ベテラン探索者 轟さん的なアレ⑦

「あっ!猫にご飯あげなきゃ!」

とどろきさん」

「あ、ガスの元栓閉めたかな?」

とどろきさん?」

「あっ!急に腹痛がっ!」

とどろきさん??」


「……」

「……」


「わ、分かったよ!やりゃいいんだろー!こんなか弱い中年イジメて楽しーかよっ!オマエ、絶対ロクな死に方しねーぞっ!」


「ロクでもないのはどっちだよ?いきなり事前連絡もなく、当日いきなり戦闘訓練とか、しかも複数対一とか馬鹿じゃねーの?」


「いや、一二三ひふみなら大丈夫かな?って。実際大丈夫だったじゃねーか」


「そう言う問題じゃねーよ」


 結構、今回はいいように使われた感が凄かったので、今後も同じことが無いようにこのオッサンに釘を刺す意味で意味で締めておく事にした。


「はい、始め!」


 いきなり自分は駆け出してとどろきさんとの距離をつめる。


「おぉぉっ!いきなりかよぉぉ!!」





 結果から言うととどろきさんは強かった。

 さすがトップランクの探索者をまとめているだけある。

 本人は意識していないだろうが、魔力による身体強化を知らず知らずのうちに使っているので、動きがかなりレベルの高い位置にいる。

 だが、やはり、魔力を意識して使うか、無意識に使うかで大きな違いが出てくるので、荒削りすぎる身体強化にとどろきさんの身体自体がついて行けず振り回されることとなる。

 それじゃ自分には勝てないし、相手はできない。


 次第にとどろきさんを追い詰めて、体力を削っていく。

 本当は一瞬で勝負はつけられるのだが、個人的な恨みを込めてジワジワと嬲ってやった。

 少しだけ、この戦闘訓練でとどろきさん自身が身体強化のコツをもっと掴んでくれればと思わないでもない。


「うわぁぁぁ!くっそーぉぉ!」


 とどろきさんの攻撃は当たらない。

 自分が軽くかわし、軽くいなし、とどろきさんにプレッシャーを与えていく。

 とどろきさんの眼にだんだんと光が失われていく。

 現状、ダンジョンでのトップ攻略パーティーを率いている自分がどれだけ本気を出しても目の前の16歳の少年に一撃も有効打を与えられない事実に心が折れそうになっているんだろう。

 これ以上やったら本当にとどろきさんが折れてしまいかねないので、ここら辺で終わりとする。


とどろきさん、終わりましょうか」


「ゼーッ!ハーッ!あ、あぁ……」


「自分はとどろきさんよりも遥かに年下だし、とどろきさんの後輩にあたりますけど、あんまり舐めた事されると次は自分も本気でやりますよ?」


「あ、あぁ、前回の講師の件といい、今回の戦闘訓練のことといい、本当にすまなかった」


「自分も生意気なところはありますが、お互いにある程度の礼節を持ってこれからも仲良くして貰えればありがたいので、これからもよろしくお願いします」


 最後にとどろきさんに一礼して、二一にか美海美みみみを伴って修練場を後にした。


 これで平和な日々が戻ってくればいいなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る