サイダーのふたを開けた日

ミスターチェン(カクヨムの姿)

第1話 はじめましてと炭酸と

夏の午後、駅前のベンチで僕──伊吹晴人は、汗まみれの制服を着たまま、

ぼうっと空を見上げていた。

 暑さと部活疲れで意識が溶けそうになっていたそのとき、

 手に持った冷たいガラス瓶が、目の前に差し出された。

 差し出したのは、黒髪ショートカット、日焼けした肌、制服の袖をまくった

ボーイッシュな少女だった。

 涼しげな目元で、口元にはちょっとした笑みを浮かべている。

すみれ「おーい、だいじょうぶ? 干からびかけてたよ、君」

晴人「……え、ああ。ありがとう……って、誰?」

すみれ「同じ学校っぽいよね? その制服。私もだけど、顔は知らないなー」

晴人「美術部の伊吹晴人。一応2年だけど……」

すみれ「おっ、同級生じゃん。私は日向すみれ。写真部。今日から夏休みだけど、

課題で歩き回っててさー」

 そう言って、すみれは瓶のふたをシュッと開けて、手渡してくる。

すみれ「冷えてるよ。飲んで、死なないうちに」

晴人「……なんか、初対面でずいぶん馴れ馴れしいな」

すみれ「だって、夏でしょ?」

 しゅわしゅわと泡が立ち、口に含んだ瞬間、のどが清々しく冷えた。

 その爽快さと一緒に、心まで何かが弾けるような気がした。

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