第19話 新たな魔王城、正式稼働!
国王追放という大きな区切りの後、大介と玉藻は、彼らが見つけた古城を正式に「新たな魔王城」として確立した。城の整備が本格的に始まる。ポン助やへっぽこ魔王軍、そして救われた獣人たちも、協力して作業にあたっていた。
「へへっ、勇者様! 魔王様! ここが僕たちの新しい拠点っスね!」
ポン助は嬉しそうに尻尾を振った。へっぽこ魔王軍のゴブリンたちも、スコップを片手に「へい! へい!」と声を上げ、慣れない作業に汗を流している。
大介は、この新たな魔王城を、誰もが快適に過ごせる「終の住処」にしようと意欲を燃やしていた。彼の「キャンプ大好き」の経験とプロ以上の料理スキルが、ここで遺憾なく発揮される。まず、城の周囲の整備からだ。邪魔な草木を刈り、水はけの良い場所を選んで菜園を作る。
「よし、これで新鮮な野菜がいつでも採れるな」
大介は満足そうに頷いた。
「野菜が芽吹くように、みんなの暮らしも根づいていくといいな……」
彼の内心で、そんな穏やかな願いが芽生える。彼は、へっぽこ魔王軍に指示を出し、城の内部に簡易的な調理場や、皆が集まれる食堂を作る手伝いをさせる。へっぽこ魔王軍は、それぞれのへっぽこさを活かして、城の管理や周辺の開拓を手伝う。たまに失敗してはコミカルな騒動を起こすが、その度に大介や玉藻が呆れつつも助け舟を出す。
ポン助もまた、自身の居場所を見つけ始めていた。彼の「どきどき」ゲージがパワーになり、偶然成功するようになった召喚魔法で、癒し系の魔物などを召喚し、新たな魔王城の住民を増やしていく。召喚されたのは、ふわふわの綿毛のような精霊や、人懐っこい小動物の魔物たち。彼らは、新たな魔王城の住人たちに歓迎され、城の雰囲気をさらに明るくする。
新たな魔王城は、国王によって虐げられていた獣人たちを含む、様々な種族の自由と安寧の象徴となった。多くの獣人たちが新たな魔王城を訪れ、大介の料理を囲み、穏やかな生活を取り戻していく。彼らは、国王の支配から解放された喜びを噛み締め、大介と玉藻に感謝の言葉を述べる。
「ありがとう、勇者様! 魔王様!」
獣人たちの笑顔を見て、大介は静かに頷いた。玉藻は腕を組み、満足そうにフンと鼻を鳴らした。
(……ワシ、ちょっとだけ、こういう平和も……ええなって思てしもたんかもな)
彼女の内心で、微かな変化が起こっていた。
へっぽこ魔王軍の生き残り部隊は、この新たな魔王城と、未だ国王の支配下にある、あるいは流浪している獣人たちとの間の重要な連絡係として機能し始めた。彼らはへっぽこぶりは変わらないが、真面目に情報収集を行い、新たな魔王城への獣人たちの移住をサポートする。彼らのへっぽこぶりは、時には問題を引き起こすものの、最終的には温かい絆を育むことに繋がる。
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【魔王のわるだくみノート】
フン! 人間め、何を勘違いしとるんや! ワシは別に、お前なんかに抱きしめられたいわけちゃうし! でも、あの時、なんか力が暴走したのは、この人間のせいな気がするんやけど……。あんな言葉、言うてへんのに、なんでワシの心臓がドキドキしとるんやろ! 次は、ワシの記憶の奥底に眠る、しょーもない秘密が明かされるらしいな! ワシの人生、この人間がおる限り、退屈させへんようやで!
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次回予告
フン! 人間め、またワシを感心させおったな! まさかあんなしょーもない料理で、あの村長をギャフンと言わせるとは。まあ、ワシの力がなくなっても、この人間がおるなら当分は困らへんか。でも、ワシの魔王軍のへっぽこ共も、そろそろ役に立つところを見せてほしいもんやで! 次は、癒しの泉に行くらしいが、どんな奴らがいるのか、楽しみやな!
次回 第20話 日常の小さなトラブルと恋の成長
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