同一存在
次の日の早朝、蒼月は終わり街中には平穏が訪れている。
まだ静けさがあるうちに、勇輝は次の旅へ向けて出発する。
「もう行くのか?」
「はい。今までありがとうございました」
ちなみに、師匠から貰ったお金は全て勇輝に渡した。
俺は師匠の居候する事にしたから、衣食住は問題ない。
むしろ、このお金は勇輝の方が有効活用してくれるだろう。
「またな、
「はい、また。
俺同士の言葉を交わすと、勇輝は一人街の外へと歩き出した。
俺から見て勇輝は、別人格の俺と相違ない。
記憶の共有という〈寄生〉の種族特性の影響とは言え、その〈寄生〉を解除した者とここまで綿密に会話したのは、これが始めてだった。
いつもは、傭兵という立場上解除したら即殺していたから。
そうでなくては、自分の情報を完全に明け渡してしまう。
だが、今回に限っては成り行き上交流をした。
その結果が、この同一存在の複製なのだろう。
俺は彼と、彼は俺と同化し、性質が中和され、
そう、我々は”
果たしてこれが、本当に正しい答えなのかは分からない。
しかし、それでも俺は俺として今を生きるしかない。
「俺は俺だ。僕は僕だ。そして、私は私だ。それ以上の何者でもない」
イコールの中には記憶の共有が不快に思う者の気持ちが少しだけ分かった気がする。
この〈寄生〉をし続けると、俺は俺で無くなってしまうのでは無いかと不安になる。
俺は僕であり、私であり、我であり、オデであり、俺様、僕様、妾、朕、儂、自分、アタシ、おいどん、拙者、小生、某、わっち、麿、あっし、オイラ――――――――
様々な意識が混在するが、それでも俺は俺だ。
そう自分に言い聞かせている。
そうでなければ、自我は崩壊してしまう。
「………辞めだ、辞め。全く深く考え過ぎると、ストレスに押しつぶされちまう」
今俺がやるべき事は【宇宙帝国ルルイエ】に離反した事がバレる前に出来る限り強くなる事のみ。
もし先遣隊と遭遇したら、真っ先に潰してやるからな。
「それにしても腹が減ったな……あ、この身体じゃ食べ物摂取出来ないじゃん。凄ぇ不便」
面倒くさいから食事の時には〈寄生〉解くしかないな。
◇◇◇◇◇
師匠の[月光薬局]に帰った俺は、腹が減ったので裏手にある食糧庫から少しばかり拝借して優雅に食事していた。
「師匠、もしかしてあれが勇輝――――いえ、リィムさんですか?」
「そう、あれがリィム。宇宙人らしい」
何故か二人に化け物を見るような目で見られてる気がする。
こんな愛くるしいレッドボディの何がそんなに不満なんだ。
やっぱりあれか、ムキムキ過ぎるのが駄目なのか。
もしそうなら、ガードンにも謝った方が良いぞ。
「え、あれ新種の魔物とかじゃないの?」
「は?」
「待てシェーラ。見た目は魔物かもしれんが、確かに中身の構造は人間だった。
そうだそうだ!!
見た目は魔物なのは異議を申し立てるが、ちゃんも中身も人間で………ん?
「師匠、魔石って何?」
「魔物の
「………その言い分だと、まるで俺の
…………え?
あの、師匠?
なんで……そっぽ向くんだい?
え、本当に俺寝てる間に何があったの?!
「まぁ、それは一旦置いておいてだ」
「いや置いとけないよ?」
「そろそろ修行を開始するぞ。シェーラは私の助手して」
「分かりました」
おっと、もうそんな時間か。
物凄い誤魔化された気しかしないが、それはそれとして俺にとっては修行の方が大切だ。
ここは言いたい事は喉元に押し込むとしよう。
「〈トゥルーハウス〉」
師匠は前回してやられた〈トゥルーハウス〉を展開する。
この魔術、空間自体も拡張されるから即座に修行する広さを確保出来るのは非常に便利だろう。
「魔術の基礎から叩き込む。ぬいぐるみに〈寄生〉して少し待ってて」
師匠がそう言うと突如として、その姿は消え去った。
これも何かの魔術なのかと感心しながら、再度ぬいぐるみに〈寄生〉を行った。
「ちなみに、リィムさんの修行はスパルタに行くらしいから覚悟しておくと良いですよ」
「らしいな。修行って一体何すれば良いのか見当も付かないが、流石に初っ端から飛ばす事は無いだろう」
「うーん……最初なら精々、爆速で動きながら低級魔法で的あてくらいでしょうか………あれ、八割当てないとご飯抜きなんですよね〜」
「………………え?」
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