第14話 レベルアップ

 第十一階層から、バベルの塔は若干難易度を増した。左右の分かれ道で一方を選び進むと突き当たりになる。引き返し別の方向に進む。

 その繰り返しで上階への階段を見つけないといけない。

 地味に骨が折れる作業だ。

 またあらわれる敵モンスターもあきらかに強くなってきている。十階層までのキラースライムとはわけが違う。

 緑鬼ゴブリンたちは連携し、攻撃してくる。

 味方を犠牲にして攻撃してくる時もある。

 それにやはり人の形をしているものを殺すのはメンタルがごりごりに削られる。

 断末魔の悲鳴が耳から離れない。

 倒したあと、彼らは神霊石に変わるので人間ではないと認識する。そうすることによって僕はどうにか心を正常に保った。


 第十五階層に到着すると敵モンスターの種類が増える。二メートル近い巨体を誇る豚顔のモンスターは豚鬼オークだ。

 豚鬼オークは凶悪な棍棒や血のついた斧で武装していて戦闘力は高い。

 しかしながらその動きは鈍重で当たらなければどうと言うことはない。

 厄介なのは緑鬼ゴブリンと組んで集団戦を挑んでくることだ。

 僕たちはまず火矢ファイヤーアロー風刃ウインドブレイドの魔法で緑鬼ゴブリンの数を減らし、最後に豚鬼オークを倒すという戦術をとった。

 そうやっていくつかの戦闘を繰り返し、僕たちは第十八階層にたどり着いた。


「また行き止まりですわね」

 鷹城玲奈がアリエルの手のひらに浮かぶマップを確認する。

 このルートが駄目だなので先ほどの分かれ道に戻らないといけない。

 しらみつぶしにいけば上の階層に行けるが、体には疲労がたまる。

 冒険はここまでにして切り上げるか悩むところだ。

「母さん、まだいける?」

 僕はまず母さんに確認する。

 母さんがここまでというならここまでだ。

「あたしは全然大丈夫よ。玲奈ちゃんと瑠璃ちゃんは?」

「わたくしも平気ですわ」

「ボクもまだまだ動けるよ。お兄ちゃんだけちょっとつらそう」

 豹塚瑠璃が可愛い顔で僕の顔をのぞき込む。

 どうやら敵モンスターが人型になり。メンタルをすり減らしているのは僕だけのようだ。

 こういうとき、女性の方が強いというのを思いしる。


「あたしらレベル二十になってるわ。どうりで魔法の威力があがってると思ったわ」

 母さんが軍用リュックから契約の銅板を取り出して、見ている。

 僕も上着のポケットから契約の銅板を取り出す。

 レベルが二十にあがっている。

 鷹城玲奈と豹塚瑠璃も同様のようだ。

「どうりで魔法の発射速度があがってると思ったわ」

 鷹城玲奈が爆乳の下で腕を組んで感想を漏らす。

「ボクも抜刀の速さがあがったよ」

 豹塚瑠璃が黒豹ロデムのサーベルの柄をなでる。

「あたしは中治癒リヒールになったわね」

 母さんは契約の銅板をじっくりと見ている。


 僕はあらためて契約の銅板を見る。

 あれっスキルが増えている。

 スキル特攻とある。

 この契約の銅板はスキルの文字をタップすると説明文が浮かぶ仕組みだ。

 なになに。

 スキル特攻は攻撃力が百倍になる代わりに反撃された時の回避率が十パーセントまで下がるのが。

 もろ刃の剣のようなスキルだな。

 うんっちょっと待てよ。模倣コピーしたスキルと合わせたら八個目になるな。これって何気にすごくないか。

「スキルを八つも持つ冒険者なんて聞いたことないわ」

 鷹城玲奈が背後から僕の銅板をのぞき込む。むふっ背中に爆乳が当たっている。

「お兄ちゃん、すごい!!」

 豹塚瑠璃はぴょんぴょん飛んで我が事のように喜んでいる。

「さすがあたしの子やね」

 母さんが自慢げに巨乳をはる。

 褒められると素直にうれしい。削られたメンタルが回復した気がする。


「レベルも上がってるしこのママ第二十階層目指せへんか」

 母さんが提案する。

 鷹城玲奈と豹塚瑠璃は母さんの提案に賛同した。

 三人は僕を見ている。

 なんだかんだ言って彼女らは最終決定を僕にさせる。自然と僕はリーダー的な役割を負うことになる。社畜の平社員には荷が思い。

 いや、僕は会社員をやめて冒険者になったのだ。

 ここはしっかりしなきといけない。

 僕は気合を入れるために自分の両頬をぺたんと叩いた。

「よし、行こう。行って第二十階層の女神も解放しよう」

 僕はそう決めた。

 アリエルは心なしか微笑んでいるような気がする。


 僕たちは何度か行き止まりにあたり、分かれ道にもどるというやり方を繰り返す、上階を目指す。

 第十八階層に来て、緑鬼ゴブリンの上位種である首緑鬼ホフゴブリンが出現した。緑鬼ゴブリンよりは二回りほど体格が大きく、大剣や戦斧で武装し、鉄鎧を装備している。

 豚鬼オーク首緑鬼ホフゴブリンの集団との戦いはなかなか苦戦させられた。

 母さんと鷹城玲奈の魔法攻撃では一撃ではたおせない。

 そこで僕は魔法攻撃は敵モンスターの武器を持つ手に集中させた。

 武器を落として怯んだ隙をつき、僕と豹塚瑠璃が同時に斬りかかる。

 そうやって一体一体確実に屠る。

 敵モンスターが強くなったおかげで僕たちは連携の熟練度が上がったような気がする。

 そうして第十九階層に到着した。

 そこは何故か芝生の広がる庭のようなところだった。どういう仕組みか分からないが、涼しい風が吹いている。


「ここも安全地帯でええんかな」

 母さんがアリエルに確認する。

「はい、この階層には敵モンスターはいません」

 うっすらとまぶた閉じてアリエルは答える。

「ほんならここでお昼ご飯食べようか」

 母さんは手際よく軍用リュックからレジャーシートを取り出して、広げる。

 次にプラスチック容器に入れられた料理を並べていく。

 鷹城玲奈は胸の谷間からペッドボトルを取り出していた。

 うん、どういうことだ?

「あら、広瀬川さんはわたくしのお胸が気になるのかしら?」

 ラバースーツのジッパーを鷹城玲奈はおへそまで下げる。

 大きすぎる胸の谷間がエロ過ぎる。

 エロホルスタインとはいい得て妙だ。

 僕は鷹城玲奈の胸の谷間の奥にジッパーを見つけた。驚いたことに皮膚に五センチメートル四方の黒い穴が空いている。

「これは怪鳥ロプロスの指輪の能力によってつくられた亜空間の入り口よ」

 鷹城玲奈の持つ怪鳥ロプロスの指輪の能力は亜空間を自在に操ることができるものだという。

 鷹城玲奈はその黒い穴からもう一本お茶のペッドボトルを取りだして、僕に手渡した。

 そのお茶は妙に興奮させられる味だった。


 僕たちは母さんの作ったおにぎり、鶏の唐揚げ、だし巻き玉子、筑前煮でお腹を満たした。

 昼食をとり、小一時間ほど休息した僕たちはついに第二十階層にあがることにした。


「次の第二十階層にも囚われの女神がいます。もちろんその女神を封印したエリアマスターがいます。そのエリアマスターを倒していたたまければ禁則事項の一つが解放されます。皆さまのご武運をお祈りします」

 すっとアリエルは上にあがる階段を指さす。

 アリエルは僕と母さんを交互に見たあと、頭を深く下げた。

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