第4節/ランダム③

ランダム③

主婦:川上あいの場合




川上さんと情報交換して、私はこの現象の非一律性を、以下の4側面で捉えることができました。



1、あの顔の人物と面識がある、若しくは周知の人物であるか否か

2、像を宿した受け手が、自分の死後の発信者にもなるか否か

3、受け手が像を宿した後も、更に複数の像を宿すか否か

4、宿す側の発信者がその自覚を持っているか否か



要するに、これらは、当該現象の所持者皆が一律に同様ではなく、それぞれのケースで違いがあると…。



この時点での私は、自分が2に及ぶか否かを最大の焦点に据えていました。

しかし、川島さんは、3の症例に注目していたようなんです。



***



「私さあ…、この現象が仮にパンデミックにまで発展するとかあったとしたらよ、その要因は発信者側より、むしろ受け手側じゃないかと思うんですよね」



この指摘も結構、ショックでした。

私自身で言えば、死後の顔で脳に入り込んできたあの世の訪問者よりも、この現象で苦しんでる当の受け手である私に、この現象を招いた、そもそもの主因があるということになるのですから…。



もっとも、こう主張された川上さんもまた、そう言う立場ってことになる訳で、そのことをご本人も承知で語ったんでしょう。



そうなると…、そこの着目点は伺わなくてはと…。

私はこの点を川上さんにぶつけてみました。

すると…。



***



「…川口さん、いくらネットの時代だからと言って、こんな現象、ああ私も、それにあの人もってことある?…これはこの時代に来て、そういう機が熟したって面は否定できないと思うのよ」



「では川上さんは、この現象はこの時代に生きる人々のメンタルモードが”それ”を誘発したと…。むしろ、死後の像を発した側より、それを欲してる側のメンタリティが影響しちゃってるっておっしゃるんですね?」



「ええ、だいたいはそういうとこで捉えてる。でもね…、根本は受け手も発信者側も、通常レベルの意識はせずにって…。そういうことだとね。私たちがこの現象を活性化させてたとしても、私たちには”それ”の自覚がない。そんなこと覚えがないよって訳…。だから、今時点では完全に私の一推測でしかないの…」



私は無意識のうちに、あのヘンなもんを自分の脳に招き入れたと…⁉

なんともやるせない”前提”でした。






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