【春を祝って走る仲間たち】

「お前らが口出す事じゃないだろ?」



「2人には2人のタイミングというものがあるんだからな。」



トッド達の発言に呆れながらも、笑顔を浮かべているアルベルトとリース。



「い、いつから見てたんだ?」



「ブライアンがメットを脱いだ辺りから?」



ニヤニヤ笑ってトッドが答える。



「幼馴染みの再会ですか?お互いまんざらでもなさそうな雰囲気でしたよね。」



「ブライアンにもやっと春が来た訳だ。もう結婚しちまえ!」



「だから口出しするなって。ブライアンはともかく、彼女、呆けてるじゃないか。」



アルベルトに言われて彼女を見ると、驚いた顔のまま固まっていた。



「ごめんな、エレノア。こいつらに悪気はないんだ……。」



ブライアンの謝罪に首を振る。



「みんな有名選手じゃないの!ブライアンと知り合いなの!?」



そこに並ぶのは上位の3名とフリースタイルの総合優勝者。

モトクロスを経験している彼女にとって、彼らは雲の上の存在に等しい選手達だった。



「あのな、俺はこれでも総合4位なんだ。同じグループでもおかしくないだろ?」



「嘘……。ブライアンの3位入賞……棚ぼただと思ってた……。」



リース転倒のアクシデントがあった為、まぐれで3位になったと思っていたらしい。



「お前、モトクロスから離れすぎ……。」



「だって16で離れたんだもの……9年ぶり?テレビでブライアンを見かけなかったら、またやろうなんて思わなかったわ。」



確かにあのレースは話題になった。


リース転倒とアルベルトのプロポーズ。

そして初めて表彰台に上がったブライアン。


モトクロスから離れていた彼女が目にしても不思議はなかった。



「じゃあ、リースに感謝だな。あの転倒のお陰でエレノアに会えたんだから……。」



「うん、感謝よね。まさか会えるとは思ってなかったもの……。」



ふふっと笑い合う2人。

どうやらエレノアもブライアンに恋心を抱いていたようだ。



学校が違った2人はモトクロスを通して知り合い、互いに恋心を抱く存在となった。


彼女がモトクロスとブライアンの前から去ったのは、母親が亡くなり父親の実家に引っ越したからだと言う。



「今はどこに住んでるんだ?」



「ここから車で30分くらいの所よ。だから、これからはここに通うつもりなの。」



勘を取り戻すまで時間がかかりそうだと苦笑していた。



「良かったな~、ブライアン。モトクロスデートなんてお前にぴったりじゃないか。」



トッドが笑って肩を叩く。



「それは遠慮するわ。モトクロスはモトクロス。デートはデートでちゃんと区別してくれなくちゃ。」



どうやらエレノアは恋愛に積極的らしい。

天界人みたいだとクスクス笑うラファエル。



「ほんと、ブライアンにぴったりですね。モトクロスはブライアン、恋愛はエレノアさんがリードして行けば間違いないですよ。」



「だな。リースとブライアン、どっちが先に結婚するか楽しみだ。」



「お前ら気が早い。けど確かに楽しみだな。」



ラファエルとトッドをたしなめながら、アルベルトも一緒に笑っていた。



「俺、付き合い始めたばかりなのに……。」



「俺はまだ付き合ってもいないんだけどな……。」



顔を見合わせ苦笑するリースとブライアン。


だが嫌な気はしない。

3人が心から祝福しているからだ。



「お祝いの一周、行きますか?」



「一周と言わず何周でも行こうぜ。」



ニッと笑ってヘルメットをかぶるラファエルとトッド。

走り出した2人がジャンピングスポットでトリックを競い合う。



「あいつ、フリースタイルにも出るつもりか……?」



「そうらしい。トッドとは逆でこっちがメインだって言ってるけどな。」



「余裕だな……。俺は現状維持に必死だというのに。」



必死だと言うリースを見てニヤリと笑うアルベルト。



「チャンスだよな。ラファエルを抜いて必死なリースも抜いて……俺がトップに立ってやるぜ!」



ヘルメットをかぶったアルベルトが走り出す。



「だから気が抜けないんだよ!」



そう言ったリースもアルベルトを追って走って行った。

残されたブライアンがエレノアと向き合う。



「一緒に走るか?」



「ええ、昔のように走りましょ。」



「昔のように……か。今度は居なくなるなよ?」



頷いたエレノアに微笑んで、昔を懐かしみながら2人も走り出した。

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