第29話 追跡

 露呈したのは、追跡者の質によるものだった。

 ふたりが街の中を走り、角をまがり、橋を渡ると、ぞろぞろと、走って来る者たちが七、八人いた。

 追跡者たちの追跡技術に歴然とした差がある。ターゲットが走ると追跡の心得がない者は、慌てて、見失わないように走って追いかけてしまう。

 ふたりが川辺を駆け抜ける頃には、後ろを走っている追跡者の数は十数人まで増えていた。おそらく、姿はみせずに追跡している者もいる。しかし、追跡者の質には、ひどいバラつきがある。

 厳つい外貌な者もいるし、そうは見えない者もいた。その者たちが、マキノとミズメを走って追いかける。とうぜん、その群れは、街中では、ひどく目立っていた。多少、目立ったとしても、なりふりかまわず確保すべきという、必死な様子がある。

 ふたりがそのまま走り続けると、その数は、徐々に増えていった。大きな公園を通り過ぎるときには、二十人を越えている。公園を抜けて、ふたたび通りに出たが、そこは人通りがない道だった。

 だが、路上に近くにタクシーが停車していた。みつけて、ミズメが先に近寄り、運転席のドアガラスを叩いた。そして、後部座席のドアを開き、中へ乗り込んで「かけおちしてます!」と、言い放つ。

 マキノも続けた。「愛のために!」

 すると、ドライバーは「え、あうっ」と、一瞬、怯み、つぎにふたりを追って来る者たちの群れを見て「は、はいっ」と、いって、慌ててシートベルトを締めると、車を発進させた。

 車内から見える、バックミラー、サイドミラーには、追って来る者たちの姿が見えた。それを見て、ドライバーは怯む、そこへふたり同時に叫ぶ。

「金ならある!」

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