21
「何泊しますか?」
「2泊でお願いします」
今はラミナの首都であるトラビの宿にいる。フェレナからトラビまでの道のりは長く、22日かかった。さすがに疲れたので、ここでは1日休んで行こうと思う。
「2泊で9シルバーです」
細かいのがないので、1ゴールドを手渡した。
「お釣りが1シルバーですね、お部屋は階段を上がってすぐ左側です」
受付で言われた部屋に入った。この部屋がある場所は、リアンの宿で足音を聞いた時、つまり初めてあの男の影を感じた時と同じ位置の部屋だ。
窓から前の通りを眺める。またあの男がこちらを見ているのではないかと思ったが、通りに立ち止まっている人はおらずみんな歩き続けている。この中で立ち止まって宿の窓をじっと見ていたら相当目立つだろうし、周りから浮いているその人を歩いている人たちは見るだろう。
窓から離れてベッドに座る。左手首に着けているハリアの店で買ったブレスレットをさする。これに触っていると、心が落ち着く感じがしてよく触っている。青い宝石は見ていると引き込まれるような深みがあり、それもまた不思議と心が落ち着く。少々値段は張ったが、いい買い物をしたな。
トラビに着いてから一夜が明け、冒険者ギルド本部に世界地図を買いに来た。バスで世界地図を欲しいと思ってからここまで3ヶ月ほど、ようやく一番と言って間違いないぐらい欲しかったものを買える時が来た。
ギルドの中もそうだが、この街はとにかく冒険者が多い。ラミナに入ってからの街は冒険者が多かったが、トラビは他の街とは比にならないぐらい冒険者が多い。宿で聞いた話では、ここでは冒険者が自警団のような組織になっていて、犯罪が他の街よりもかなり少ないらしい。それもそうだ、こんなに屈強な肉体の男たちが街中にいたら犯罪などした暁には、すぐに捕まってぼろぼろになりそうだ。
「世界地図とトラビの地図を一つずつください」
冒険者ギルドのカウンターで世界地図を頼む。
「世界地図が5ゴールド、トラビの地図が1ゴールドで合計6ゴールドです」
トラビの地図は今まで通り1ゴールドだが、世界地図は5ゴールドで思っていたよりも高かった。世界地図は高いというのはわかっていたが、俺が思っていたよりも高かった。それだけ作るのに労力が必要で、貴重なものだということなのだろう。
地図を受け取り空いていた席に座って広げる。世界地図は街ごとの地図よりも大きく、テーブルの半分ほどの大きさがあった。内容は大陸の東から西、つまりリングスからラミナまで街と街の間の道のりや地形が描かれている。しかしラミナの西、この大陸の果てにあるコロン樹海は入り口しか地図に描かれていなかった。
目的地であるコロン樹海まで見られると思って買った地図に描かれていないとはこれは困った。コロン樹海の手前にあるラバイまでは描かれていて行き方がわかるが、これではどうやってコロン樹海まで行けばいいのかがわからない。
「すみません、何で地図にコロン樹海は描かれてないんですか?」
近くの席に座っていた冒険者に聞いてみる。
「ああ、コロン樹海はほとんど何もわかっていない未開の地なんだよ」
「未開の地と言うと?」
「コロン樹海は広くて木が
そこまで説明してから、冒険者はあきれたように首を振って続ける。
「それなのにリングスの国王はそれを無視して、欲のために世界の知恵を探しに捜索隊を派遣するってんだから、世界中から非難轟々だよ」
「コロン樹海に入れる冒険者は何人いるんですか?」
「4人だ」
「ありがとうございます」
親切にコロン樹海について教えてくれた冒険者にお礼を言って冒険者ギルドを後にした。教えてもらったのはいいが、
冒険者ギルドを出た後宿で今後のことを考えたが、ラバイからコロン樹海までは自力で歩いていくしかなさそうだ。地図を見る限りラバイからコロン樹海まではそこまで遠くないようなので、歩いて行くこと自体は問題なさそうだ。一番の問題はラバイを出る時だ。今まで街を出る時に歩いて出ていく人を見たことがない。街を出るなら馬車しかないが、馬車ではコロン樹海には行けないのでどうしたものかと考えて、一つ案が思い浮かんだ。
冒険者になることだ。クロアまでの国では冒険者が少なかったため気が付かなかったが、ラミナの街では冒険者が歩いて街を出ていくところをよく見る。つまり冒険者なら自然に歩いて街から出られるということ。バルトの図書館で読んだ本には、冒険者は登録すれば誰でもなることができると書かれていたので、俺でも問題なくなることができるはずだ。
作戦は決まった。明日もう一度冒険者ギルド本部に行って、登録して冒険者になる。そしてラバイの冒険者ギルドで街の外に出る必要のある依頼を受け、ラバイからコロン樹海まで歩いて向かう。依頼を達成できなかったら違約金を払わなければならないが、コロン樹海に行くためならそれも
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