7月31日

避暑地へ旅立つメンツは決まり、ガチ攻めコーデに圧倒される

「ふむ、避暑地への招待状か……学園長殿には、感謝を申し上げねばならんな」


 パパに招待状の事を伝えると、学園長様からの招待状を手に、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。


「ちょうど良い機会だ。椿つばあおい、ラーヴィ、ミント、まほろ。そしてつぐ、この六人で、その避暑地へ行ってくるといい」


「ん? パパたちは来ないの?」


 てっきり、パパやルミィア、他のメンバーも一緒に行くと思ってたんだけど……?


「国民のことも気にかかる。私たちはここに残るから、気にせず行ってきなさい。近年、様々な問題を解決してくれている君たち功労者こそ、しっかりと休暇を取るべきだと思うよ」


 パパからそう言われて、名前を挙げられたアタシたちは顔を見合わせる。



「わたくしは……ぜひ、このメンバーで行きたいですわ♪ よろしいでしょうか?」


 そう、最初ににっこり笑ったのは、アタシの実の妹、夢崎ゆめざき 椿つば

 母親は違うけど、葵と並んで、アタシの最愛の妹♪


 艶やかな長い黒髪と、赤い瞳は、アタシたちがパパの血を継いでいる証。

 椿咲は天然パーマで、長く伸びた髪は綺麗なウェーブ状になってる♪

 わく的な雰囲気をまとった椿咲は、アタシとはまた違った、魔王女の魅力を放ってて、正直、アタシよりちょっと大人っぽい気がするのよね〜。

 

 ハリのある胸、キュッと引き締まったウエスト、そしてプリっとはじけるようなお尻。

 ちゃんと♪ 出るところは出ているナイススタイル!

 ……う〜ん、アタシの自慢の妹だわ♡



「他のみんなとも行きたいけど……でも、この六人なら動きやすいかもしれんね♪」


 と、にっこり笑って賛成する葵。

 たしかに、他の皆のスケジュールまではアタシも把握してないし……

 今回はこのメンバーがちょうど良さそうかな?



「ちちぷい、かぁ♪ なんだか懐かしいわね〜♪ いろいろ大変なこともあったけど……このバカンス、ご褒美ってことで、いいのよね?」


 ミントもニコッと笑って同調してくれる。

 うんうん、あなた今回も大車輪の活躍だったもんね〜♪


 ミント・シルヴィオ。

 普段はうちの城でメイドとして働いてるけど、本職は傭兵。竜騎士隊にも所属してる、れっきとした戦士なのよ。


 長く綺麗な緑髪をポニーテールにまとめて、頭にはきちんとメイドキャップ。

 彫りの深い美しい顔立ちに、トパーズみたいに輝く黄色い瞳。


 メイド服に身を包んで、見えてる腕や足はしっかり鍛え上げられた筋肉が浮き出てる。

 アタシよりひと回り小柄だけど、胸はFカップあるし……でも体の鍛え方が全然違う!


 お腹周りも腰回りも、バッキバキに引き締まってるし、お尻も筋肉でしっかり覆われてる。

 見た目は可愛くて綺麗なメイドさんだけど、実はこの国イチの怪力なんだから☆


 戦場でも何度も死線を共にしてきたし、メイドっていうより完全に親友戦友として信頼してる♪



「わ、私は……魔王城には縁がない身ですが、それでもご一緒してよろしいのでしょうか……?」


 目を閉じたまま、やや控えめにそう尋ねてきたのは、巫女服姿のまほ。


「よかよ〜♪ まほも今回、大活躍やったやん♪ かむが無ければ打開できんかった戦いもあったし! 遠慮せんでよかよ〜♪ それにね、み〜んな、まほにも来て欲しいって思ってるから♡」


 彼女の正式名は望月もちづき まほろ

 ざいと福岡を守る戦巫女ヴァルキリー・破魔巫女弓隊の隊長さん。

 アタシたちは、幼馴染でもあるから、親しみを込めて《まほ》って呼んでる♪


 凛とした雰囲気に、腰まで届く長い黒髪。前髪は眉のあたりで、ピシッとパッツンに切りそろえている。

 生まれつき全盲だから、普段はいつも瞳を閉じてるけど、時折ふと開くその瞳は……

 アメジストみたいに深く輝く、美しい紫色をしている。


 巫女服の下には、ボリュームのある胸とお尻。

 スタイルはとっても官能的……なんだけど、アタシよりはずっと引き締まってる。


 だって、まほ……お腹、しっかり筋肉で割れてるんだもん……きゅう……(羨)



 そして、残るひとり——ラーヴィの返事を待っていたんだけど、なかなか話し出さない。


 ……仕方ない、こっちから聞いてみるか。


「どーせアンタ、『訓練できんからヤダ』な〜んて言うんやろ?」


 ピクリ、と彼の耳が反応した。

 腕を組んだまま閉じていた瞳を、すっと開く。


「……図星だが?」


 ……うん、いい声色やなぁ。しみじみ。んで、あくびれる事なく開き直る……


 短く整えられた銀色の髪に、この世のものとは思えないほど美しい緋色の瞳。

 その美貌は、性別問わず誰もが見惚れるレベルの超絶イケメン……

 なんだけど、ちょっとだけ幼さが残ってるのがまたズルい!


