第18話 アオとアキその1

 アキがこの里で特別な存在だったのは、彼が両性具有で生まれたためだ。


 この集落では両性具有は呪われた存在と信じられており、十二年と三百六十四日後に、里で開催される慰霊祭で、生贄となる運命にあった。


 里長のアオは始祖の鬼の血を受け継いでおり、その血の力で、この里の他の人間を操ることが出来た。

 そのため、この里の人間はアオの命令に逆らうことが出来ないが、唯一、アキだけが、彼女の命令に縛られずに行動することが出来た。

 アキが玲央に会いにいくことが出来たのも、そのためだった。


 この里で稀に生まれる両性具有の人間は、何故かアオの始祖の鬼の血の力による支配の影響を受けない存在となる。

 そのため、アオは両性具有の人間が生まれると、その者が十三歳となる前日に、生贄として自らの手で処刑することにしていた。


 アオは、今でも自分を助けてくれた、始祖の鬼の女性との約束を守っていたからだ。


◇◇◇


 アキは、近頃ますます私に似てきた。

 小さい頃の私にそっくりなんだ。

 だからこそ、もどかしい。


 最愛の存在になるべき者が、私にとって最も忌むべき存在になりそうなのだからな。


 両性具有で生まれてこなけば、本当の子供のように愛してやれたのにと思う。


 これも光圀が、我々を迫害し、我が一族に呪いをかけたからだ。


 だが、仕方がない。


 この里に禍を引き起こす可能性のあるものは、排除しなくてはならない。

 この里を守るためには、仕方のないことだ。


 この里の仲間たちが出来るまでは、私は人間に復讐することだけを考えていた。

 だが、こうして私の仲間が出来て、ソラという息子が出来たことで、私の考えは変わった。


 今は里長として、この里と私の仲間たちを守ることを考えている。


 だからこそ、私の手でアキを処刑する十二歳の終わりまでは、出来るだけあの子に優しくしてやろうと思う。

 里の仲間たちにもそうするように話すつもりだ。

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