第033話 中学最後の文化祭

 1999年10月16日 中学文化祭


「聡、今日は美桜さんの最後の文化祭だな」


 翔が朝、僕の隣で言った。今日は中学校の文化祭。美桜さんにとっては受験生として最後の文化祭になる。


「そうだね。美桜さん、すごく頑張ってた」


 図書委員会は今年、「読書の素晴らしさを伝える展示」を企画している。美桜さんが委員長として企画から運営まで取り仕切っていた。


「文化祭実行委員として、今日は忙しくなりそうだ」


 翔は今年、文化祭実行委員に立候補していた。


「翔も頑張ってるよね」


「お互い頑張ろう」


 翔が笑顔で言った。


 学校に着くと、すでに多くの生徒が準備に取りかかっていた。


 図書室に向かうと、美桜さんが新入生の委員たちに指示を出していた。


「皆さん、ポスターの位置はそれで大丈夫です。本の配置も美しく並べてくださいね」


 美桜さんの的確な指示に、新入生たちも熱心に動いている。


「田中君、おはようございます」


 美桜さんが僕に気づいて声をかけてくれた。


「おはようございます。準備、順調ですね」


「はい。みんなが協力してくれるおかげです」


 美桜さんが嬉しそうに答えた。


「何かお手伝いできることはありますか?」


「ありがとうございます。展示用の本の整理をお願いします」


 僕は美桜さんの指示に従って、本の整理を手伝った。


 図書委員会の展示は「時代を超えて愛される名作」がテーマ。夏目漱石、宮沢賢治、太宰治など、古典文学から現代文学まで幅広く紹介している。


「この展示を見て、一人でも多くの人に読書の楽しさを感じてもらえたらいいですね」


 美桜さんが展示を見つめながら言った。


「きっと美桜さんの想いが伝わると思います」


 僕が答えると、美桜さんが微笑んだ。


 文化祭が始まると、多くの生徒や保護者が図書委員会の展示を見に来てくれた。


「この本、面白そう」


「こんな古い本でも、今読んでも楽しめるんですね」


 来場者の声を聞いて、美桜さんがとても嬉しそうにしていた。


「田中君のクラスの出し物も見に行きたいです」


 美桜さんが言った。


 僕のクラスは「お化け屋敷」を出店していた。


「そんなに怖くないので、大丈夫ですよ」


「それなら安心です」


 美桜さんと一緒にお化け屋敷を体験した。


「きゃー」


 美桜さんが僕の腕につかまった。


「大丈夫ですよ」


 僕が美桜さんを支えた。


 お化け屋敷を出ると、美桜さんが恥ずかしそうに言った。


「すみません、怖くて...」


「全然大丈夫です。むしろ嬉しかったです」


 僕の言葉に、美桜さんが顔を赤らめた。


 昼食時間、僕たちは中庭でお弁当を食べた。


「お母さんが作ってくれたお弁当、美味しそうですね」


 美桜さんが僕のお弁当を見て言った。


「美桜さんのお弁当も彩り豊かで素敵ですね」


「母が張り切って作ってくれました」


 美桜さんが嬉しそうに答えた。


 午後は翔のクラスの「模擬店」を見に行った。


 翔は焼きそば作りに忙しそうにしていた。


「聡、美桜さん、来てくれたのか」


 翔が嬉しそうに言った。


「焼きそば、とても美味しそうですね」


 美桜さんが感心していた。


「ありがとう。頑張って作ったんだ」


 翔が誇らしそうに答えた。


 僕たちは翔の焼きそばを買って食べた。


「本当に美味しいです」


 美桜さんが感動していた。


「翔、すごいじゃないか」


 僕も素直に称賛した。


 夕方、文化祭が終了した。


 図書委員会の展示は大成功だった。多くの人が足を止めて、興味深そうに本を見ていた。


「美桜さん、お疲れさまでした」


 僕が労いの言葉をかけた。


「田中君のおかげです。ありがとうございました」


 美桜さんが感謝の気持ちを込めて言った。


 片付けが終わった後、僕たちは校庭のベンチに座った。


「最後の文化祭、いかがでしたか?」


 僕が聞いた。


「とても充実していました。田中君がいてくれたから、心強かったです」


 美桜さんが微笑んだ。


「僕も、美桜さんと一緒に文化祭を楽しめて嬉しかったです」


 夕日が校舎を照らしている。


「来年は受験で忙しくなりますね」


 美桜さんが少し寂しそうに言った。


「でも、僕が応援しますから」


「ありがとうございます。田中君の支えがあれば、頑張れます」


 美桜さんの言葉に、僕は責任を感じた。


 家に帰って、僕は投資のことを確認した。


『1999年10月16日 投資状況』

『ヤブー株:6株(現在価格10,500円、評価額63,000円)』

『ソフトバンキ株:4株(現在価格16,200円、評価額64,800円)』

『現金:120,000円』

『総資産:約248,000円』


 株価は継続的に上昇している。でも、前世の記憶では、来年3月にバブルが崩壊する。


 そろそろ利益確定を真剣に考える時期だ。


 でも、今日は投資のことより、美桜さんとの文化祭の思い出の方が大切だった。


 投資日記を書いた。


『1999年10月16日 中学最後の文化祭』


『美桜さんの委員長活動』

『図書委員会展示の大成功』

『受験生として最後の文化祭』

『リーダーシップの発揮』


『恋人としての支援』

『展示準備の手伝い』

『お化け屋敷での保護』

『お互いへの感謝』


『翔の活躍』

『文化祭実行委員として』

『焼きそば作りの成功』

『変わらぬ友情の確認』


『投資状況』

『総資産:約248,000円』

『継続的な株価上昇』

『利益確定時期の接近』


 続いて、青春日記も書いた。


『美桜さんとの特別な文化祭』


『委員長としての美桜さん』

『的確な指示と温かいリーダーシップ』

『読書の素晴らしさを伝える展示』

『最後の文化祭への想い』


『恋人としての時間』

『一緒に準備した展示』

『お化け屋敷での親密な瞬間』

『中庭でのお弁当時間』


『友情の確認』

『翔の文化祭実行委員活動』

『美味しい焼きそば』

『三人の絆の深化』


『青春の思い出』

『夕日に照らされた校庭』

『文化祭の充実感』

『来年への期待と不安』


 その夜、僕は文化祭の余韻に浸っていた。


 美桜さんの委員長としての頑張り。


 お化け屋敷で僕の腕につかまった瞬間。


 翔の焼きそば作りへの情熱。


 すべてが僕の心に深く刻まれている。


 これが青春なのだ。


 投資で得るお金よりも、はるかに価値ある体験。


 前世では味わえなかった、純粋で美しい学生生活。


 美桜さんは来年受験生として忙しくなる。


 でも、僕が支えになりたい。


 恋人として、人間として、彼女の力になりたい。


 中学2年生の秋。


 僕の青春は、美桜さんとの愛情、翔との友情によって、さらに豊かになった。


 窓の外では、秋の夜風が吹いている。


 文化祭の余韻がまだ残っている。


 美桜さんとの特別な一日。


 この感動を胸に、僕はさらに成長していこう。


 転生して得た第二の人生を、愛情と友情で満たしていこう。

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