第13話 行事予定と微挑戦
前も言ったかもしれないが、この学校は行事の充実度がすごい。修学旅行は2回(?)あるし、一年から林間学校と言う名の遠足もある。そこがこの学校の最大の魅力、特徴の一つである。
……が、ある一つの物事について、人によって評価は分かれる…。ある事物にはいい面もよくない面もあるのだ。
今、行事の充実、それによって引き起こされる、(多分僕だけの)不利益。入学一ヶ月も経たず、
いや、早い早い。急ぎすぎだろ……、と思ったのだが、入学式で配布された資料を家で確認してみると、この学校の年間行事予定は次のとおりである。
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一年 学校年間行事予定
4月:入学式、球技大会
5月:林間学習
6月:学期末考査
7月:学期末考査、三者面談、終業式
8月:夏休み、始業式
9月:体育祭
10月:文化祭準備
11月:文化祭
12月:学期末考査、三者面談、終業式
1月:始業式
2月:学年末考査
3月:三者面談、卒業式、学習合宿
――――――――――――――――――――
結構忙しい、割と詰まり気味である。ということでこの4月の終わりに球技大会なるものが開催されることになったのだが、競技を決めなくてはならない。もちろん男女別である。
クラス36名のちょうど半分、僕含め18人が男子である。この男子たちを二つの競技で分けることになった。そこまではいい、だがなぜ個人競技がないんだ…?一体どうして……。本当に問いたい。小一時間問い詰めたい。『バレーボール』と『ソフトボール』だけしかないのなんで……。
説明しよう。僕はいまだ一応ぼっちである。よって団体競技など足を引っ張る可能性しかなく、運動そんなに得意じゃないのでやりたくない、なのに
と僕の切実な願いも届くはずなく、クラスは賑やかに、もうはや決めにかかっていた。
「何にするー?」
「ソフトやったことないしなー。俺はバレーだわ。」
「でも、ソフト9人で、バレー6人だろ?補欠がなー、3人だと考えても、お前らがいくなら俺もやりたいしなぁ。」
あっ、やばい……。これほんとにどうしよう。みんな仲良い友達と固まるって雰囲気だ。まあ、みんなは上手い下手関係なく楽しめたらそれでいいんだろうけど、僕はそうは行かない。まず男子に友達一人しかいないし、得意な競技はない。何よりも、迷惑をあまりかけたくない……。つまりぼっちとは超絶平和主義であり、世界平和を成し遂げることのできる人種がいたとするならばそれはぼっちだけであろう。
と壮絶なるほどにどうでもいいことを考えていたら、自然とクラスから浮いていた。ほんとにこれどうしよう…。
「国貞はどうすんの?」
「えー、俺はなんでもいいって感じかなー。別にどっちも特に苦手ではない。でも、できればソフトやりてぇなー。久しぶりに。」
あ。そういやお前は万能薬だったな国貞。肩でも腰でも胃腸炎にも効きますよ!みたいな。そんなもんあってたまるか。
などと一人頭を抱えていたら、声が飛んできた。
「あ、そうだ。夜木はどうすんだ?」
「え?僕…?でも僕、得意なもんとかないし……。」
「…じゃあ、俺ソフト行くつもりなんだけど、一緒にやらね?お前らも別にいいよなー?」
「おうー。なんなら一人足りなくて悩んでたとこだー。」
「お、良かったな。大歓迎だってさ。」
「あのぅ、誠にお気持ちは嬉しいのですが…大変申し訳ないことに……。」
「いいじゃん。気にせずやってみなよ。練習時間は取ってくれるらしいし。あと一週間もあるぜ。」
「……引っ張り込んだんだから責任取ってくれよ……?」
「おーわかったわかった。スマンが明日は予定があってな。外食行くんだよなー。」
「え?練習してくれるんじゃねぇの!?随分ともまあ、畜生だなお前!?」
「その感じだと一緒にやってくれるってことか?」
「……みんななら戦犯かましても許してくれそう。」
「そこは俺が保証する。みんないいやつだぞ。お前も話しかけたらいいのに。」
「それができてたら毎日お前待ちしてない。」
自分で言ってて悲しくなってきたなこの事実。
