第2話 暴王
琉球は
税は日を追うごとに重くなり、村々の者たちは衣食を切り詰めて今日を生き
伝染病の
「
老人の名は
大陸から買い付けた
「はっ、
天寧の側近であり、浦添
按司は村々の諸問題や雑事などを片付ける立場にあり、王の次に権力を持つ。しかし両者の間には
「ところで
頭を下げたまま、利勇は天寧の顔を盗み見る。その口角はわずかに上がっており、
「いかかでしょう。ここは一時的に減税措置を
肉を食べる手が止まる。天寧の
「さすれば民は陛下にさらなる
「利勇よ、
天寧は面倒臭そうに言って肉をかじる。
利勇は頭を下げたまま、ここでさらに食い下がるべきかどうか迷った。今の天寧の一言の
「申し訳ございません。私ごときが出過ぎた
「うむ、ここでさらに反論しようものなら一族もろとも海に沈んでいたところだ。命拾いしたな、利勇……」
涼しい顔を保っているが、利勇の背中にはびっしりと汗が浮かんでいる。天寧は玉座から立ち上がり、骨をしゃぶりながら利勇の肩を叩いた。
「しかしお前に任せていれば安心よ。減税など
「はっ、心得ております……」
「それはそうと、ミナト川の埋め立ては進んでおるか?」
「はっ、順調です。上流はほぼ埋め立てが完了しました」
「よしよし、これで洪水も起こらなくなるだろう。貯水池の増設はどうだ?」
「はっ、そちらも順調です……」
一年前の大雨は川を
そこで天寧が
それは民から貴重な水源を奪い取ることに他ならない
『それならば、川を潰す代わりに貯水池を作らせてください。そうすれば洪水は起きない上、水源も確保出来ます』
それが、利勇が天寧から引き出せた最大の
『お前はいつも慎重だな。なぁに、川がなくても海に行けばいくらでも水はあるだろう』
皮肉ではなく、天寧は本気でそう言ったのだ。
そしてその貯水池は、水源としてまったく機能していない。村人たちは川の埋め立てに多大な労を
「───利勇よ、上を見てみよ」
その数は二十四枚。二十四人の男たちが玉座を見つめていた。天寧は目の前の、一番古びた肖像画を指差した。
「初代国王、
「はっ、どんな言葉や表現を
「しかしだ、かつては全土を支配していた
天寧は馬の骨をばりばりと
「直ちに
「なっ……!」
「不満か」
「いえ……」
「よし、もう下がってよいぞ」
そう言って、先に天寧が奥の間に下がる。利勇は急いで
一瞬とはいえ、目に殺意を
去り
「それから各村の役場に伝えろ。今後は病気と思われる者がいたら、すぐに殺して海に捨てろとな。王宮での蔓延だけは何としても避けるのだ」
そう言い残して、天寧は去って行った。
残された利勇はひれ伏したまま、両の拳を握りしめてとめどなく涙を落としていた。
(もう限界であろう、何もかもが……)
民は
今、北山や南山に攻め込めば返り
───天寧とは、悪魔の代わり言葉か。
そして天孫の肖像画を赤い目で
「天孫公、これが私の
もはやこれ以上の
「悪魔を討ちます。
脳裏に妻と娘の姿が浮かんだ。娘のハルは昨日、十五歳になったばかりだ。
利勇はしばらく、その場に涙の
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