自身から脱出の方面に思考を切り替えた。
頭を振ったことで多少眠気が散って、周囲に視線を向けた。明かりがなく視界が悪くなって何があるのか確認しにくいが、目を凝らせばぼんやりと何があるのかは見えるし、巨大なものは目を凝らさなくても見えた。鉄格子が見える為ここが牢獄の中であり、牢獄の割には不釣り合いな豪華なベッドの上で寝かされていたことと、脱走を防ぐように自身の足首に足枷がついていることにロワは気づく。
(……魔法で壊れるかな?)
足枷に触れ魔法を使用する為口を開く。
「『
魔法を使用すると足枷がバキリと音を立て割れた。足枷がついていた足首さすさすと優しい手つきで撫で、ロワは立ち上がり鉄格子へ向かい、格子ドアに触れる。鍵が締まっていない可能性を消す為に一度ドア開けようとする。
(流石に開かないか)
誘拐犯が間抜けにも鍵を閉め忘れているなんてことはなく格子ドアは押しても引いてもびくともしなかった。自分が通りやすいようにドアも壊そうと考えまた魔法を使用する為に口を開こうとして——何かの物音がロワの耳に入る。
(誰か来る……!!!)
続けてかつん、かつんと足音が聞こえ、ロワはドアから少し距離を置き警戒態勢を取った。足音は鉄格子の奥、牢獄からぎりぎり見える通り道から聞こえていた。鳴りやむことがない足音、段々と大きくなっていく音に自分をここに閉じ込めた人物が近づいてきているのだとロワは思う。そして足音の持ち主、誘拐犯がロワの前に姿を現す。
「……ゼ、ル?」
「ああ
足音の正体。それはロワの元仲間であったゼルだった。ゼルは目を覚ましているロワを見ると歓喜の表情、興奮した様子でロワのいる牢獄へ近づき、早口でロワの安否を確かめた。
「……何もないけど……なんでゼルがここにいるんだ?」
(なんで? 助けに来てくれた……にしてはなんか様子が違うような。いつもの発作を起こしてるし……というか二度と目の前に現れるなって言ったのを忘れたのか? ……でも助けに来てくれたなら文句を言う前に感謝の言葉を言うべきだよなぁ……でも……なんか……)
困惑した様子でロワは自身になんの問題もないと言うかのように両手を広げた。その間ロワはゼルの様子に混乱し、ここにいる理由に疑問を抱く。「助けに来てくれてありがとう」と一言いえばいいのに、何故か言葉にすることが出来ない。妙な違和感がロワを包んで感謝の言葉を口にすることが出来なかった。
妙な違和感に包まれてしまっているロワに、まるでその違和感の答え合わせをするかのようにゼルはあることを口にする。
「何故って? ここは私の屋敷だからさ!!!」
「――――え?」
「安心してくれロワ!! 君がもう傷つくことも悲しむこともない!! ここにいればあの女に惑わされることもなくなるんだ! ああでも、ここだと気分が落ち込んでしまうだろう。でも君が悪いんだ、君が……」
「は、え、いや、何言ってるんだ……? ゼル、様子がおかしいぞ……君のその言い方だと、君が俺を攫ったように聞こえる……」
まくし立てるようにロワへの感情を溢し続ける様子のゼルに、ロワは恐怖を抱き一歩後ずさり問いかけた。いつもの発作にしては様子がおかしい、怖い、どうして、俺が君に何をした? 様々な考えがロワの脳を巡る。
青ざめた表情で問いかけたロワに、ゼルはごく自然に喜びを語るように満面の笑みで頷く。
「そうだ、私が君を攫った、攫うように命令したんだ!! あの女から君を引き離す為に!!! 君は素晴らしい人間なんだ、君があの獣人につきそうなんてお門違いだ。君は優秀な私のそばにいるのがふさわしい!!!」
「なに、言ってるんだよ、意味が分からない、どうしてこんなことをしたんだ!!? ゼルは、ゼルはこんなことする人じゃないだろ!!!?」
狂ったように早口でまくし立てるゼルに、ロワは恐怖を抑え込み抗議した。理解できない理由で攫われ牢獄に入れられた――納得なんて出来る訳ない。
「君が私をそうさせたのだろう?」
「なに……?」
「甘い、匂いを香らせて、魅惑で私を惑わせた君が、私をこうさせた。君と出会ってから私は狂ってしまった!! こんな罪に手を出してしまうほどに、私は君を欲した、欲してしまった!!!! ————君が私のそばにいれば、私は罪を犯さなかった」
「……ぁ」
ゼルは己がロワを誘拐したのも、監禁したのも全てお前が狂わせたせいであると、無責任なことを言い出した。その発言は記憶改竄で精神に傷がついているロワを苦しめるには十分だった。 ふらりとその場で膝をつき、ロワは頭を抱える。
「ち、が……おれは、そんなつもりじゃ……」
(俺がゼルを、おかしくさせた、俺が、俺が追放されなければ、俺は、俺は……)
ゼルの発言が脳にこびりつきぐるぐると思考が入り乱れていく。精神が安定している時のロワであれば「それ、俺何も悪くないよ。君が勝手に勘違いしたんだろ?」と言えた。だが悲しきかな、この場にいるロワは自身の真実をまだ完全に受け入れきれていない、精神が不安定な状態。反論することが選択肢から抜けてしまっていた。
「ロワ……」
「ぁ……いや、なに、なにを」
「邪魔者は誰もここには来ない。やっと、やっと……!!!」
ドアの開く音がし、興奮しているゼルがロワの元へ近づいて行く。ロワはこれから自分に何が起きるのか分からなかったが、きっとろくなことではないと察し嫌々と首を横に振った。
「いやだ、来るな、いやだ……!!!」
瞳がちかちかと金色と青色に点滅しだす。暗闇のせいでロワの異変にゼルは気づかない。
「さぁ、ロワ、私と――――」
「来るな、俺に、近づくなああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
恐怖が限界を迎え、ロワは悲鳴を上げた。
瞳が、髪が――金色へと変わった。
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