僕の中学校生活がループしているので抜け出したいと思います。

宮本葵

プロローグ

夏の日が刺して、ものすごく、死ぬ人がいるんじゃないかと言うくらい、暑い日の帰り道、和田陽介は階段を降りていた。


「……先輩、また明日も部活ありますよね?」


僕の少し前で、にっこり笑った女子生徒が笑っていた。その先輩は──陽介が、ほんの少しだけ“気になっている”人だった。


「もちろんあるよ。ていうか、陽介くん、君、最近さぼりすぎー。もうちょっと来なよー。」


「……すいません」


苦笑いしながら頭をかく僕に、先輩はいたずらっぽく微笑んだ。


「じゃあ、また明日ね!」


何気ない普通の先輩後輩での会話。特別でも、ドラマチックでもなかった。ただ、陽介にとっては──なぜか、忘れられない時間だった。


──それが、最後の会話になるなんて、その時の僕は思ってもいなかった。


= = = = = = 4ヶ月前・3月末 = = = = = =


中学一年生の修了式。体育館の空気は、春休み前の軽いざわめきと、別れの静けさが入り混じっていた。

校長先生の話で、


「この1年間を大切に過ごせましたか?もう1年生は2年生、2年生は3年生になりますね。」


と話していた。

そういえば、僕って何してたんだろ。

部活に入ったのはいいけど、ちょっと強めの怒り方をする先輩にちょっと怯えて部活にあまり行かなくなったり、テストでは70位と、真ん中ら辺の順位。勉強もあまりやらなかったな。そういえば、後悔ばかりだ。


部活、もっとやりたかったな…。あんな奴がいなければ…。

先輩の名前も一ミリも覚えず終わったよな。


まあ、時間なんて取り戻せない。そんなものなんだ。


そう考えていると修了式どころか、掃除も終わって、教室で椅子に座って先生の話を聞いていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


夜、いつものようにテレビでアニメをダラダラ見て、親に「ご飯だぞ」と言われ、部屋から出て、夕飯食って寝ていた。

アニメの次回話について妄想を広げていたら──


ズキン、と、頭を締めつけるような痛みが襲った。


「……っ、ぐ……!い…いた…い…」


目の奥が焼けるように熱く、身体が動かない。おまけに強い頭痛がする。頭痛が痛いってのはこういうことだったのかとバカみたいなことを考えているうちに、痛みの中で、何かが崩れる音がしたような気がした。


最後に夜中12時前と言うのが蛍光時計をみてわかっただけだ。

視界が揺れて、意識が遠のく。ベットから落ちるような感じがした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


よくわからない空間に浮かんでいるようだった。痛みがまだあるが先ほどよりはマシに…。

そしてだんだん、眠くなっていく……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


──気がつけば、陽介はベッドの上にいた。

窓の外には、少し曇った空が見える。朝だ。


あれ、さっきまで夢を見ていたような…?痛かったような…?


そう思い、起き上がる。すると、頭が痛い。なんでだろ…?頭打ってもいないしな…。

日付を見ようと壁にかけてある時計をみてみたら…。

新学期の、入学式の日だった。


「……え?」


僕は、思わず時計をもう一度見る。


2024年4月7日。


なぜか、修了式の翌日では、なかった。中学1年生の修了式が終わって次の日だと思ったのに、なんなら1年前に戻っていた?

そこから始まる、“同じ一年”の繰り返し──それはまだ、誰にも知られていない。はずだ。


= = = = = = = = = = = =


その2日前、同じようにループした人がいる。


「うわ〜。痛いなんて聞いてないよぉ〜。どうするの女神様ぁ〜。」


と中学生と思われる女子がベットから転げ落ちて呟く。


「まあ、あの人と同じと思えばいいや!それにしても痛すぎでしょ。」


と言いながら部屋を出ていく。

その足取りは軽く、まるでこれから始まる"いつもとはまた違う日常"を少しだけ楽しみにしているかのようだった。


この話は、とあることから始まったループによって主人公が人生をよくするために頑張るお話である。

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