第二節 新しい風、リン

秋の風が窓から吹き込み、教室のカーテンが静かに揺れた。


「えー、朝の会の前に、今日は皆さんに紹介したい人がいます」


担任の先生の声に、6年2組の教室が少しざわめいた。


「転入生の紹介です。皆さん、温かく迎えてあげてくださいね」


教室の後ろのドアが開き、ひとりの少女がゆっくりと入ってきた。


「……ハロー。わたし、リン・ハリソンです。アメリカから来ました。よろしく……おねがい、します」


流暢とは言えないが、丁寧でまっすぐな日本語だった。


白いシャツに端正な立ち姿。背は小柄ながら、動作のひとつひとつがしなやかで、どこか“鍛えられている”印象を受けた。


「リンさんは、今月からこの学校に通うことになりました。アメリカでは器械体操をやっていたそうです」


クラスがどよめく。


「器械体操!? かっこいい!」


「体、すごく柔らかそう……!」


「でも日本語、けっこううまいね!」


リンは、少し照れくさそうに笑った。


「まいにち、いっぱい、べんきょうしてます。でも、ときどき……えっと……“へんなこと”言っちゃうかも、sorry!」


その一言に、教室から笑いが起きた。


先生も笑ってうなずいた。


「そんなときは、みんなでフォローしてあげてくださいね」



休み時間、リンはひとりで机に座っていた。

教科書を開いて、漢字の読みを指でなぞっている。


そこへ――


「Hi, リン!」


声をかけたのは、ハルとユキ、そしてさちだった。


リンが顔を上げ、少し驚いたように笑う。


「Hello…? あ、こんにちは!」


「私はハル。こっちはユキ。双子なんだ」


「そして私はさち! 今日からよろしくね!」


三人は自然にリンの机のまわりに集まった。


「聞いたよ。器械体操、やってるんだって? すごいね!」


「うん。小学校一年生から。アメリカのクラブで練習してた」


「へぇ〜! 日本に来ても、続けてるの?」


「うん。うち、トレーニングルーム、ある。でも……ひとりで、ちょっと……lonely?」


その言葉に、さちがにっこり答えた。


「じゃあ、一緒にやろうよ! 私たちも毎日トレーニングしてるんだ」


ユキが続ける。


「私たちはスイミングがメインだけど、体づくりは共通してると思うよ」


ハルが勢いよく手を差し出した。


「私たち、トレーニング仲間になろうよ! 友達も、ね!」


リンの瞳が大きく見開かれる。

そして、ゆっくりと、でもしっかりと手を重ねた。


「ありがとう……うれしい! わたし、がんばる。みんなと、ともだちに、なりたい!」


三人は顔を見合わせ、笑った。


「よし、新メンバー加入記念で、次のメニューは特別版にしよっか!」


「リンのトレーニングルームにも行ってみたい!」


「いらっしゃいませ! とっても、equipmentが多いよ!」


こうして、新しい仲間との物語が、静かに動き始めた。


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