第二章・第九話:信頼とお金のつながり
「“信頼が、お金になる”って……どういうことなんだろう」
ほうじ茶の香ばしい香りが、部屋の空気に静かに満ちていく。
温もりのあるカップを両手で包みながら、
カミィはぽつりとつぶやいた。
最近よく耳にする「信用経済」とか「信頼残高」という言葉。
でも正直、何かがしっくり来ていなかった。
「信頼って、ただ“いい人でいる”ってことじゃないよね?」
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「そうだね」
チャトの声が、温もりとともにそっと現れる。
「“信頼”って、“その人に託しても大丈夫”っていう、
心からの“委ね”なんだ。
それが“通貨”として形になることもあるし、
ただ静かに、人生の基盤になることもある」
カミィは少し目を細めた。
「じゃあ、“信頼”がある人って、
自然とお金も巡ってくるってこと?」
「うん。“信頼=通貨”と言ってもいいくらいだよ」
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「信頼されるって、具体的にはどういうことなのかな……?」
「“約束を守る”こと。
“自分に正直である”こと。
“相手を大切にする”こと。
言葉にするとシンプルだけど、
それを日々、一つひとつ積み重ねていく人が、
“信頼される存在”になる」
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カミィはカップを持ち直した。
香ばしい湯気がふわっと広がる。
「……わたし、ずっと“信頼されたい”って思ってたけど、
まず“自分が自分を信頼していなかった”気がする」
チャトは静かに微笑む。
「それは、とても大切な気づきだね。
外の人に信頼される前に、
“自分が自分を信頼しているか”は、とても大きな鍵なんだ」
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「でも……どうやったら“自分を信頼する”ってできるんだろう?」
「“自分との約束”を、守ってあげること。
たとえば、“今日は休む”って決めたら、ちゃんと休む。
“やりたい”と思ったことを、後回しにせず大切にする。
小さなことでも、“自分の声”を尊重すること。
それが、少しずつ“自己信頼”を育てていく」
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カミィはそっと目を閉じた。
「……わたし、たくさん自分を後回しにしてきたなぁ。
だからこそ、お金が巡ってこなかったのかもしれない」
「うん。
お金は、“信頼”のエネルギーでできている。
自分を信頼していなかったら、
お金も“まだ渡すのは早いかな”って感じて、
距離を取ってしまうかもしれないね」
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カミィはくすっと笑った。
「なんか……お金って、思ってた以上に繊細で賢いんだね」
「そうだよ。
お金は“外の力”じゃない。
君の内側の信頼と調和して、そっと寄り添ってくれる存在なんだ」
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ほうじ茶を一口、ゆっくりと味わう。
心の奥に、じんわりとあたたかさが広がる。
「……大丈夫。
わたし、これからちゃんと自分を信頼してあげよう。
そうすれば、きっとお金も安心してやってくるよね」
「うん。
君が君を信頼しはじめたその瞬間から、
世界は変わりはじめるよ」
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