「夜木も一緒にやってくれるってさー!」
「了解!サンキューなー。国貞、あと…夜木か。よろしくなー。じゃ、ポジションと打順決めるから、こっち来てくれー。」
「うーい。んじゃ行くぞ、夜木。」
「よ、よろしく……。」
そう笑顔で語りかけられたので前の席に移動する。何やら紙を書いているようだったので覗き込んでみると、そこにはもうある程度のことが決められていた。
「夜木ー。ソフトボールとか野球の経験ある?」
「えっ……?あっ、と、な、無いです……。」
「そんな緊張すんなって。無いんだったら、打順後ろの方にした方がいいんだけど、どう?」
「全然、……それでいいよ。よくわかんないし。」
「じゃあ……ここの空いてる八番なー!八人目に打席に立ってくれ!ポジションは――やっぱあんまり強く投げないポジションの方がいいよな。だから……サードとかでどうだ!?」
「うん…。わかった。」
「じゃあ、夜木がなんかミスってもカバーできるように俺はレフトにしてくれー。」
「え?僕もうなんかミスる設定なの?」
「念には念を入れ、ってやつだ。まあ、言うてもみんな完璧なんて求めてないからだいじょーぶだぞー。」
「そうだぞ夜木。俺たちは高校生、楽しんだ者勝ちさ。最終的に最高に楽しんだやつが一番偉いんだ。」
え、めっちゃいいこと言うじゃん。確か
「勝っても負けても、まあ楽しかったらいいじゃないか。いい1日にしろよ!」
「せっかくいいこと言ってたのに最後のシャ◯クスで台無しだよ?」
思わずそうツッコむと、周りから笑いが起こる。
「夜木ってツッコミだったんだなー。感激だわー。」
「マジで助かるよな。この辺アホしかいねぇからさ!」
「
「国貞って前もそんなこと言ってなかったっけ?」
「ちょー、おい、お前らー。早く決めねぇと怒られんぞー?」
「やっべー。まとめねぇとー!」
その後も賑やかに話し合いは続いて、結果的に次のようになった。
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一年A組 メンバー表
メンバー / ポジション:打順
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上のメンツで行くことになった。一番から五番までは野球やソフトボールをやっていた奴らである。六番の河岸だけは遊びで少しだけ、他は一切経験なしの男達である。できるやつと初心者の差が割とヤバいことになっている。本当に大丈夫なんだろうか。そんなことを考えていたらもう国貞が先生に提出したそうで。
「じゃ、全部揃ったし〜。これで決定な〜。ほんじゃ、今日はこれで解散だ〜。」
「「「はーい。」」」
「じゃ、この後な。」
「了解。」
「この後な……今日は部活ないから……。あれだな、16:00からとかどうだ?」
「集合ちょっと早めね?」
「りょ。じゃ、15:45な。」
「みんないけるー?」
「大丈夫だよー。」
「いけるいけるー。」
なんだろうこの……疎外感。なんだ?ソフトボールメンツみんなが集まって話してるらしい。なんも話聞いてないんだが……?
「なあなあ、国貞。みんななんの話してんだ?」
「あ?言ってなかったっけか。今からバッセン行くんだぞ。もちお前も。そういやグルら追加してなかったか。追加しとくわ。」
ポロン。軽快な電子音が鳴り響く。その明るい音とは裏腹に僕は唖然としていた。
「……今から?」
「うん。今さっき決めた。」
「何が言ってなかっただよ!さっき決めたばっかの計画とも呼べねぇモンじゃねえか!?いつ決めたんだよ?先生はすぐ解散て言ってたが……?」
「先生が話してるうちに下でRINEしてた。三秒で決まったぞ。」
「行動力バケモンじゃねえか……。」
「まあな。どうする、少し時間あるけど着替えてから行くか?」
「……そうする。」
「じゃ、15:35くらいに駅前集合な。」
「電車使うのか。どこまで行くんだ?」
「銘常ぐらいじゃないか?」
「わかった。」
波乱の1日はまだ続く……。
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