第3話夜の訪問者
最初に可奈美、霧島、佐藤、真由が廃ビルに入ることになった。
「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス!」
「可奈美、もうそれはいいから」
「何かあったら、大声出すからな」
この島にはインターネットどころか携帯電話さえない。
叫ぶしか通信手段が無いんだ。
「20分たったら、ここに戻ってね」
海野と霧島が腕時計の時間を確認しあった。
桜たちは廃ビルの外で夜空を眺めながら待っていた。
灯りもなく空気の澄んだ島の夜空はとても美しく神秘的で、手を伸ばしたら届きそうに思える。
「何もすることがない二十分は長く感じるね」
林の中で動物の鳴き声が聞こえた。
廃ビルからは何も聞こえない。
「二十五分たった。まだ、出てこないな」
海野がイライラしながら、何度も廃ビルの入り口を覗き込んだ。
「あ、やっと来た」
懐中電灯の光の後に四人の影が現れた。
「遅いぞ」
「ごめん。一階には何も無かったわ。ネズミがいただけ」
「そんな事ない。なみなみならぬ怨念を感じたわ」
可奈美の感性は独特なのである。
「俺も、邪悪なものを感じた」
霧島が可奈美に同意する。
二人は相思相愛なのだが、まだそれに気付かないでいた。
「じゃあ、俺達が2階を見てくる。建物は崩れたりしてないな?」
「うん、わりと丈夫そう」
「邪悪な魂にのみ込まれないように気をつけるのよ」
可奈美が変なポーズをとりながら、桜達を激励した。
そんな可奈美を霧島はうっとりと見つめている。
ー早く告白すればいいのにー
「行くぞ、桜、亜希」
海野が懐中電灯を握りしめ先頭を歩いていく。
廃ビルの中に入って直ぐに階段があり、そこを懐中電灯で照らした。
「大丈夫そうだな。だが慎重に上れ」
三人はかたまって階段を上った。
すると突然、前方から光が…。
「うわっ」
「なんだ。鏡に懐中電灯の光が反射したのか」
階段の踊り場に大きな鏡が張ってあった。
「戦時中の建物なのに、よく鏡が割れなかったね」
2階に上がると、廊下の両側に幾つもの部屋があった。
殆どの部屋のドアは既に無くなっていて、部屋の中も床の上に乱雑に壊れた瓶や、紙くず、壊れた椅子や机、時には壊れたベットなどが散らかっている。
一階は火事の為に煤けており、部屋の中も焼け焦げていたが、2階には火が回らなかったらしい。
天井は蜘蛛の巣だらけだ。
「気持ち悪い。でも、幽霊なんていないじゃない」
「ねえ。あれ、菓子パンの袋。ジュースの缶も捨ててある。最近、誰かがここに来たのよ」
「そうだな、桜。さあ、そろそろ戻ろう」
廃ビルから出ると、待っているはずの四人の姿がない。
「可奈美!。霧島さ〜ん。」
「佐藤。真由、何処だ?」
三人は辺りを探しながら友の名を呼んだ。
「静かに。何か聞こえる」
『お~い。今、戻る』
とおくの林の中から声が聞こえ、しばらく待って四人が林から出てきた。
「どうしたの?」
「林の中で光る何かが動いてるのを見つけて、追いかけたのに見失なっちゃった」
可奈美が残念そうに報告した。
「光る何かって、幽霊じゃなくて人間かもしれない。廃ビルに菓子パンの袋とジュースの空き缶が捨ててあった」
桜が報告した。
「でも、誰が?。島の住人は暗くなったら外にでないでしょ」
「島の外から誰かが来たら直ぐに解るし」
「島の住人の誰かが、廃ビルで何かしてるって事?」
「そう、それも秘密裏に」
「秘密の味は蜜の味。その秘密を突き止めましょう」
可奈美が唇を舐めながら提案した。
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