第25話 最初の一枚
「枚数も多いですし、一応取り込んだ写真見てみましょうか。僕が見てしまっても問題ないですか?」
「はい、かまわないです」
気が利くな、と聡美は思う。確かに写真はプライベートな情報が写っているので、人に見られて恥ずかしい写真があるかもしれない。
リモコンを操作して、画面の「最近とりこんだもの」を開いてみる。
「あ、問題なさそうですね」と悟が画面を指差す。「大量に写真が転送されているみたいなので」
画面には写真がずらりと並び、カーソルが当たっている写真の情報が右側に表示されている。最初の写真は本当に古い。このスマホでは昨日、きれいに咲いていたヒマワリを撮影したのでずっとそれが並んでいるはずだ。
「こうして時系列で並んだ写真を見ていると、どんな事をしていたか思い出せるんですよね」
その通りだ。聡美は表示された写真を見ながら、結構な枚数を撮っていることに気が付いた。最初の方は、前に取り込んだデジカメの写真と時期が被っている。
「そういえばスマホにしてから、デジカメをだんだん使わなくなりましたね」
「そうですね。スマホがあれば、たいていの撮影は間に合いますし。枚数的におそらく機種変更をしたとき、昔の機種の写真を引き継いでいるんでしょうね」
聡美のスマートフォンはiPhoneだった。元夫が機械に詳しくて、いつも機種選びは任せきりだった。けれど、今使っているこのスマホは、ひとりで選んだ。初めてだった。
「でも……お店の人に頼んじゃって、何をしてくれたかはよくわからないんです。確かに古いスマホから写真を移してくれたんですけど、何か月額がかかるサービスを勧められて……」
「クラウドのことですかね」
「たぶん。でも断ったら、写真が多いならって、一番容量が多いやつにしてくれた気がします」
悟はうなずいて、画面右上を指差した。
「ここに、撮影日だけでなく、機種名が表示されています。そのスマホの機種名ではないので、前のスマホの写真ですね。デジタル写真はどんなカメラで撮影したか記録されてるんですよ。あれこれ取り込んでると、機種ごとの違いが見えて面白いです」
画面に表示された機種名に、聡美は見覚えがあった。
「……そうそう。これ、お揃いで買ったんです。娘と。初めてのスマホだったから」
そのとき、確か店員に「カメラのいいやつがいい」って言われて、素直にうなずいた記憶がある。
最初の写真は二人で笑っている写真だった。撮ったその場ではなんとも思わなかった一枚が、いまは画面いっぱいに美しく広がっている。
「……きれいに写ってますね」
「最初の一枚って、けっこう覚えてるもんですよ」
悟の言葉に、聡美は小さくうなずいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます