『幼馴染が極端なヤンデレに覚醒して俺の日常が崩壊寸前なんだが』

いろは

第1話 「幼馴染の微笑みがなんか怖いんだが…」

朝の通学路、いつものように隣を歩く星川凛花は、今日も完璧だ。さらさらの黒髪が朝日で輝き、整った顔立ちには柔らかな微笑みが浮かんでいる。学園のアイドルと呼ばれる彼女が、俺――一条翔、平凡な高校2年生――の幼馴染だなんて、誰も信じないだろう。


「ねえ、翔。今日の数学、宿題やった?」凛花が首を傾げて聞いてくる。声まで透明感があって、まるでアニメのヒロインだ。


「いや、昨日ゲームしてたら忘れて…やばい、貸してくれ!」俺は慌てて頭を下げる。


「もう、しょうがないな。昼休みに貸してあげるけど、ちゃんと自分でやりなよ?」凛花はくすっと笑い、軽く俺の肩を叩く。その仕草一つで、通りすがりの男子たちがチラチラ視線を投げてくる。はいはい、羨ましいでしょ、知ってるよ。


凛花とは物心ついた頃からの付き合いだ。隣に住んでるから、毎朝一緒に登校して、放課後も一緒に帰る。彼女の親が離婚した中学時代、ちょっと大変だった時期もあったけど、俺がそばにいたからか、凛花はいつも笑顔だった。ま、俺の自慢の幼馴染ってわけだ。


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教室に着くと、いつもの騒がしい空気。俺の席の隣には、クラスのムードメーカー・佐藤彩乃がニコニコしながら話しかけてくる。


「翔、昨日のゲーム、結局どこまでやったの?あのボス、めっちゃムズくなかった!?」彩乃は目をキラキラさせて身を乗り出す。ゲーマー仲間として、最近よく話すようになった。


「やばかったよ!あの炎の剣さ、タイミングがシビアすぎてさ――」俺が熱く語ると、彩乃は手を叩いて笑う。めっちゃノリがいいな、こいつ。


ふと、背後に冷やっとした気配を感じる。振り返ると、凛花が窓際の席からじっとこっちを見てる。いや、微笑んでるんだけど…なんか、目が笑ってない? いやいや、気のせいだろ。


「翔、彩乃ちゃんとなんか楽しそうだね」凛花が近づいてきて、いつもの柔らかい声で言う。でも、なぜかゾクっとする。


「え、うそ、凛花、怒ってる? ただゲームの話してただけで――」


「ううん、怒ってないよ? 翔が楽しそうなら、私も嬉しいし」凛花はニコッと笑うけど、彩乃の肩にそっと手を置くその仕草が、なんか…重い。


彩乃は「あ、凛花ちゃん! ごめん、ちょっと借りてた!」と軽く手を振って自分の席に戻る。凛花は満足げに俺の隣に座り、「昼休み、ちゃんと宿題写しなよ?」と耳元で囁く。う、近いって!


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昼休み、約束通り凛花のノートを借りて宿題を写す。教室の隅で、凛花は弁当を広げながら俺をじっと見てる。


「翔、いつも私の弁当見て食べたいって言うから、今日、作ってきたよ」凛花がそう言って、ピカピカの弁当箱を差し出す。マジか、唐揚げに卵焼き、彩り野菜まで完璧だ!


「うお、凛花、神! サンキュー!」俺は感動して箸を伸ばす。うまっ! 唐揚げのジューシーさが口に広がる瞬間、凛花がふっと笑う。


「よかった、翔が喜んでくれて。ね、これからも毎日作ってあげようか? 私の手作り、翔だけでいいよね?」


「え、毎日!? いや、悪いよ、そんな――」俺は笑って手を振るけど、凛花の目が一瞬、鋭くなる。え、なにその視線?


その夜、スマホがピコンと鳴る。凛花からのLINEだ。いつもなら「おやすみ!」とか短いのに、今日は…長っ! スクロールしても終わらない!


「翔、今日、彩乃ちゃんと楽しそうだったね。私、ちょっと寂しかったな。翔は私の1番でいてくれるよね? 小さい頃、ずっとそばにいるって約束したよね? 私、翔が他の子と仲良くするの、見てるの辛いよ。ねえ、翔、明日からまた2人だけで――」


え、なにこれ。めっちゃ重いんだけど! 慌てて「お、おやすみ!」と返信してスマホを閉じるけど、心臓がバクバクしてる。凛花、どしたんだよ…?


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翌朝、いつもの通学路。凛花はまたいつもの笑顔で隣を歩く。でも、なんか違う。彼女の手が、さりげなく俺の腕に絡む。え、こんなスキンシップ、昔はなかったぞ?


「翔、今日、放課後、一緒に帰ろうね。私、翔と2人でいる時間が1番好きだから」凛花の声は甘いけど、なぜか逃げられない圧を感じる。


教室に入ると、彩乃がまた話しかけてくる。「翔! 昨日のボス、クリアできた!」とハイタッチを求めてくるけど、凛花の視線が背中に刺さる。やばい、なんかヤバい!


昼休み、凛花の弁当を食べながら、俺は気づく。唐揚げの裏に…なんか小さい黒いチップ? まさか…GPS!? いやいや、んなわけないだろ! と笑い飛ばすけど、凛花の微笑みが妙に深くて、背筋が冷える。


放課後、校門で待つ凛花の隣には、見知らぬ女子が立ってる。3年生の先輩らしい、クールな美人だ。「一条翔、だよね? ちょっと話したいんだけど」先輩がそう言う瞬間、凛花の手が俺の腕をギュッと握る。え、なになに!?

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