魔極。豪暴。異呼。超機。

まんおぶじゃすてぃす

1 魔極ヘッチャ、誕生と成長

 マノムローリン歴1472年。

 カサバルヒロガル家にて、辺境伯様は誕生しました。

 お名前はヘッチャ。後世に長く語り継がれるほど、歴史に色濃く名を刻む辺境伯様の名前です。


 0歳。母のお腹から出てきたヘッチャ様はとても不思議な産声を上げました。


 それは、泣くのでもなく、笑うのでもなく──


「0歳から皆を笑顔にする俺、マジ天才SUGI」


 その場にいた全員がひっくり返ったそうです。

 辺境伯様、マジ天才SUGI……です。


──


 5歳になったヘッチャ様。極地魔法を習得しました。


「マジチョロSUGI」


 いえ、チョロくなどありません。ヘラヘラと笑うその裏には血の滲む努力があったことは、誰にでも容易に想像できます。


 私がヘッチャ様に「どうして極地魔法を習得するほど努力したのか」と聞いたことがありました。


 その時、いつも「マジ努力ゼロ。やろうとしたらできちゃっただけだし笑」と嘘を付くヘッチャ様の本当の理由を知ることができました。


「だって、馬鹿かっけぇじゃん?」


 はい。かっこいいです。

 あ、えっと……かっこよSUGI……です。

 

 たった5歳の少年に極地魔法を習得されてしまった魔法の権威先生は、ひっくり返って杖を折ったそうです。


「いや、マジゴメス。俺が天才SUGIてマジゴメス。これからも一緒に頑張りマッチョ?」


 ヘッチャ様。マジ天才SUGI……です。


 あ、極地魔法というのは、五大元素と呼ばれる火、水、木、土、雷の全ての元素の魔法を極めた者ならば『理論上実行可能である』と言われていた魔法のことです。


 そう。ヘッチャ様は世界で初めて極地魔法に成功した人物なのです。


 5歳で。


 マジ天才SUGI……です。


──


10歳。ヘッチャ様は国立西方学園卒業しました。普通な18歳で卒業なので8年飛び級だったそうです。


「マジチョロSUGI」


 いえ、チョロくないです。

 だって、私今10歳ですけど、初等魔法すら満足に使えません。

 そして、それが普通です。

 

 そんな天才SUGIなヘッチャ様には10歳にして沢山の縁談が舞い込んできたそうです。


「俺、まだ10歳だし。ショタコン共め。あと8年はマッチョね」


 それは、本当にそうですね。


──


15歳。ヘッチャ様が家の事業の手伝いを始めたところ、ただの男爵家だったご実家は辺境伯に格上げされたそうです。


「格上げワロチ」


 そんな軽く笑って良いことではありません。辺境伯は他国との戦線を守る砦のような役割、それに格上げっていうのはもう、偉業です。


「町民が皆、俺に感謝してくるのチョロSUGI。お前ら全員長生きしマッチョ笑」


──


18歳。


「家を継ぐ前にちょっち旅楽しみ卍」


 ヘッチャ様はそう言って家を出てきたそうです。

 ヘッチャ様が突然旅に出ると言ったことに、お父さんは大変驚いたそうですが「一週間に一回は帰るっつーの」と安心させたそうです。


 一週間に一回は、結構頻繁ですね。


「ん? なんか悲鳴が聞こえんですけど。俺の聞こえる範囲で涙とか萎えるからやめろし笑」


 悲鳴。そう、私の悲鳴です。

 次は、私とヘッチャ様の出会いの話をします。

 

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