20・ささやかな破魔矢づくり
メイドに先導され、ミュリナはレーナとともに古城の廊下を歩いていた。
「はあああ……。かっこよかったですねえ、フォンティネール夫人……」
「そうね」
「村の人たちがこぞって見にくる気持ちがわかります。あたしだって、あんなかっこいい人が自分の村を守ってくれるなら、取り巻きになっちゃいます。ああどうしよう。女の人なのに、結婚もされてるのにご令息もいらっしゃるのに、ときめきがとまらない!」
「わかったからすこし黙ってなさいよ、レーナ……。恥ずかしい」
レーナがはしゃぐ気持ちも、わからないではない。ミュリナだって、夫人が浴びた魔物の血が見えなければ、白馬の似合う颯爽とした姿に気持ちが昂ぶったことだろう。
「こちらがお部屋です」
ふるまいの行き届いたフォンティネール家のメイドは、案内がすむと一礼して去って行った。ミュリナは椅子に腰をおろし、鞄を開けた。中から革袋をとりだす。
「なんですかそれ?」
レーナがのぞきこんできたので、ミュリナは中を見せてやった。
「砂粒……っていうには大きいし、石っていうには小さいですね」
「雑魔の死骸よ。『試験』でわたしがやっつけた虫みたいな魔物。ジュリアス様が、さっそく約束を守ってくださって、ぜんぶわたしにくれたの」
わたしがやっつけた魔物の石はすべてわたしにくださいと、ミュリナは言った。ジュリアスはその契約を忘れずに、砂粒のような石を集めて渡してくれたのだ。ミュリナは『試験』の雑魔のことなど頭になかったので、ジュリアスを律儀な人だと思った。そんなところにも、彼の誠実な人柄がにじむ。
「せっかくだから、矢を魔具にするのに使おうと思ったの」
ミュリナは愛用の小弓と矢筒を小机に置いた。矢筒から短矢を一本とりだし、小刀で中央に切れ込みを入れ、そこに小さな石粒を押し込む。蝋燭の光にかざすと、石粒はきらりと小さく輝いた。
「こうすれば、少しは威力が増すと思うのよ」
「なるほどー」
レーナにも手伝ってもらい、せっせと破魔矢づくりにいそしんでいると、扉をノックする音がした。
扉の外には、鎧からたおやかな青いドレスに着替えた伯爵夫人の姿があった。
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