永遠の時をあなたと/外伝【夢を乗せて】

SHINTY

エリーとアルファ

小さなエリー

【マクファーソンの旅立ち】

駐車場で待つナイト2000。

そこへ近づく小さな女の子。


その存在に気づいたシャスタが、慌てて女の子に声をかけた。



『勝手に出て来ちゃ駄目じゃないですか。ほら、乗って下さい。』



ドアを開け、女の子が乗ったのを確認してドアを閉める。



『今おばあちゃんに連絡しましたからね。つまらなくて出て来たんですか?』



「ううん、シャスタさんを探してたの。どうして中に入らないの?一緒に行こ?」



どうやら、姿の見えないシャスタを迎えに来たらしい。



『迎えに来てくれたんですね。ありがとう。でも私は中に入れないんです。』



「どうして?人になれば入れるでしょ?」



いつものように人の姿になれば良いのにと、首を傾げる女の子。



『私はね、もう人間の姿になれないんですよ。』



「なれないの?どうして?」



『シルビアが……いなくなったからです。』



「シルビアさん、箱の中にいたよ?」



『ええ、そうですね……。』



5歳の子に死はまだ理解できないのかも知れない。

どう説明しようか考えていると、窓をノックされた。



「ごめんね、シャスタ。エリー、いなくなっちゃ駄目じゃないの。」



ドアを開け、女の子を抱き上げるボニー。



「ごめんなさい、おばあちゃん。シャスタさんがいないから迎えに来たの。」



「迎えに……そう……。」



チラリと車内を見ると、気にせず行って下さいとシャスタに言われた。



「おばあちゃん、なんでシャスタさんは人になれないの?」



その質問に、再び車内を見る。



『すみません、うまく説明できなくて……。』



「そう……。エリー、あっちで教えてあげる。ちゃんとシルビアにお別れしてからね。」



「お別れ?シルビアさん、どこか行っちゃうの?」



まずはそこからかと苦笑した。

シャスタが説明できなかった理由も分かり、教えるのは困難かもと頬を掻く。



「……ゆっくり教えてみるわ。」



『はは、お願いします。』



頷き、火葬場に戻って行くボニーとエリー。

それを見送り、再び防犯カメラの映像を見始めた。


そこには、シルビアとの別れを悲しむ家族や友人達の姿があった。

戻ったエリーも、死を理解していないまま別れを言っている。


そしてシルビアの棺は火葬炉へと送り込まれた。



シルビアさんは、死んで天国に旅立った。

シャスタさんが人になれないのは、魔法が解けてしまったから。

でも、いつかシルビアさんが戻って来たら、また魔法で人になれる。

それまでは、シャスタさんはずっと車のまま。



「シルビアさん、魔法も使えたんだね。すごいなぁ。」



「んー……そうね。そういう事にしておきましょ。」



今はまだ無理でも、大きくなれば理解できる。


シルビアとシャスタが大好きな孫娘エリー。

彼女の頭を撫でながら、防犯カメラのレンズを見る。

シャスタが見ているだろうと、任務完了の合図にウィンクを送った。



『ご苦労様です、ボニー。』



合図を受け取り、エリーを見る。

何だか目が輝いていた。

それはまるで尊敬の眼差しで。



『はは、一体どんな説明を受けたんでしょうね。』



そんなエリーがソフィアの所に駆けて行った。

何かを聞かれ、笑って否定している娘。



『ちゃんと笑えていますね。良かった……。』



自分がこうして傍にいてやれない時も、彼女には支えてくれる人がたくさんいる。

不安もあるが、乗り越えて行けるだろう。

いや、乗り越えて行こう。


シルビアが帰って来るその日まで──。

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