第8話 午後の話

 (これからご飯食べた後どうしようかな)

シルファリアは食堂に続く道を歩きながらそんなことを考えていた。


 「ごめん、準備があるからそろそろ戻ってもいいかな」

あの後、ユーザンは少し申し訳なさそうにそう行ってきた。

 「準備って、任務に行くんですか」

 「そうだよ。今回は私1人でね」

魔術団には依頼がたくさん来る。依頼先も様々で街や村はもちろん、国外や王宮からもくることがある。魔術団は、だんだんと地位や強さやを上げて経験を積んでいくと個人名で指名が入り単独行動も多くなってくる。

 「どこからですか」

 「王宮からだよ」

 「王宮・・・!すごいですね」

王宮といったら国で一番身分の高いところだ。そんなとこから単独で依頼が入るとはさすが副団長だ。

シルファリアは素直に思ったことを口にする。

 「なんか、首都付近に強い魔物が出たから退治してほしいと私の元に依頼がきてね。明日の夜までには戻るよ」

 「はい、お気をつけて」

いつもどうりの声色でいうと

 「そういう言葉も嬉しいけど」

 「?」

 「もっとちがう言葉を言ってほしいな~」

ねだりをこめたかんじに言うユーザン。

 「なにをですか」

 「激励の言葉だよ」

ようやくユーザンが言ってほしい言葉がなんとなくわかり

 (まぁ、これくらいならいいかな)

 「頑張ってきてください!」

 「ありがとう」

そう告げて、訓練場の入口方面に体の向きを変え歩き始めるユーザン。



 (部屋で本の続く読もうかな)

昨日買ったものはまだ少ししか読んでないしそれを読もうかなと思っていると、魔術団敷地内の入り口の前に何人かの女が1人の男の元に集まっている。ユーザンだ。一体なんなんだろうと思っていると

 「あれはあいつのファンだよ」

訓練の指導を終えたかんじのフリードが話しかけてきた。

 「今はお昼時だからああやって魔術団団員のファンが入口にやってくるんだよ」

魔術団には、正午前後には誰かのファン許されて許されてああやって待たれたり集まってたりするらしい。

 「ちなみにあいつは魔術団1のモテ男であの光景は日常茶飯事だ」

ざっと見ただけでもユーザンの近くには10人くらいの女いてほとんどの女がユーザンに見てウットリしている。

 「あのっそれでユーザン様。これなんですけど」

 「へえ~そうなんだ」

 「あの~この服似合ってますか」

 「とても似合っているよ」

 「ありがとうございます」

 (まぁ、あの容姿なら考えたら当然だよね。話聞いたりするにもうまいし)

そうやってその集団を眺めていると

 「ごめん、そろそろ任務に行かないと」

ユーザンが女たちに向かって断りをいれる

 「え~、まだ話したいです~」

 「お願いだからさ」」

 「わかりました~」

ユーザンが女たちを避けて入口から出て行った。

 「いっちゃたね~」

 「またこよう~」

残念がっているものもいれば

 「やっぱりかっこいい~」

 「すごいわよね~。顔もよくて聞き上手でそれに史上最年少で副団長になるという天才ぶりでスペックも高いくて」

 「ほんとすごいよね~」

未だにウットリとした様子のものいる

 (人をからかうところを除けば全部当てはまってる)

シルファリアがそんなことを思っていると

 「あっ、あれフリード様じゃない」

 「フリード様もかっこいいわよね~」

フリードにも先ほどでもないにしろ何人か頬を染める女たち

 「俺には大事な奥さんがいるのでお断りしますよ~」

そう言ってその場を通り過ぎるフリード。少ししてシルファリアも女たちの視野に入らないように通り過ぎて行った。



食堂で昼食を食べた後、シルファリアはうろうろしてた

 (本を読もうかと思ったけど歩きたい気分になっちゃたし)

ほんとにどうしよかと思っていると、1人の団員とすれ違う。その団員はシルファリアに気付いてなにも言わずそっと離れた

 (まぁ、そうだよね)

その団員には見覚えがあった。たしか一昨日新人でシルファリアが大量の魔力を宿していることを知っているのだ。

 (ああいった態度とる人の方が多かったし)

実は、一昨日から今日の午後もあのような態度をとる人はいて、奇異な目や化け物を見る目で見られたこともある。

平気平気と心の中で呟きながら少し歩くと

 (あれなんだろう)

一回建ての少し細長いて小さな羽色の建物を見つけた。

 (器具庫じゃないよね。それは寮のそばにあるし)

なんなんだろうと思いその建物に近づいたシルファリア。



 (本当になんなんだろうここ)

さっきの謎の建物の入口の前に来てシルファリアはそんなことを考えていた。

 (とりあえず中に人がいるか確かめてみよう)

 「あの~、誰かいますか~」

扉をこんこんとノックしながら中に向かって尋ねるがなにも返ってこない

 (誰もいないのかな)

こんこんと再び同じことをやっても結果は同じだ。

返ろうかと思ったが、ドアノブを見て

 (開くのかな)

と思い試しに回してみるとドアが少し開いた。

 (えっ開くんだ)

それで中も覗いてみるが薄暗くよく見えない

 (ここまで来たし)

ドアを開けて中に入るシルファリア。


 (やっぱり暗いな)

中に入ってドアを閉めるとそんなことを思った。

 (どっかに電気ないかな)

と思っていると急に明かりがついた。

 (えっ、何々?)

すると全貌が見えてきた。見渡して見ると、何枚ものたくさん文章や絵が描いてある紙が飾ってあったり、何人もの顔写真が並んでいて下には何やら文字が描いてある。

他には、いくつか道具も置いてある。それらをよく見て見ると

 (これは新しい魔法?こっちは歴代の団長と副団長のデータ?)

どうやらここは団員が新しく生み出した魔法や魔道具、歴代の団長と副団長の説明が書かれてあるものがおいてある資料館のようだ。

 (すごい細かく書かれてる)

紙や道具の方は構造やいつ生み出されたか、データの方は何年の何月に何歳で団長、副団長になったのか記されている。そうやっていくつか見ていると

 (あっ、この人は)

見覚えある。ゾムだ。ゾムのデータを見て見ると

 (元団長だったんだ)

どうやら今はその地位を退き団も引退してお店を営んでるようだ。その調子で歴代の団長と副団長とデータを見ていくと

 (フリードと副団長)

ユーザンとフリードのデータも見つけた。

 (フリード副団長もやってたんだ。副団長は一昨日副団長になったんだ)

ユーザンは20歳でその地位に上り積めたようだ。ちなみにフリードは22歳で副団長になっている。

 (こうやって見てと本当にすごい人たちだよね)

2人とも直してほしい部分はあるがいい人だ。

 (他にも見てみよう)

そうやって資料館全体を見て回って気がつくと午後は終わっていた。












 


 


 



 




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