 ルミィア曰く「ショターン」らしいけど……

 アタシ的には、ショターンってナニ? って感じ。未知すぎる。


 彼は、ミントの幼なじみで、遥か西の故郷から修行の為、福岡に流れ着いたあと、今では執事業務と傭兵の二刀流で、魔王軍に仕えてくれてるのよね。


 で、そして——


 この場にいる五人、つまりアタシたち全員が、彼に惚れてるという……

 まさかの問題児ポジションでもある。ドウシテコウナッタ……


「なら、ラーヴィよ。5人の護衛として同行してくれ。……頼めるか?」


 パパ〜〜ッ! ナイスアシスト五つ星ぃ☆☆☆☆☆


 ……って、おい、ラーヴィ!

 あからさまに『そんなぁ……』って顔すんなや! もう〜〜!


 その様子に、アタシたち五人は思わず顔を見合わせて、苦笑い。

 ほんと、どこまでもの男なんだから……


 腹立つわぁ〜〜!


 でも、そこがイイ……♡ ストイック男子♡


 ──出発は、明日。7月31日、午前10時。


 集合場所は、指定された福岡空港遺跡。

 そこから、ちちぷい島へ向かうことになる。


 ん〜っ♪ 楽しみすぎるっ☆


 さ〜て……しっかり準備、しなきゃねっ♪


* * * *


 翌朝、快晴~! 

 旅立つにはもってこいの青空! だけど暑い!


 ラーヴィが超巨大な日傘(直径4メートルサイズ)を軽々と持ち、紫外線からアタシたち五人のレディを守ってくれる。


「すぅっごく楽しみですわぁ~♪」


 椿咲は純白のノースリーブのフリルブラウスに淡いピンクのレイヤードミニスカート。

 清楚なお嬢様風に纏めてるけど、おへそがチラリズムに見えてキュートセクシー♡

 純白のハットをかぶって、メイクもばっちり。お嫁に出したくない……


「ほんと♪ ウチもめっちゃ楽しみぃ!」


 元気と可愛さ印の葵。おへそを出したノースリーブのクロップドシャツにネイビーブルーのストレッチジーンズ。

 キャップをかぶって、いかにも快活感が溢れてる♪

 カジュアルに動きやすさ重視だわ! う~ん、かわいい♡


「バカンス……かぁ、でも、たまにはいいわよね♡ ラーヴィ♡ 皆♪」


 ラーヴィの持つ傘の手にそっと近づいてるミント。あざといわよ? も♪

 ベージュのオープンカラーシャツにオレンジリネンのショートパンツ。

 サングラスもかけていて、大人っぽい感じに……やるわね? ミント♪

 去り気にシャツの胸元も広げて、セクシーさも強調! 流石アタシの親友♪


「お招かれされるなんて……ふふ♪ でも、皆で旅行だなんて、ホント楽しみ♪」


 すっごいにっこり顔のまほ。普段は清楚な巫女をしているのに……

 インナーにパンク柄のタンクトップの上に、薄生地のシアーシャツをレイヤードとして着用。

 柄とおへその両方をうっすら映すような着こなし。……上級者じゃね?

 ボトムは金属アクセがキラキラ輝くホットパンツ。ピッタリすぎて、太ももが食い込み……エッチくね? それ。

 なんだか捕食者が着てそうな……ガン攻めきてるわね、まほ。明らかに説明が長くなっちゃうじゃんこれ!


 それに引き換え、アタシは、薄地の白いノースリーブタートルネックの上に赤いペプラムブラウスを羽織って、デニムのショートパンツを履いてる。

 チャームを首から下げてるけど……


 アタシのコーデ説明短か!


 皆のコーデが可愛くて、自分のはどうなのか……自信ないわねぇ……ん?


 すると……遥か上空からゴーーーーーーーと音を立てて近づいてくる影が見える。


「飛行機が来たようだな。皆、忘れ物はないかい?」


 傘を持ったまま、ラーヴィが聞いてきた。

 もちろん☆ 忘れ物は無い♪


「それじゃ☆ 護衛シクヨロよ~ん☆」

「ラーヴィ様♪ よろしくお願いしますわね♪」

にぃに♪ せっかくやし楽しも♪」

「そうよ? 兎に角、私達もたまには…ね?」

「ホント、貴方様って人は……罪人とがびとねぇ?」


 これから起こる、忘れられない夏の思い出の旅が……始まる気がする。


 飛行機に乗る際、ラーヴィがこちらに近づいてくる。


「ん? どした?」


「いや、少し元気ないだろ?」


 おやおや? もしや、コーデ勝負(していないけど)で引け目を感じたアタシを気遣ってか?

 ま、皆可愛すぎるから、しょんなかとよ……


「……ちゃんと、月美も可愛いから。大丈夫だぞ?」


 ……バレテーラ♡


 ♡ はぁ、そういうとこだぞ? アンタ♪


「にひ……にっひひ♡ アリガト♪ 元気百倍よ~♪ いっくぞ~♪」


 既に一つ、思い出、出来ちゃった♡ うふふ♪

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