能力者たちの抵抗

「国王陛下御入場!」並び揃った重鎮たちは立ち上がり礼をして国王陛下を迎えた。重鎮たちが驚いたのは、リーゼ王女も一緒だったということ。会議に女性が参加するなど前代未聞の話しだ。王と、王女が席に着くと重鎮たちも座り王のお言葉を待った。

「これより会議を開催する。今日皆に集まってもらったのは、文字と教育の導入についてだ」会場がざわめく。「文字?」「教育?」あちらこちらで声が聞こえた。


「この国に文字を導入する。能力者の記憶にある知識を書き記し本にして保管。知識を共有する」

「それは、能力者がいらないということですか?」

「そうではない。私は知識を伝えあうことが出来る優れた能力者が生まれにくくなっているのを危惧しているのだ。今は必要なことは能力者間で伝え合い国を動かしている。だがそれが出来る能力者がいなくなれば国が立ちいかなくなる。実際ナギの国では能力者はいないが、文字を使い教育することで優れた者を生み役割を分担することで国を動かしているそうだ」

「ナギ、あの神の娘と言われる少女の国の事ですか?どうしてそんな小娘の言うことが信じられるんです!我々能力者が独占した知識を共有するなどもってのほか!」

重鎮の一人が声を荒げた。


「黙りなさい!ナギを批判する者は私が許しません!」リーゼが声を張った。

「ナギは、お父様の願いをかなえるために風神ウェンディ様がこの国に転生させた。この国の未来を作る為に。私は直接話をしたけど、とても控えめで、誠実に私の問いかけに答えてくれた。文字を導入し知識を共有することはこの国の未来に必要なこと。その為に話し合おうとしているのです!」重鎮たちは圧倒され黙り込んだ。


「リーゼの言うとおりだ。ナギの国では、子供のころから民も教育と言う物を受け、優れた人材を生み出している。その基礎は、読むこと、書くこと、計算すること。これを実現するためにはまず文字を導入し、知識を書き記し、読める者を増やす必要がある。その為に何をなすべきか考えて欲しい」


「再度確認しますが、我々能力者が必要無いという事ではないのですね?」

「その通りだ、そなたたちの働きには感謝している。今国を動かしているのがそなたたちであることは間違いないのだ。私が言うのはこの国の未来と発展をするためには教育が必要でまず文字を導入しなくてはいけないということだ」


「しかし、文字と言うのはどうゆうものなのですか?この国で使えるのですか?」

「それについてはナギの国の文字を使えないか考えてもらっています。文字を使って物事を書き留める。まずはそこからです」


「ですが、ナギの国のやり方がこの国に合うとは限らないでしょう。民などが知恵がつけば何をしでかすか解りません!」


「どうしてそう悪い方に考えるのだ」王は重鎮たちを見渡した。

「他にもそうゆう考えの者がいるようだな。お前たちの地位を脅かすようなことはしない。私の言葉が信じられぬか?今はこのままでいいのだろう。だが今いる能力者もいずれはいなくなる。その時に国が動かなくなっては困るのだ」


重鎮たちは王の言葉に反論できなかった。


「文字の方はナギと考えます。皆様に考えていただきたいのは何に文字を書き留めるかということです」

「そうゆうことだ。皆考えて欲しい。文字についてナギと話が出来たらまた報告する。以上だ」


そう言うと王と王女は立ち上がり退席した。

残された重鎮たちは困惑の表情を浮かべたままだった。


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