諸々が千々に降下してくる夏々の日々

@triskaidecagon

第一部 起の部 宇宙から諸々が降下してくる折瀬村

第一章 天の光に星は無し

6月21日(火) 13:27 お昼休み終了三分前

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6月21日(火)

          13:27

      お昼休み終了三分前

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「あの林の人形なんだけど……。今朝、その……、無かったよ」

「え!? 無かった!? 無かったってあのフィギュアが? つまりどういうこと?」

「さあ? そんなこと聞かれても僕には分からない。いちおう、写真も撮ってきたけど、見る?」

 ゴジが今朝撮った写真を見せてくれた。

 これという特徴もないなんの変哲もないやぶの写真だけど、さすがに見慣れてるのでうちとゴジの家の間のあの場所の写真だということはわかる。どこがと言われるとなにで見分けているのかはわからないけどまぁわかる。

「足跡とかは?」

「そこまで詳しく見てないよ。僕は人形が無いって思っただけだし」

 そうだよなぁ。

しか写ってないなぁ」

は写らないと思うけど……」

 ゴジはこういうジョークに非常に無粋にツッコミを入れてくる。

「あ、そうだ」

「なに?」

「写真から解析するアプリがあるから、写真ちょうだい?」

「は? 解析!?」

「ほら見てこれ。可愛いんだよ」

 昨日解析した結果のひとつ、対象者の人相にんそう予測画像を表示した。

 アプリの機能で指定できたので、表情は微笑み。

 メタリックで整った顔面が正面から画面いっぱいに微笑んでる画像だ。

 元画像の横顔を適切に解釈して正面顔として出力したものである。

 こういう事ができるはずと思ってアプリの機能をいろいろ試したら、実際にできたのだ。

「なにこの写真?」

「人物写真解析アプリで昨日のフィギュアの写真を明度めいど調整してこっちを向かせた感じ」

佐々也ささやは、なんでそんなアプリを持ってるんだよ!」

 私が可愛い女の子の顔写真を見せると、ゴジがそんな事を言ってきた。

 楽しい会話のときによくあるツッコミというやつなので、あまり頑張って反論したりする必要はない。

「いや、あの、写真の明度調整のアプリがないかと思って探してたらこのアプリが出てきたんだ」

 本当は明度の調整をしただけだとなにがなんだかわからないから、写真からなにか意味のある部分を取り出せないかを携端──携帯端末──で調べてたら、誰かがおすすめしている特定趣味向けの解析アプリを見つけてしまったのだ。


 今は昼休みが終わりもう次の授業が始まるだろうという短い時間。

 鶴賀つるが商店で買った夏みかんを昼食に食べ終えて、いた皮を机の端の方に寄せていた。

 昨日の夕方、私とゴジは家の近所の藪の中に等身大フィギュアが放置されているのを見つけた。ゴジは私がお昼ご飯の夏みかんを食べ終わったのを見計らってそのフィギュアが今朝には無くなっていたという話をしに来たのだ。

 今、私がゴジに見せたのは、昨日フィギュアを発見したときに撮った遠目の写真を人物追跡用の写真解析アプリで解析したもの。その結果の一つとして、正面から見た顔写真が出てきたんである。

「でも、すごく可愛いと思わない?」

「可愛い……かな? 未塗装なうえに白目だからよくわからない……。え? ここに書いてある、死亡確率ってなに? 九八パーセント?」

「ああ、画像に写ってるのが事故現場だったときとかに怪我の状態とか判断してくれる機能があるみたい。あのフィギュアは下半身が無かったし顔色も普通じゃなかったから、それで死亡確率が高いらしいよ。説明文は、ええとどこを操作すると見れるんだっけ?」

「いいよ別に見せなくて! そもそもなんでそんな死んでるかどうかなんて解析したんだよ、こわ……。人形だからそりゃ生きてなくても良いんだけど、逆にこの二パーセントはなんなわけ?」

「そこはガバ判定らしい。なんでも浮世絵とか判定しても二桁行くこともあるらしいし」

「浮世絵より生存確率低いの!? このフィギュア!? いくらなんでも浮世絵よりはリアルっぽい造形に見えるけど」

「え? 言われてみればそうかもね、まあこれぐらいなら誤差だよ誤差。……ってことで、写真ちょうだい。幸い同じ現場の写真が二枚になるし、アプリの機能でなにか分かるかもしれない」

「いや、あげるけどさ……。なんか嫌な結果が出そうだな……」


 そんなこんなゴジと話していたら、「ちゅうもくー」と大きな声で注目を集めながら教室前方のドアが開いて渡部先生が入ってきた。

 え? 午後の授業はリモプレでホームルームでもないのに、どうして先生が来たの?

 なに? なんで?

 気がつくと、さっきまで話していたゴジは私が混乱してるうちに自分の席に戻っていた。

 横目にゴジを見てから改めて渡部先生の方に目をやると、ものすごい美少女を連れている。

 とてつもなく整った顔立ちをしていて、髪の毛はメタリックな銀色。

 そして私達が着ているのとは違う、どこかの学校の制服を着ている。

「あー、みんなに転校生を紹介します。じゃあ、挨拶して」

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